羊と柵
ある牧場で高さ3mにもなる柵を前に100頭の羊は、戸惑っていました。
そんな中、1頭の羊はいいました。
「まず柵を越えるってのがどういうことか教えてやるめ~」
この羊は群れで最も足の速い羊でした。
残りの99頭の羊が心配そうに見守る中、羊は柵に向かい走り出しました。
勢いよく走り出した羊でしたが、大きな音を立て、柵にぶつかると、押花のように柵の模様になってしまいました。
羊たちは、越えられない柵を前に困り果ててしまいました。
すると、また1頭の羊は言いました。
それを見て1頭の羊はいいました。
「情けないやつだ。俺が本当のジャンプってもんを見せてやるめ~」
この羊は群れで最も高くジャンプできました。
羊は思い切って柵に走り出すと、高くジャンプしました。
しかし高くとびすぎたため、そのまま柵に落ち、柵の高さを高くしてしまいました。
98頭の羊たちはすっかり怖じ気づいてしまいました。
すると、また1頭の羊がいいました。
「頭を使えばできないことはない。今からそれを証明するめ~」
この羊は群れで最も頭がよい羊でした。
羊はほどよい角度と助走で柵に挑みました。
すると見事に柵を飛び越えましたが、着地と同時に足の骨をぽっきり折ってしまいました。
それを見た97頭の羊たちは言いました。
「私たちには無理なことだった。諦めるめ~」
そうして羊を置いて、みんな帰ってしまいました。
羊は足を折ったので柵を越えられず、皆のいる方に行きたくても行けない、始めの状態に戻ってしまいました。
ついに羊は、目標に向かい努力するすばらしさと、それを達成することの空しさを悟りました。
羊はその場でしゃがみこむと、空を見上げ、ゆっくり目を閉じました。
羊は柵の向こう側で一頭のんびりと暮らしたそうです。
[おしまい]
人生における夢と、それを乗り越えた先にあるもの、それと時間が経ってから感じること、それらを何となく感じてもらえたらうれしいです。