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ドラゴン牧場シリーズ

ドラゴン牧場と卵交換

作者: 溶ける男

ドラゴン牧場シリーズ第二弾。

ここは、いくつもの世界と隣り合わせに存在する、不思議な地。


住人たちはこの場所を「狭間の世」と呼び、それぞれの世界の接点として慎ましく暮らしていた。


その片隅にある小さなドラゴン牧場は、今日はやけに賑やかだ。

ドラゴンたちが、繁殖期を迎えたのだ。


彼らは成竜になると、繁殖期に卵をひとつ産む。

しかし自分では温めず、別のドラゴンと卵を交換して育てる。

これはより強い子を残すための、彼ら独特の習性だとされている。


交尾ではなく、魔力交換によって生まれるドラゴンの子。

複数の性質を受け継ぐその仕組みは強力だが、血統と同じく、魔力が濃すぎると弊害もある。

それを本能的に理解しているのか、時には卵の交換が成立せず、あぶれてしまうことがある。


今回も、1体のドラゴンが交換相手を見つけられなかったようだ。


「今回はお前か。……大丈夫、いい相手を見つけてやるぞ!」


ガスタは、交換できなかったドラゴンの頭をやさしく撫でた。

ドラゴンは気持ちよさそうに喉を鳴らして応える。


厩舎から戻ると、父親の声がかかった。


「どうだった?」


「今年は一匹、交換相手が見つからなかったみたい」


「そうか……」


「父さんはそんなだし、今年は僕が相手探しに行ってもいい?」


退院はできたものの、怪我はまだ完治しておらず、車いす生活を続ける父は少し黙ってから言った。


「……そうだな。俺が初めて行ったのも、お前くらいの歳だったし。任せてみるか」


「やった! じゃあ準備してくるね!」


ガスタは嬉しそうに、旅の支度を始めた。


卵運搬用の特製リュックに、三日分の食料と水を詰め込む。

それを背負い、再びドラゴンのもとへ戻ると、静かに卵を受け取った。


「行ってくるな」


「グル」


返ってきた低い鳴き声に見送られ、ガスタは牧場を出発する。


狭間の世には、牧場以外にも野生のドラゴンたちが暮らしている。

今回あぶれた卵の親は、水と風の性質が強く、対属性にあたる火や土の魔力を持つ相手が求められる。


その条件を満たすドラゴンが住むのが、遠く離れた火山地帯だった。


飛行できるドラゴンを連れて行けば楽ではあるが、野生のドラゴンの領域に他のドラゴンを連れていくのは危険だ。

それに、強い魔力を帯びた卵には、余計な魔力を与えない方がいい。


だから、今回は徒歩と馬車の旅。

ガスタは一人で火山地帯を目指すことにした。


火山地帯へは、馬車で二日。

その麓には、宿場町が広がっている。


ガスタはリュックを抱えながら馬車乗り場へ向かい、馬車に乗り込む。

窓の外には、のどかな風景が流れていく。

目的地は、少しずつ近づいていた。


一日目の夜、干し肉をかじっていると、馬車を護衛していた冒険者のひとりが声をかけてきた。


「今回の移動で、魔物が出なかったのは君のおかげかい?」


「え?」


「それ、ドラゴンの卵だろ?」


その言葉に、ガスタは思わずリュックをぎゅっと引き寄せた。


「安心しろ。別に取り上げようってわけじゃない」


「ほんとに?」


「ただ、まぁ……珍しいからな。こんな子供が、それを持ってるなんて」


「僕、ドラゴン牧場のガスタ。卵交換のために火山地帯を目指してるんだ」


「卵交換?」


簡単に事情を話すと、冒険者たちは驚きながらも納得し、「頑張れよ」と声をかけて去っていった。


それからは特に何もなく、馬車は無事に宿場町へと到着した。


入山許可を得るため、管理ギルドへ向かう。

受付に座っていたのは、立派な髭が印象的な男性だった。


「こんにちは」


「ああ、なるほど。繁殖期か。ガスタ君だったな?」


「えっ? 僕のことをご存知ですか?」


「君が生まれたころ、この地のドラゴンにあいさつ回りで来ただろう。その時に会ってるよ」


「そうだったんですね……!」


懐かしい話を交えながら、受付の男性は手際よく許可証を用意してくれた。


火山地帯は、通常であれば軽装や子供の単独行動では入山など許可されない。

だが、ドラゴン牧場の人間は、挨拶回りの際に加護を受けているため環境の影響を受けにくく、卵から放たれる魔力が周囲の魔物を遠ざけてくれる。


山頂を目指して登るうち、夕暮れが近づいてきた。

中腹のあたりで良い場所を見つけて腰を下ろしたそのとき――


月が、ふいに隠れた。


見上げた夜空を遮る影は、大きく広がる翼を持っていた。


「久しいな、小さきものよ」


それは、音ではなく、頭の中に直接響いてくる声。


「お久しぶりです。長老」


「ああ、相手は用意してある。しっかり上ってこい」


月を遮っていた巨影――長老と呼ばれる古きドラゴンは、そう言い残して山頂へと飛び去った。

月が再び姿を現し、夜が明るさを取り戻す。


ガスタはリュックを抱え、静かに眠りについた。


翌朝。太陽が真上に来たころ、ようやく山頂に到着する。


そこには、ひとりのドラゴンが、卵を抱えて待っていた。

ガスタもまた、リュックから卵を取り出し、静かに前へと差し出す。


すると、相手のドラゴンも卵をこちらへと押し出してきた。


「……確かにお預かりしました」


渡した卵を大切そうに抱えるドラゴンは、短く一鳴きして、満足そうに巣へ戻っていく。


ガスタはリュックに新しい卵を納め、山を降りはじめた。


「小さきものよ、次は繁殖期以外に来い」


不意に、長老の声が頭の中に響いた。


上空を舞う長老に気づき、ガスタは立ち止まり、深く一礼する。


麓の町で帰りの食料を補充し、馬車で牧場へと帰還。

真っ先に厩舎へと向かう。


すると、少し興奮した様子で、例のドラゴンが駆け寄ってきた。


「無事、相手を見つけられたぞ」


ガスタがそう声をかけてリュックから卵を取り出すと、ドラゴンは嬉しそうに大きく鳴き、卵をそっと咥えて寝床へ運んだ。

一度こちらを振り返って、誇らしげに鳴いたあと、静かに卵を温め始めた。


ようやく、任務を終えたガスタは、軽くなったリュックを背負い直し、そっと厩舎を後にした。

お読みいただきありがとうございました。


シリーズ物にはなりますが一話完結で短編として描いていけたらなと思っています。

よかったらお付き合いください。


今回はこの世界のドラゴンの生態などを題材に書いてみました。


生成AIにて主題歌を作ってみました。

ランキングタグ欄にリンクを張っていますのでよかったら聞いてみてください。


ご感想・評価など頂けると嬉しいです。

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YouTubeにて主題歌配信中「狭間の季節」
― 新着の感想 ―
 あぶれた不満や八つ当たりで暴れたりする様子ないドラゴン達にくわえ、住民も穏やかそうで、陰鬱やギスギスな出来事が少ない世界なんですね。 文章も中だるみなどがなく、良かったです。
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