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2役割

あれから程なくして、戦争は俺たちの勝利で終わった、

敵側は武器弾薬が尽きたので投降したらしい。

政治家の大半はチップ持ちだから、

チップ無し武器の流通を許してない。


頑張ってひっそりと武器を集めたようだが足りない、

足りたとしても俺たちは死なない……

だから勝てるわけがない。


負け戦に命をかけて彼らは何を成したかったのか……

とまあそんな事は気にしても仕方ない、

今は自分の仕事に集中しよう。


死体の回収、それが今の俺の仕事だ。


トラックに乗って、この戦争で出た

全ての死体を荷台に積む。


新しい居住区に死体を残したくないってのもあるけど、

もう1つの理由の方が大きい。


もう1つの理由とは“人体のリサイクル”だ、

俺たちチップ持ちの体は工場で作られた人造人間だが、

造るには当然材料が必要になる。


仕組みを説明すると、

特殊な液体の入った専用の装置に

人体の構成に必要な成分を入れる。


すると液体内で人間が構築される。


材料は専門家が調合するので詳しくは知らないが、

人間を作るのだから人間を材料にしてもいいらしい。


だから死体を集めるように指示を出したんだろう。


チップ無し達はせっかくの材料を

燃やしたり埋めたりした後に、

手を合わせたり、よく分からない歌のようなものを歌って

「魂を弔う」とかいうのをするそうだ。


魂とかいう見えない物もそうだが、

弔いとかいうのも意味不明だ。


炭にして埋めるよりも再利用した方がいいに決まってる。


「命を大事に」とか言いながら

妙なオカルトの為に命を捨てる支離滅裂な連中なんだ、

負けて当然だ……。


そうこう考えてるうちに、

トラックの荷台に

泥と血にまみれた死体が幾重にも積み上がる。


そろそろ勤務時間も終わるし、

工場に持って行って今日は上がろう。


トラックに乗ろうとした時、

1人の隊員が手を振りながら近づいてきた。


「よう!そろそろ上がるんだろ?

俺も乗せてってくれよ!」


声をかけてきたのはドローン部隊に所属している

『ハンドル』のコードネームを持つ隊員だ、

ドローンが趣味で、

その実力を買われて軍にスカウトされた。


こいつは同期だが、

俺は補給部隊で今も燻っているというのに、

初めからちゃんとした部隊に所属している。


正直なところ嫉妬してる。


だけど友人と呼べるのはこいつしか居ない、

嫉妬はしていても一緒に仕事する時は力が湧いてくる。


ブレイス「しょうがねぇなぁ、助手席に乗れよ」


ハンドル「ありがてえ!それじゃ頼むぜ」


工場に向かう道中、他愛ない話をする、

こういう時間も悪くない、

そう思っていたらハンドルの顔が曇る。


ハンドル「今日さ、生きてる敵に言われたんだ……

『この町は俺達の思い出の町なんだ!

お前らみたいなバケモノの遊び場じゃねえ!』って


それで思ったんだ、もしも、俺の故郷がこんな風に

一方的にボロボロにされて……

新しい何かが建てられるってなったら、

どう思うのかなって……」


俺には故郷と言える場所は無いから、

そんな事は分からない。


でも、何か……胸の辺りに嫌なものを感じる……


ブレイス「分からないな……

でも1つ確かなのは俺達は正しいってことだ」


ハンドル「正しい?正しいって……なんだ?」


ブレイス「いいか?俺達は政治家達の命令で戦った。

そして、そんな政治家達の仕事は……

世の中を豊かで平和にする事なんだ。

だから俺達は……正しいんだ」


ハンドル「人を殺して、町をボロボロにして……

恨まれて当然だ、それでも正しいと言えるのか?」


ブレイス「……もうしばらくしたらここに新しい町が、

新居住区が立つ。

そこには幸せな暮らしをしてる市民が沢山居るんだ、

これはその為の戦いなんだ……」


正直なところ俺も苦しいが

何に苦しんでいるのか分からない。


今まで目をそらしてたけど、

彼らにも何か事情があるのかもしれない。


でも、それが分かったところでどうしようもない、

俺達には役目を果たす以外の道はない。


ハンドル「そうだな……そうだよな……うん、

しんみりさせて悪かったな、

今日は俺が奢るから晩飯一緒にどうだ?

いい店見つけたんだ」


ブレイス「悪いが、今日は疲れてるんだ……

だから、たらふく飲み食いしてやるぜ!」

いつも言うような冗談を言った。


このモヤモヤする気持ちはなんなんだ?

でも考えるのは昇進に関係ある事・その戦略だけでいい……ハズだ。


今の俺はただの隊員なのだから

読んでくださってありがとうございます。

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