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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

アリとキリギリスへのインタビュー

作者: 優月桜

初めての投稿です。

小説と呼ぶには怪しいですが(^^;

どうぞ宜しくお願いいたします。


こんにちは、私はインタビュアーの

ミツバチのハッチと申します。


人間世界では、アリとキリギリスの生き様を

通して、人生の教訓を教える物語があると

聞きました。


アリさんの生き方は、私の生き方とも

重なるところが多ございまして、女王陛下の

奴れ・・ん゛ッん失礼しました。

忠臣として、朝から晩まで休みなく働き

コロニーを拡大すべく働いている

ところなど、もう共感しかないといった

心情でございます。


本日は、人間界では不朽の名作となって

いるらしい「アリとキリギリス」の物語では

語られることがなかった真実など

様々なお話をお伺いできればと思っております。



では、早速始めてまいりたいと思います。


アリの「アーリ」さんと、キリギリスの

「ギリッス」さん


ようこそおいで下さいました。

本日は、どうぞ宜しくお願いいたします。


ハッチ:


改めてまして、本日はお忙しい中

インタビューに応じて下さいまして

ありがとうございます。


アーリ:


は、は、はじめまして。わ、私はアーリと

申します。こちらこそ私のような者に

イ、インタビューをして頂けるなんて

大変き、き、きょ、恐縮しております。


ギリッス:


アハハ、アーリ、かたいかたい、リラックスしてー

初めまして、僕はキリギス界のアーティスト

ギリッスです。ヨロシク♪ばちん⭐︎≡(ウインク)


ハッチ:


ご丁寧な挨拶をありがとうございます。

お二人は、物語の主人公となられた訳ですが

お互いの第一印象をお聞かせください。

では、アーリさんからお願いできますか?


アーリ:


は、は、はい!わ、私がギリッスさんと

初めてお会いしたのは、青葉の生い茂る

夏の頃だったと記憶しております。

ギリッスさんは、いつお見かけしても

日がな一日を優雅に歌を歌い、演奏をし

楽しそうにしてらっしゃいました。

幸せそうな方だなと言うのが

第一印象でございました。



ギリッス:


じゃ、次は僕だね。

うーん、僕のアーリへの第一印象はねぇ

炎天下の中で、仲間達と一緒に

自分達の何倍もの大きさの獲物を運んだり

とにかく、休みなく働く姿をみて

真面目なんだなと思ったかなぁ

あとは、今を楽しめないのは

勿体無いなとも思ったかなぁ


ハッチ:


なるほど、お互いの第一印象は

まさに、見たまま!と言う感じだったわけ

ですね。


アーリさんにお聞きしたいのですが

幸せそうに見えたギリッスさんを

羨ましいとは思わなかったですか?


私も働きバチですから、業務内容も時間も

ギッチリつまってますから

ギリッスさんのような過ごし方は少なからず

羨ましく思いますが。


アーリ:


た、確かに、楽しそうで幸せそうなのは

見ていて、こちらも、ほ、ほんのちょっとは

羨ましい気持ちもあったと思いますけど

それ以上に、私はギリッスさんの先行きが

心配でなりませんでした。


何日も働きもせず、自分のやりたいこと

楽しいことばかりの過ごし方で

どのように食事を確保しているのか

不思議でなりませんでしたし。


冬将軍は、毎年必ずやってきて

餌場を死の大地に変えてしまうのは

わかりきっていること。


蓄えることもせず、その日暮らしで

大丈夫なのかと、そちらの懸念の方が

羨む気持ちより強かったですね。



ギリッス:


アハハ、だよねー。よくアーリには

説教されたんだよね。


「冬が来るのに、住処もなく、蓄えもしない

なんて、ありえない!遊んでばかりだと

後で、痛い目をみて後悔することになりますよ!」

って、それはもう秋になる頃には顔見るたびに

口酸っぱく言われたっけ。


ハッチ:


そうだったんですね。

そんなに、アーリさんからの忠告を受けても尚

ギリッスさんが生活スタイルを変えなかったのは

何か深い訳がおありだったのでしょうか?


ギリッス:


ん?まぁ、深い訳って程のことじゃないけどさ。

僕達、昆虫の一生はめっちゃ短いでしょ?

