表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リシュールと魔法使いの秘密  作者: 彩霞
最終章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

82/95

第82話 話したいこと

 リシュールは春の陽気を感じる日差しの中を歩き、シルヴィスの店である「ユフィ」へ辿たどり着くと、玄関のドアを引っ張った。だが、くはずのドアはひらかない。


「もしかして早すぎたかな……」


 初めてクモイとここに来たときは、営業時間外にもかかわらず開いていたので、大丈夫だと思ったが、あのときは例外だったらしい。


「……」


 ドアが開いていないとなれば引き返すしかないのだが、できればシルヴィスに会いたくて、リシュールは駄目元でドアの呼び鈴を鳴らしてみた。


 誰かいるだろうか。いたとしても気づいてくれるだろうか――。


 そんなことを思って待っていると、呼び鈴に気づいた赤いドレスを身にまとった女性店員が、店の奥からこちらに近づいてくるのがドアのガラスから見えた。


 彼女は、玄関の前に立っているのがリシュールだと分かると、軽く手を振る。

 リシュールがそれにこたえるように、手を振り返すと、妖艶ようえんな化粧を顔に似合わぬ、面倒見のいいお姉さんのような明るい笑みを浮かべた。


 彼女はドアの前まで来ると少しかがむ。そして、ガチャリ、という音がしたかと思うと、さっとドアを開けてくれた。


「リシュじゃない。いらっしゃい、どうしたの? こんな朝早くに」


 そう言うと、羽織っていた肩掛けを首元に寄せる。明るい茶色い色をした長い髪を、ひとまとめにして結っているので、首の辺りに外の冷気を感じたのだろう。


「おはようございます。すみません、シルヴィスさんはいらっしゃいませんか……?」


 尋ねると、女性はリシュールが入りやすいように体を少しずらしてくれた。


「いるわよ。さ、入んなさいな」


「すみません、ありがとうございます」


「どういたしまして」


 女性はにこりと笑うと、手慣れた様子でシルヴィスの部屋まで案内してくれる。


 店のほうは、まだ営業時間前ということもあって閑散かんさんとしていた。事情を説明せずともシルヴィスのところに案内してくれるのは、ここひと月、毎日のようにシルヴィスのところに通っていたからだろう。


 螺旋階段らせんかいだんを上り、シルヴィスの部屋の前に着くと、リシュールは女性店員に礼を言った。


「ありがとうございました」


「どういたしまして」


 彼女はにこりと笑うと、来た道を戻っていく。

 リシュールはそれを見届けたあと、ドアをたたく。すると中からシルヴィスが開けてくれたが、リシュールの顔を見るなり少し驚いた顔をした。


「……リシュ⁉」


「おはようございます、シルヴィスさん」


「おはよう。珍しいな、こんな時間に来るなんて」


「朝早くにすみません。ちょっと話したいことがあって……、あれ?」


 リシュールはシルヴィスを見るなり、小首をかしげた。

 彼は黒っぽい三揃みつぞろいの背広を着ており、少し伸びた白銀の髪を後ろに流している。シルヴィスがすきの無い、格好いい恰好をしているときは、大抵接待か会食があるのだ。


 そしてその場合は夜なのだが、朝から準備している彼を見て、リシュールは目をしばたたかせた。


「もしかして、どこか出かけるところでしたか?」


 するとシルヴィスは、肩をすくめ、ため息混じりに答えた。


「貴族の御令嬢の誕生日会なんだよ。いつもお世話になっているからと、招待状を送りつけられてね……。仕方なく行くところさ」


「そうだったんですね……。じゃあ、今日は帰ります。日を改めて――」


 残念だが、駄々《だだ》をねるわけにはいかない。

 そう思ってきびすを返したが、そのリシュールの手首をシルヴィスがつかんで引き留めた。


「待って。まだ一時間くらい余裕はあるから、少し話そう。入って」


 シルヴィスに言われ、リシュールは迷った末に部屋に入らせてもらうことにした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