プロローグ第3節:分断された未来
都市部では、サイボーグ化によって様々な恩恵を受ける人々が増えていった。彼らは強化された身体能力を活かし、過酷な労働から解放され、より効率的な生活を享受していた。機械化された身体は健康問題を克服し、労働能力の向上により高収入を得ることも可能にしていた。
新しいテクノロジーと融合した生活は、機械化の恩恵を受け入れた人々にとって、まさに理想的な未来を築くものであった。しかしその一方で、経済的理由や信教的な理由から機械化を受け入れられない人々も少なくなかった。
農村の住民たちの多くは、機械化に必要な費用を負担することができず、伝統的な習俗から大きく外れることになる機械の身体に強い抵抗を持っていた。彼らにとって、機械化された人々が享受する恩恵は手の届かないものであり、むしろ自分たちの価値観や生活を脅かす存在であった。
また、都市部においても、自らの信条や心理的な嫌悪感から機械化を否定する人々がいた。それらの人々は、自らの選択の結果として機械化の恩恵を得られず、職を失い貧困化していった。貧しくなったことで、さらに機械化された人々に対する憎悪を募らせた。
機械化の恩恵を受けられない人々は、サイボーグたちのことを「アセンディアン(上級人類)」と呼び、不平等に対する怒りや劣等感、嫉妬心から蔑みを込めてそう表現するようになっていた。この対立は時間とともに深まり、社会不安の種としてたびたび表面化し、様々な問題が起こるたびにその原因の一つとして指摘され続けていた。
先進国では機械化による技術の恩恵を享受する人々がますます裕福になり、一方で発展途上国では機械化が進まず、経済的格差が広がり続けた。この結果、発展途上国から先進国への移民が増加し、新たな社会的不安が生まれた。
アセンディアンたちは、自らの立場を守るため、移民に対して排他的な態度を取るようになり、移民たちは不平等に対する不満と怒りを募らせた。こうして社会の緊張は一層高まり、対立は徐々に暴力的な形へと変貌していった。
移民ら貧困層による反政府活動は、電力供給施設への妨害や、サイボーグ技術を推進する企業の建物に対する破壊行動が増加していた。市街地では至る所で緊張感が高まり、市民たちもいつ襲撃に巻き込まれるかわからない恐怖の中で生活していた。
政府はこの危機的状況に迅速に対応する必要に迫られた。