ギルドと依頼の処遇
ニューポートコロニーVIII
星間合衆国ユナイトスターズ(U.S.)の国境付近に新設された貿易港のうちの8番目。
他国からの船や物資が行き着く場で、商業が盛んな都市型コロニー。
多くの人々で賑わう豊かな場所だが、水面化では違法な取引が行われ、犯罪者や流れ者が日陰に蔓延る街でもある。
『こちら8番ポート警備局、通行証を確認する。』
「了解。そちらに通行証を送った。」
『……確認がとれた。貴船は速やかにハンガー47に進むように。』
「了解。」
指定されたエリアの格納庫にマルコシアスを停泊させた。
港のメンテナンスロボがすぐにメンテナンスを始め、別料金を払うと燃料が補給される。
「じゃあ俺はギルドに行ってくるから、船は任せた。」
『かしこまりました。お気をつけていってらっしゃいませ。』
──────
格納庫を出て街を歩く。
商店が多く並び、人々が売り買いをしている。
この時代、貨幣は全て電子化されており、皆手に持つスマホで支払いをしている。
普通の都市でよく見られる賑やかな商業街だ。
だが、これは表面。
裏には血に汚れた影が存在する。
薄暗い路地裏に入ると、景色はガラリと変わる。
ゴミが散らかり、柄の悪い連中が睨んでくる。
その一角にある建物に、ギルドがある。
ギルドに入ると、これまた感じの悪いゴロツキどもが、鋭い視線を浴びせてくる。
少年は名の知れた凄腕の賞金稼ぎだ。
浴びせられる視線は、興味、憧憬、嫉妬、畏怖などさまざまなな感情が込められている。
俺はカウンターに立つ女性に、声をかけた。
「アンナ、戻ったよ。」
「お帰りなさいませ、ライ様。マスターが奥でお待ちです。」
案内に従って、彼は奥の部屋に入った。
──────
俺はギルドの奥にある部屋に入ってた。
中には右目に眼帯を巻いた糸目の男が、高級ブランドの装束に身を包み、高価そうな椅子に座っていた。
あと香水臭い。
「今回も早かったねえ。これで連続依頼成功記録398回目だ。いやぁ、流石だ。」
「お世辞はいい。それより報告。」
俺は今回遭遇した出来事を包み隠さず報告した。
実は彼こそが、この件について個人的に依頼をしてきたのだ。
「なるほどねえ。どうやら、とんでもなく厄介な件に足を突っ込んだみたいだねぇ。それも帝国が絡むとはねぇ。」
のんびりとした喋り方だが腹の内が読めない。
そんな、捉え所のない男だ。
「取り敢えず、依頼の方は問題ないようだから契約通りの報酬を出すよ。それで、回収したもののことだけど……君が持っていてくれ。」
「……どういう意味だ?」
「言葉通りの意味さ。まだ、あの箱の中身は確認していないのだろう?」
「……ああ。」
「だったら、君がその中身を確認するといい。気に入ったのなら、そのまま君が持っていてくれ。」
「その道理がわからない。」
「私はあくまでもアレがあの賊の手にあるのを避けたかっただけだよ。その他のことは別にどうだっていい。それに君にとっても、いい戦力となる筈だよ。」
「……ということは、アレの中身を知っているんだな?」
「おっと、つい喋りすぎてしまった。まあ、さっきも言ったように中身は自分の目で確かめるといい。」
こいつ……。
「……じゃあ、また。」
これ以上何を聞いても無駄だと判断した俺は、席を立った。
ギルドマスターはニコニコとしながら手を振って俺を見送った。
何度も思うが、やはり胡散臭いし腹が立つ。
……あと香水臭い。
「ああそうだ。最後に一つ聞きたいんことがあるんだけど……どうしてさっきからずっと鼻を覆っているんだい?」
「……お前には関係ない。」
大いにある。