耽美な華に僕は酔う。
放課後、僕はとある部室に来ていた。
南校舎の四階、さらに端の教室ということもあって僕はあまり来たことがない場所だ。なんなら一香の頼みを聞かなかったら卒業するまで来なかったのかもしれない。
部室の前には「相談室」と書かれた、少し古い看板が立てかけていた。ノックをしたが声がしなかったので、致し方なく中に入ることにした。
薄暗い教室、まだ何も並べられていない本棚達、そして無造作に置かれているダンボール。この部屋はどこか物悲しい………
部屋の中心には比較的新しいソファが置いてあった。毛布と枕が置かれており、少し熱がこもっていた。
まるで少し前まで誰かが寝ていたかのように………
部員がいないのでは一香からの用事を済ませられないので、何か本でも読んで時間を潰そうとダンボールに手を伸ばそうとした瞬間、僕の足は床を滑り頭は地面へと向かった。
転んだ僕は積み上がったダンボールたちにとって餌食でしかない、僕は倒れてくる波に抗えなかった。
少しずつ僕の意識は遠のいて行った。
「えっ!?誰かつぶされてる!」
僕が目を覚ましたのは誰かの声が聞こえた時だった。顔は見えないが、声からしておそらく女子生徒だろう。
「あのー大丈夫ですか?あれなんか見たことある顔だ。」
僕はゆっくりと目は開けると、声の主と目があった。
「えっ……」
そんな声が漏れてしまったのもしょうがないであろう。僕の目の前にいたのは一年ほど前、あの公園であった少女、吹雪だったのだから。