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第1章第3節:未知との邂逅 III

 ティヴァの廃墟の中心街へ進む途中、トウマたちは黒く煤けたサイボーグの破片を見つけた。時間が経っており、それが誰なのかは分からなかった。


「ふむ、これじゃどうにもならんな。完全にお釈迦だ。」


 ジョージが近寄って無造作にパーツを手に取り、使えそうか確かめた。しかし、すでに劣化しており使い物になりそうになかった。収集の価値なし、と判断したジョージは拾ったパーツをその場に放り捨てる。


「なぁ、ジョージはこの辺りまで来たことあるか?」


 隊員の一人が尋ねる。ジョージはトウマたちがまだ子供だった頃から部隊に加わり、数々の危険な任務を生き抜いてきた歴戦の勇士だ。


「そうだな、まだ視界が広かった頃に何度か来た記憶はあるな。」


 そう言いながら、わずかに首を傾け辺りを測るように視線を向ける。かつてトウマをかばい、片目を失ったジョージ。彼はそれ以来、隻眼のまま今も第一線で戦い続けている。


 周囲を見渡すと、壁面には弾痕が刻まれ、爆発の熱で焦げ付いた地面が広がっていた。そこには、かつての激しい戦闘の記憶が刻まれていた。


「うおっと。」


「こりゃひでぇ。」


 隊員たちは軽口を叩いているが、その表情からは不安が隠せなかった。


 トウマは気を取り直して仲間たちに指示を飛ばした。


「この先は危険かもしれないな。警戒を怠るなよ。」


 リョウが再び先導役として前に進み出た。彼はチームの中でも特に機械化が進んでおり、その高い能力からよく先導を任されることが多かった。寡黙で感情をあまり表に出すことはないが、その落ち着いた判断と行動力は仲間たちから信頼を寄せられている。


 錆びついた看板が風に揺れ、かすかな金属音が静寂の中に響いていた。石畳はひび割れ、草木がその隙間から顔を覗かせ、自然が人の手を離れた都市を少しずつ飲み込もうとしていた。


 かつてこの街がどれほど繁栄していたか、トウマたちには知る由もなかった。彼らが生まれ育った時代には、既にすべてが歴史と化し、かつての暮らしの名残はただ朽ちた構造物として残っているに過ぎなかった。


「トウマ、このエリアは初めて来る場所よね?どこまで進むつもりなの?」


 マリアは不安そうに尋ねた。


「この先に調べておきたいところがいくつかあるんだ。そこまでは進むつもりだ。」


「その後の状況を見て判断するが、無理はしないようにする。」


 トウマは取り繕っているが、計画としては大分ずさんだった。


「状況次第って……それ、ただの行き当たりばったりじゃない。」


 トウマの大雑把さにマリアはあきれ気味に咎める。


「そんなことは分かっているつもりさ。でも、同じところを何度も探しても何かが見つかるわけはないだろう?」


 トウマはうるさい小言にうっとうしさを覚える。


 一瞬、二人の間に険悪な空気が流れたが、トウマは目を閉じて深く息を吸い込んだ。呼吸を整えた後、穏やかな口調で言った。


「悪かった。でも、もう少し探索を続けさせてくれないか。この場所は初めて来るエリアだから、地形を把握しておきたいんだ。」


「緊急時の退路や隠れ場所を確認することで、生存率も上げられるはずだ。」


 マリアはトウマの言葉に渋々同意した。


「……そういうことなら仕方ないわね。でも、今回の目標は達成しているし、早めに切り上げましょう。何を思っているか全部は分からないけど、私はあなたを信じているから。」


 そのやりとりを見ていたジョージがにやつきながら口を挟んだ。


「痴話喧嘩は終わったか。今後の計画については分かったが、ここらで小休止としないか。」


 マリアは頬を赤くしながら、ばつが悪そうに後のことをトウマに押し付ける。


「そうだな……よし、ここで一息つこう。」


 トウマは僅かに考え込んだ後に、何事もなかったように休憩を指示する。


 その平然とした態度に、周りの隊員たちは肩をすくめたり、あきれたように苦笑いを浮かべたりしていた。


 トウマたちは風よけに手ごろな建物の陰で小休止をとり、再び廃墟の奥へと進んでいった。







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