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リシュールと魔法使いの秘密  作者: 彩霞
第四章 リシュールの絵

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第62話 理解

「分かりました……」


 クモイはそう答えると、躊躇ためらいつつも話し始めた。


「……実を申しますとリシュと同じような境遇になっている方が、どうやって生活をしているのかを調査したため、予測できたことなのです」


「予測?」


 リシュールの問い返しに、クモイはうなずく。


「はい。一人ひとりの行動を見ただけではバラバラかもしれませんが、それを全体として見た場合にある傾向が見えてきます。今回のように、『できるだけ自分のお金を切り詰めて、でも暖かく過ごしたいと考えている人々が、どのような選択をして生活しているのか』を見ていくと、多くの人がマントを購入しているのが分かってくるのです。『何故マントを選ぶのか』という確実な理由は分かりませんが、マントは袖がないため寝るときも邪魔にならないと考えているからではないかと、私は考えています」


 話を聞きながら、リシュールは自分がこれまでしてきた「靴磨き」に通ずるものがあるなと感じていた。

 リシュールがあの大通りで靴磨きをしていたのは、裕福な人々が住んでいることに加え、城を往来する人たちがいるからである。


 そしてその道は舗装されていないので、靴が汚れる。すると靴磨きをしたいと考える人が出てくる。何故なら、汚い靴のまま偉い人に会うのはよくないと考えているから。すると、リシュールの仕事が増えることに繋がる。


 一見何でもないことでも、一つひとつの流れの行きつく先を見ていくと、自分の商売の利点に結びつく。逆に言えば、行動の行きつく先を知っていると、まだ起こっていないことも予想することができる――。


 クモイの場合は商売ではないけれど、きっとそういうことを利用しているのだろうと思った。


「なるほど……。じゃあ、古着屋であのマントを選ぶってどうして分かったの?」


 マントの品数はそれなりにあった。あの中からどれを選ぶのかなど、さすがに予想はつかないだろうと思ったが、その答えをクモイが教えてくれる。


「手持ちのお金が少なく古着屋で買い物をする場合、値段が手ごろで最も質がいいものが店頭に並んでいればそれを選ぶのがほとんどです。そのため、リシュもきっとそういう品物の選び方をするであろうと予想していました」


 マントを買ったときのことを思い返してみると、確かにクモイのマントは他に陳列してあったものよりもずっと質が良かった上に、値段が手ごろだった。そして自分はそれを手に取って買っている。クモイの予想通りだ。


「何もかもお見通しだったわけだ」


 リシュールは謎が解けてすっきりした顔をしたが、クモイは小さくなって「そういうわけではないのですが……」と答える。まだ、勝手に調べていたことを気にしているらしい。


「あ、いや、怒っているわけじゃないよ。まさかそんなところまで予想されているとは思っていなかったってだけで……」


 するとクモイが、首を横に振ったあと「その、こう申しては言い訳に聞こえるかもしれないのですが、一つだけ誤解のないように申しておきたいことが……」と言って言葉を続けた。


「私は魔法が集めた情報によって、行動の『予測』はできますが、『予知』しているわけではありません。そのため、実際にリシュがマントを選ぶかまでは分かりませんでした。ですが、あの古着屋には以前行ったことがあったようでしたので、そこで良いものが見つかれば買うのではないかと思っていたのです」


 ここまでの話から、「未来が分かっているわけではない」ということはリシュールにも分かっていたので、そこは特に気にしてはいなかった。

 逆に言うと、リシュールがクモイの予想とは違った動きをする可能性もあったということである。


「じゃあ、僕があそこでこのマントを買わなかったらどうしていたの?」


 何気なく聞いてみると、クモイがまた申し訳なさそうに答える。


「また別の方法を考えておりました……」


 つまり、あの場面でリシュールがクモイのマントを買わなくても問題はなかったということだ。方法は分からないが、彼がクモイのマントを自分のものにするまで、何かしらのことをするつもりだったのだろう。


「そっか。だから、シルヴィスさんは、僕とクモイが出会うことは『最初から決まっていたのさ』って言ったんだね」


「申し訳ありません……。私はどうしてもあの絵本を作りたくて、協力してもらえる人を探しておりました」


 シルヴィスの話を聞いたからこそ、彼が「魔法具」に関する絵本を作りたい理由がよく分かる。実際にどれほど危険なものかは分からないが、何も分からない人の手に渡っていいものではないだろう。


 それを踏まえた上で、リシュールは自分の考えを口にした。

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