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3衝突

戦争が終わってから約1年……

海沿いの1部地域が新居住区となった。

そこをコの字で囲むように監視塔が設立された。


この新居住区はまだまだ拡大するので、

すぐに撤去できるような監視塔が採用されている。


残ってた家屋も回収してあるので、

建物が建ったエリア以外は、

見渡しても木々があるくらいだ。

回収した家屋は、監視塔作成の資源にしたり、

津波発生時のテトラポッド代わりに使われる。


今なお、輸送船による住民の移動や、物資の運搬で

新居住区はごたごたしているが……

そんな事はどうでもいい!


今日からパトロールの仕事を任される事になった!

念願の裏方卒業だ!ついに努力が報われたんだ!

まだ一応は、補給部隊の所属ではあるものの、

その中では優秀と認められた証だ。


その証拠に他の補給部隊員達は、

荷下ろしの手伝いをしてる。

ここで一気に差をつける!

不審な連中を捕えまくって上司達に

更なる実力をアピールするんだ!


バディを組んでるのはドローン担当のハンドル。

今は停車しているトラックの助手席から

カメラを搭載したドローンを飛ばしている。


俺の役目はカメラで発見した異常の確認と対処。

つまりは不審者を捕えたり、

仕掛けられた爆弾を解除したりってことだ。


下からの目視を困難にする為に

ボディーカラーを今日の空と同色に変更したドローンは、

俺の担当エリアを飛んでいる……出番はまだかな?


ハンドル「不審なモノを観測したぞ、おそらくシャベルだ。

付近に地面と同色の何か動くモノもある。

地面と同化するように、

布を被ったチップ無しが何か掘ってると見た」


待ってたぜ!……

っといかんいかん、浮かれてミスしては意味が無い。

呼吸を整え、冷静に判断せねば。


ブレイス「そのエリアの地面には

発電所から新居住区に電気を送る為の

電線が埋まってたハズだ、奴らの狙いはそれだろうな」


ハンドル「サーバー施設を停止させれば

倒れた軍隊が復帰できなくなる……

これは立派な戦争準備だな、応援を要請するか?」


応援だと?冗談じゃない!

こんなチャンスを棒に振ってたまるか!

1人でやれるに決まっている!

でも、この状況を冷静に見なければならない。


ブレイス「一人で対処できるが、

区内に送電している発電所は1つじゃない、

他の所も細工されてる可能性はある。

点検の為、電気技師数名とその護衛が必要になるだろうな。

とりあえず観測した地点に向かう、本部への連絡を頼む」


ハンドル「了解だ、無理はするなよ」


これから接敵することになるが、

複数人相手でも負けない根拠がある。


新居住区を巡る争いで敵側にはロクな武器が残っていない。

丸腰同然だ。


それに対して俺は、近接用のスタンバトンに銃とグレネードを装備している。

全部電気で動きを封じるテーザー系。

まぁ、殺傷能力は無いので少々不安だが、

あまり傷つけると材料としての質が落ちるから仕方ない。


チップ無しがこれを喰らえば

2~3分はまともに動けなくなる。


だが、俺たちチップ持ちは、

チップを守るために全員、電気抵抗処理を受けている、

一定以上の電流は流れない。


施設の感電事故みたいな

大出力にはさすがに耐えられないが、

携行できる武器でそこまでの電力は出せない。


つまり、テーザー武器はチップ持ちにとって

脅威にならない為、仮に俺がやられたとしても、

敵に武器を奪われることにはならない。

だからミスしても被害は小さい。


ブレイス「ここまでは接敵しなかったが、

もう身を隠せる木が無いな……

ここから見る分には、布被りが4人で穴を掘ってる。

そして、違和感のある盛り土が1つある。

おそらく、見張り役が隠れてるんだろな。

全部で5人だ。

見張りは撃てる距離だが銃声で4人にバレそうだ」


無線「それなら……もうじきある

”新居住区完成記念祭”の予行演習で

試作品の花火が上がるらしいぞ、

そのタイミングで撃つのはどうだ?」


ブレイス「花火か……距離があるから

完全に銃声が消えるワケじゃなさそうだが、それでいくか」


無線「連絡を取って合図してやる、構えろ」

ここは流れ弾の飛んでくるような戦場じゃない、

じっくりと狙える。


無線「来るぞ……3……2……1……0」ヒュ―――ババーーン


ブレイス「命中した。盛り土が悶えてるが

4人ともこちらに気づいていない。

今のうちに見張りを回収しよう」


ブレイスは折っておいた木の枝数本を持ち、

身動きの取れなくなった見張り役の元に向かう。

見張りが被っていた布を引っぺがし、無線機を回収する。

さらに木の枝を使い、

布の中に見張りが入っているように見せる細工を行った。


見張りを木の影まで引きずり、口にテープを貼る。

そして両膝と両肘の関節めがけて力いっぱい踏みつけた。

骨が鈍い音を立てて折れ、もう抵抗も逃走もできない。


そして回収した無線機に小声で話す

「軍人らしいヤツが居る、隠れろ」


ブレイス「こちらブレイスよりハンドルへ、

奴らどこに隠れてる?」


無線「あいつら掘ってた穴を板で塞いで……

一番近い岩……の近くに掘ってた穴の板を外して隠れた!」


ブレイス「周辺はどうだ?」


無線「何も動きはない、そいつらで全員だ」


岩の近くの隠れ穴に向かい、

板を少し開けてテーザーグレネードを放り込み、

板をかけて足で逃げるのを塞ぐ。

叫び声と炸裂音が足元から聞こえる。


後はハンドルが来るまでの間、

1分毎にスタンバトンで

足元の4人を叩いて拘束しつづける……

我ながら完璧だ!


ブレイス「こちらブレイスよりハンドルへ、

危険因子を無力化した。回収に来てくれ」


無線「お見事。さすがだな、すぐに向かうぜ」


ハンドルが到着した後、

穴から引きずり出した4人の4つの関節を踏み壊し、

木の傍に隠していた見張りと共にトラックに乗せ、

帰路に就く。


彼らは尋問を受けた後に工場に運ばれ、

人造人間に生まれ変わるのだろう……

荷台から怒鳴り声が聞こえる。


「この悪魔どもめ!地獄に落ちろ!」

「ワシらからどれだけ奪えば気が済むんだ!」

「返せ!ワシの思い出の町を!」

「アタシらの同胞はお前らなんかに屈しない!」


ハンドル「なあ……俺たちの」


遮るようにブレイスが言う。


「大丈夫!これで良いんだ!俺たちは……正しいから!」

読んでくださってありがとうございます。

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