人間のように何十回も春夏秋冬を迎えられる

訳じゃない。


それに、「今日」と言う日は、自分の人生の中で

二度と巡ってこないでしょ。


そう思ったら、今日を楽しまないのは

とてつもなく、勿体無いような気がしたんだよ。


あの花も、あの木の葉っぱも、あの雲も

同じ姿は、二度とみられない。

二度と会えない瞬間なんだと思ったら

なんか、世界がキラキラして見えて

きたんだよねー。


寝食を忘れて、その中キラキラの中に

ずっと浸ってたかっただけで。

実際、その瞬間は楽しかったし

幸せしかなかったからね。


まぁ結局、そのせいで冬はめっちゃ

しんどいことになったんだけどね。


アーリ:


だから、あれほど忠告したのに!

全くもって、聞く耳を持たずに

遊び呆けて、挙句の果てに

行き倒れたじゃないですか。

倒れてるギリッスさんを発見した時は

正直、心配はもちろんですけど

憤りましたよ。

いや、きっと自分に憤ってたんですね。

ギリッスさんに届かなかったことが

悔しくて、伝わらなかったことが

悲しくて・・・。



ギリッス:


ごめん、ごめん。それ言われると

弱いんだけどね。アハハ。


ハッチ:


なるほど、一期一会を究極まで大事に

お過ごしになられていた結果の

生活スタイルだったと言うことだったの

ですね。

いやー大変、深いお話だと感銘を受けました。



ギリッス:


そんなことないよ。確かに今のこの瞬間は

二度と巡ってこない大事な瞬間さ。

でもね、自分を蔑ろにしてまで

傾倒していいものでもないんだよ。


ほら、たった今、アーリに叱られたみたいに

自分のやりたい「欲」だけを優先した結果

僕は、アーリ達に心配をかけたし

迷惑をかけることになったからね。


ハッチ:


迷惑ですか?そう言われますと

確か初期の物語では夏にあくせく働くアリさん達を

上から目線で、見下して冬が来て

ひもじい状態になり見下していた

アリさん達に助けを求め

断られたと言う展開でしたよね。

実際のところは、どうだったのでしょうか?



アーリ:


ギリッスさんは、見下したりはしてないんですよ。

彼にそんな意図はなかったと今なら分かります。

でも炎天下の中、休みなく働く僕達の

受け止め方は、そうはなりませんでした。


例えば、ギリッスさんが

「こんな暑い中、働くなんてどうかと思うよ」

と仰ったことがあったんですよ。

でも、それは私達を見下したわけでなく

こんな暑い中で、そんなに働いて身体は

大丈夫?無理しない方がいいんじゃないか?

と、思っての発言だったのだと

ギリッスさんを知ったことで、そう思うように

なりました。


けれど当時の私達は、冬将軍の死の大地を

生き延びる為に、餌が豊富な今無理をせず

いつするんだ!と言う、コロニーの方針に

何も考えずに、ただただ、命じられるまま従い

働いていました。でも、ハッチさんになら

わかると思いますが、コロナニーには

必ず第二部隊が設立されてますよね?


ハッチ:


あ、はい、そうですね。

それは、コロナニーを守る為の

保険ですから、仕方ないと言えば

そうなりますけど・・・



アーリ:


分かっています。必ず必要な部隊だとは

分かっているんですけど、必死になって

働く私達を尻目に、ボーッと空なんて

眺めてる、第二部隊の者を見かけたりすると

やはり気分のいいものではなかったんですよね。

実際、第二部隊の隊員は有事以外は何もしない

ことが仕事でしたし。分かってはいても

なんで自分達ばかりと言う、鬱積した気持ちが

第一部隊全体に、確かにあったのだと思います。


そこに、第二部隊の隊員達と同じように

遊んで暮らすギリッスさんからの言葉を

私達が、ネガティヴに受け取った結果が

物語の中での、見下し発言と解釈されたのでは

ないかと推察します。


ハッチ:


なるほど。発言は、発した側の意図とは関係なく

受け取る側の心理状態によっても

かなり左右されると分かりますね。

興味深いです。


ギリッス:


そう、そう、僕はあの時は本当に

大変そうだと思ってさ、熱中症とか心配して

たんだよ。だけど、僕の普段の生活態度では

誤解されても仕方なかったと思うよ。

実際に、仕事を手伝ってあげとかの

行動で示した訳でもなく、言葉だけなら

いくらでも、なんとでも言えるからね。

大事なのは、行動なんだって僕も

学ばせてもらったよ。


ハッチ:


