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リシュールと魔法使いの秘密  作者: 彩霞
第三章 もう一人の魔法使い

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第44話 挿絵

「あなたの言った通り、俺は二〇〇年近く生きている。長い名前は……まあ、色々あってそうなったってところだな」


 すると横からクモイが冷たく指摘する。


「テキトウな説明をしないでいただきたい」


「文句言うなよ。ちゃんと説明すると長くなるから今はこれでいいだろう」


「……」


 リシュールは、クモイとシルヴィス・ヴェルデラータ・セレル・リウを交互に見ながら、おずおずと「あの、僕は全然構いませんけど……」と言った。話したかったら聞くし、そうでなかったら無理に聞く必要はないと思ったからである。


「君は優しいなぁ。クモイにはもったいないくらいだ」


「あの、そんな……僕のほうがクモイにいつもよくしてもらっています……」


 リシュールが照れくさそうに言うと、何故か彼は信じられないと言った表情を浮かべて、クモイを見た。


「お前は、この子の前でどういう態度を取っているんだ」


「きちんとした態度ですよ」


「よく言う……」


 ため息をつくシルヴィス・ヴェルデラータ・セレル・リウに、リシュールは言った。


「えっと、あの、僕も『ヴェルデラータ』さんとお呼びするとよろしいでしょうか……?」


「それでもいいけど、よかったら『シルヴィス』と呼んでもらえるだろうか。親に貰った大切な名前なんだ」


「え? 大切な名前でお呼びしていいんですか?」


 リシュールがそう聞いたのは、彼が「ウェルデラータ」と名乗っているのには理由があると思ったからである。


 するとリシュールの気持ち察したのか、シルヴィスは「構わない。クモイが認めた主のようだからね」と、クモイに軽く視線を向ける。

 そういうものなのかなと思い、リシュールもクモイを見たが、彼は何か納得いかないことでもあるのか、渋い顔をしていた。


 リシュールはクモイの様子が気になったが、後で聞くことにして、シルヴィスに対してうなずいた。


「分かりました。では、シルヴィスさんとお呼びしますね。僕のことはリシュールでも、リシュでもお好きなように呼んでください」


「それならリシュと呼ばせてもらうよ。——さあ、まずは椅子に座ってくつろいでくれ。これから長い話になるだろうからね」


 リシュールはマントを脱ぐと、シルヴィスにすすめられたラクチュアに座り、再びクモイのほうを見る。彼はリシュールが言わないと、椅子に座らないことがあるので心配していたが、旧友の前というのもあってか、リシュールが座ったのを見届けたあと、着ていた黒いコートを脱いで向かい側の席に座った。


「えっと、それで……長い話とは?」


 シルヴィスは客人たちが座ったあと、自分も先程まで座っていたラクチュアに腰かけた。


「これからその話をするつもりさ。――さて、クモイ」


 シルヴィスは笑みを浮かべた表情を、彼から見て左前にいるクモイに向ける。


「俺とリシュを引き合わせたということは、クモイはリシュにこれまでのことを話して、全てに決着をつけるつもりでいるんだな」


「そうです。ですから、これまでにあった過去を話すのを手伝っていただきたいのです」


 ――これまでにあった過去?


 リシュールはクモイが言ったことを、心の中で反芻はんすうする。どういうことだろうか。

 淡々とお願いするクモイに、シルヴィスは冷笑を向ける。


「お前のよそよそしい話し方は気になるが、まあ、いいだろう」


「では先に、私からあるじさまにお話をしてもよろしいでしょうか」


 シルヴィスは右の手のひらを返し、「どうぞ」という仕草をした。


「リシュ」


 リシュールは名を呼ばれ、はっとしてクモイのほうを向く。クモイはいつになく真剣な表情をしていた。


「私は、リシュに絵を描いていただきたいと依頼しましたね」


 リシュールはこくりとうなずく。


「うん」


「実を申しますと、絵本の挿絵さしえを描いていただきたいのです」


「挿絵?」


「はい」


 すると、クモイはどこに持っていたのか、折り目のない数枚の紙を手に立ち上がり、リシュールに手渡した。


「これを読んでいただけないでしょうか。――リシュは、文字を読めますよね?」


「うん。孤児院で習ったから分かるよ」


 リシュールはクモイから、受け取った紙に視線を向ける。そこにはきれいな字で文章が書いてあった。


「これは?」


「絵本の原稿です。今、読んでいただけますか?」


「いいけど、僕、そんなに読むの速くないよ?」


「かまいません。シルヴィスも私も、リシュが読み終わるまでお待ちます」


 リシュールはちらりとシルヴィスのほうを見る。すると彼は笑みを向けた。「待っているよ」ということだろう。


 何故、今ここで絵本の原稿を読まなくてはいけないのか。

 リシュールにはよく分からなかったが、そうせざるを得ない雰囲気を感じ静々《しずしず》と読み始めた。


 そこには、「ウーファイア」と言う名の女性が、村のために魔法を使う話が書かれていた。

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