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プロローグ
春の陽光が、馬車の窓から差し込んでいた。
父はライアスの髪を優しく撫で、母は指先から淡い魔法の光を生み出し、小さな動物の形に変えて見せた。
「ほら、またうまくできたわ。ライアスは誰を作りたい?」
少年は頬を赤らめ、照れながら答える。
「……トカゲ!」
その言葉に、家族は声を上げて笑った。
「そうか、じゃあ次は父さんがカッコいいトカゲを作ってやろう」
「お父様より上手につくるもん!」
母がくすくす笑いながら、膝に抱き寄せる。
「……きっと、ライアスは誰よりもすごい魔法使いになるわ」
「ううん、なりたいんじゃなくて、なるの」
その言葉に、父と母は顔を見合わせて、優しく頷いた。
——空が鳴ったのは、そのすぐ後だった。
閃光がすべてを飲み込んだ。
熱。衝撃。叫び声。
ライアスは、父と母の体温に包まれながら、確かに感じた。
何かが、壊れてしまったことを。
世界は静かだった。
けれど彼の中だけが、焼き付いた雷鳴で震えていた。
あれから、十年。
彼はまだ、あの春を思い出すことがある。
誰にも見せない、誰にも触れられない場所で——。