いやー、ギリッスさんは本当に謙虚な

方なんですね。

私も正直、物語の内容は今日まで事実で

実際あったことなのだと思って

しまっていました。


私も女王陛下を戴く組織の人間ですので

考え方としては、アーリさんと似た

感性ですからね。

でも、心情を含めた詳細が見えてくると

印象は全く違うものになりますね。



ギリッス:


ハハハ、そぉ?良い印象に変わったなら

嬉しい限りだよ。


でも、誤解されるのは仕方ないと思ってるよ。

自分が体験したこがないことは

想像するしかないけど

その想像力だって、自分の体験や経験以上の

ものを想像するのは簡単じゃないと思うんだよね。


自分の抱えてる「常識」の範疇を

超えて想像することは、難しいよ。


アーリ:


確かに、その通りだと思います。

私もギリッスさんと出会わなければ

幸せとは何かなど、考えもしなかったはずです。

女王陛下の為、コロナニーの為だけに

働き続ける一生に、なんの疑問も

持たなかったと思います。

組織で働けることこそ幸せだと

組織の中で、餌の配分に関わる内勤に

なれることこそ、出世であり名誉であり

それが自分の幸せなんだと思い続けて

いたと思います。

心の中で、不満を抱えていても

それしかないとすら、思ってましたから。



ハッチ:


なるほど、お互いの全く相反する生き方を通して

影響し合い、気づき、成長できる点が

あったと言うことですね。

物語のクライマックスである冬が到来した後は

ギリッスさんには、厳しい現実になったのは

物語の通りだったと言うことでしょうか?


ギリッス:


うん、そう。そう。

あの時は、めっちゃ大変だったよ。


寒いし、ひもじいし。

その時になってね、アーリの言ってた意味を

これでもかって言うほど、痛感したわけ。


なんだかんだ言って、僕も僕の生き方に

疑問なんてもってなかったからね。

素晴らしいこの一瞬、一瞬を満喫する以外に

人生になんの意味がある!って本気で

思ってたし。


でもさ、違ったんだよ。

本当に素晴らしい一瞬、一瞬だって言うなら

寒さに震える瞬間も、ひもじさに涙が出る

瞬間だって楽しめないなら、それは欺瞞でしょ?


楽しい瞬間だけは、受け取りたいけど

苦しい瞬間は、排除したいなんて

ダブルスタンダードだよね。


だって僕はこの一瞬、一瞬を謳歌する

為に生まれてきたと、豪語してたし

労働はそんな時間を奪う無駄なことだって

思ってアーリの忠告をスルーし続けたわけ

だからね。


でも、寒いのも、ひもじいのも

楽しめなかったよ。辛くて、苦しくてさ

僕は、過去の僕を呪ったよ。


なんでもっとちゃんと、アーリの話を

受け止めなかったのかって、後悔先に立たずを

嫌と言うほど、実感したよねー。


僕の生き方は、僕を本当に大事にする

生き方じゃなかったんだって悟ったよ。


そんなことを考えながら雪の中

あてもなく彷徨ってさ

そのうち、とうとう力尽きて倒れて

あー、僕はこのまま死ぬんだなって覚悟した。


自業自得って、こう言うことを

言うだなーなんて頭の片隅で思ってたよ。



ハッチ:


あ、あれ?物語の中では、アーリさん達に

助けを求めて尋ねたとなってましたよね?


アーリ:


それが、ギリッスさんは一度も訪ねてなんて

来てないんですよ。

ギリッスさんがさっき言ってましたけど

自業自得だ、自己責任だって思ってたからか

誰にも助けなんて、求めなかったのだと

思うんですけど・・・。


ハッチ:


えっ?えっ?じゃ、ギリッスさんは

その後、どうなってしまわれたんですか?


ギリッス:


それがさ、カッコつけて自業自得だからなんて

言ったけど正直、恥ずかしくて情けなくて

プライドが邪魔して、助けを乞うことが

できなかっただけなんだよね、えへへ。

カッコ悪すぎだよねー。


ある意味、苦し過ぎて自暴自棄にもなって

たんだと思う。

あっ、ほら人間世界でピッタリな諺あるよね。

「貧すれば、鈍する」だっけ?

