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第3章第1節:未来への希望 I

 雑草が生い茂る荒れた川辺を、3人の人影がゆっくりと歩いていた。夕暮れの赤い光が彼らの影を長く伸ばす。


 その人影はトウマ、マリア、ケイの3人だった。彼らの顔には深い疲労が刻まれていたが、その中に達成感の輝きも垣間見えた。息をするたび、沈んでいた胸の奥に少しずつ光が差し込み、足取りが徐々に軽くなっていくのを感じた。無言の時間が続く中でも、互いの存在が支えとなり、心には安らぎが広がっていった。


「トウマ兄ちゃん、なんであんなところに排水口があって外につながってるなんてわかったの?」


 ケイが笑いながら問いかけた。


 トウマは振り返り、会心の笑みを向ける。


「奥の部屋で見つけた古びたポンプ機……あれを見て、この地下基地も元々は、昔の人類が作った治水施設だったのを機械知性(オートマトン)が改装して使ってたのが分かったんだ。でもまあ、正直、排水口が外に繋がっているかは賭けだったよ。埋め立てられてる可能性もあったし、外に出られる前に息が続かなくなる可能性もあった。」


「あの状況から生きて戻れるなんて、今でも信じられないわ。あんな無謀な作戦、もう二度とごめんだわ。」


 マリアはため息をつきながら言った。


「確かに危険な作戦だった。でも、その分得られたものも大きかったさ。」


 トウマは応えながら失ったものと得られたものを心の中で確かめていた。


「そうね……あんな場所でアイラが見つかるなんて思わなかったし。敵の拠点を潰せたおかげで、村ごと逃げ出す必要もなくなったわ。」


 マリアもまた得られたものの大きさを感じていた。


 歩き続ける3人はそれぞれ人影を背負っていた。ケイは重傷を負ったハルを、マリアは意識のないアイラを、トウマは地下で人型の機械知性(オートマトン)の抜け殻を背負っていた。


 ハルは手当てによって容態は安定しているが、早く医者に見せなくてはいけない。


 アイラは意識が戻らず、本当に生きているのかマリアは不安に思う。


「ねえ、トウマ。本当にこのまま真っすぐセーフハウスに向かって大丈夫なの?」


 危機を乗り越えたことで気が緩んでいた自分に気づき、警戒を強めるべきではないかと問いかけた。


「大丈夫さ。ここまでくれば追ってくる奴らもいないはずだ。それに、今は一刻も早くハルを治療しなきゃならない。」


 トウマは前を見据えたまま答える。


 マリアは小さく息を吐きながら、背中に背負ったアイラの冷たさに不安が募る。


「でも、アイラは……彼女、本当に生きているのかな。全然目を覚まさないし、まるで人形みたい……」


 トウマは一瞬立ち止まり、振り返ってマリアを見た。


「確かに不安になるのもわかるけど、俺たちがここまで連れてきたんだ。絶対に助けるさ。」


「……そうね。信じるしかないわね。」


 マリアは失ったものを取り戻したと思った矢先、それが幻のように消えてしまうのではないかという不安を必死に振り払った。


 一方でトウマは敵の拠点で見つけた人型の機械知性(オートマトン)の抜け殻を持ち出していた。これを研究すれば何か新しいことが分かるかもしれないと、心の中で興奮を隠せなかった。


「トウマ兄ちゃん、それ、本当に持ち出して正解だったのかな?」


 ケイが不安を口にする。


「あのまま地下に埋めておいた方が安全だったんじゃないか?急にこいつが動き出して、俺たちを襲ったりしないよな?」


 トウマは笑みを浮かべながら振り返った。


「いや、これは今までで最大の戦果だ。初めて遭遇したときに見た、こいつの凄まじい性能を見ただろう?これを調べれば俺たちもさらに強くなれるかもしれない。」


「まあ、確かに……でも、もし何か起きたら、俺は知らないからな!」


 無愛想にそう言って、ハルを背負い直した。


 3人はゆっくりとした歩調で進み続け、合流地点であるセーフハウスを目指す。


「あと少しだ。頑張ろう。」


 トウマが二人に声をかける。


 マリアとケイも互いに視線を交わし励ましあう。傾いていた日はすでにとっぷりと暮れていた。周囲の音は静まり返り、足元を照らす月も雲で隠れてさらに暗闇が増す中、3人は進み続けた。やがて遠くに良く見知った建物群が浮かび上がり、合流地点であるセーフハウスが見えてきた。







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