まさに、それって感じだったかなー。

だんだん、どうせ僕なんてって

なってきて、その後はこんな自分なんて

どうにでもなれって

気持ちになってくるんだよね。


それが、1番自分を大事にできてない

生き方だって言うのにさ。


雪の中で、意識が薄れて行く中で

アーリ達が探しに来てくれたのが

分かってさ、あー、このまま

アーリ達のご飯になるのもいいかもって

なんて思ったり・・・



アーリ:


やめて下さいよ!縁起でもない。

確かに、助けるのが遅れて、間に合わなかったなら

弔いとして、美味しく頂いたかもしれませんけど。


ギリッス:

えー、やっぱり!


アーリ:

冗談ですよ。ハハハ(が、目は笑ってない)


ハッチ:


ま、まぁ、とにかく、ギリッスさんが

無事で何よりでした。


アーリさん達に救助されたあとは

療養生活をされていたのですか?


ギリッス:


うん、アーリ達の声聞いたら安心したのか

そのまま意識失ったみたい。

気がついたら、アーリのコロニーにいた。

部屋は温かいし、美味しいご飯も分けてもらって

本当なら、とっくに死んでたはずなんだけどね。

泣きながら、ご飯食べたよ。

僕は、生きてるっておもったら

嬉しくて、有り難くて。

命を救ってもらったけど僕は、アーリ達に

お礼できるものを何も持ってないし

死んだらせめてものお礼に

アーリ達のご飯になる約束しようと

思ったんだよ。

それくらい、手を差し伸べてもらえた

ことが嬉しかったんだよ。

自暴自棄なんかじゃなく、心からの

感謝の思いでさ。



でも、女王陛下が

「そなたには、自身も楽しめて、他の者も

楽しますことができる才があるではないか」って

言ってくれて、それでお世話になってる間は

毎日、コンサートしたよ。


女王陛下も胎教や幼虫達の情操教育には

最適だって、喜んで下さって。


本当に有り難かったよ。


アーリ:


そうなんですよ。ギリッスさんの演奏は

素晴らしくて。

それで、私達も気づいたんですよ。

あの過酷な夏の労働を乗り切れたのは

ギリッスさんの歌や演奏で癒されて

活力をもらってだからじゃないかって。


自分とギリッスさんは考え方も

生き方も違うけど、それでも

それぞれが、それぞれの役割の中で

お互いの役にも立ってる。

そう言うことじゃないかって思えてきて


そしたら、第二部隊への不満も

消えました。


彼らは、コロニーが有事になって

壊滅しかけた時、少ない隊員で

私達がやっている全業務をカバーしなくちゃ

ならなくなる。


そうならないのが1番だけど

もしそうなった時、その働き方は

きっと私には負担だし、やりたくないと

思ったんですよ

私は、コツコツ働く方が性にあってる。

そんな自分の一面も知るきっかけに

なったんです。

だから、ギリッスさんとの出会いは

貴重な経験でしたよ。


ギリッス:


そう言ってもらえて、嬉しいよアーリ。

こちらこそ、ずっと生き方を変えない僕の

自業自得の窮地に、手を差し伸べ助けて

くれたことは、一生恩にきるよ。

僕は、僕のできることで君達に恩を返していくよ。

ありがとうアーリ。


アーリ:


こちらこそ、ギリッスさんのお陰で

自分の常識に沿った生き方こそ正しい。

皆が、そう言うのだからそれが正解で

正しいはずと、疑うことすらできなく

なってました。


私の幸せは、私にしか出せない答えなのに。

自分が何が好きで、どんな時に幸せで

そんな自分の知らない「自分」に気づかせて

もらいました。ありがとうございました。


(がっちりと固い握手を交わすアーリとギリッス)


ハッチ:


ううっ、なんて感動的なんでしょう。

考え方も生き方も全く違う者同士でも

相互理解に努めることで、新たな気づきが

成長をもたらすんですね。本当に感動

いたしました。


童話の中では、見えなかった真実を

語って頂きました。


残念ながら、お時間となってしまいましたので

本日のインタビューは、ここまでとなります。


アーリさん、ギリッスさん

貴重なお話をたくさん聞かせて頂き

本当にありがとうございました。


                ーおわりー

読んで下さって、ありがとうございました。


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