百二十秒の出会い
季節もすっかり変わり、全身を凍えす風が吹いている。
少しずつ気温も上がり始め、歯が落ちきっていた木々から芽が顔を覗かしていた。
悴んだ手で自転車のハンドルを掴み、僕は静かな山道を1人進んだ。
いつからだろう、この景色に何も感じなくなったのは。
「ヘッくしゅ」
ふとくしゃみが聞こえてきた、おそらく女性のものだろう。
声の元を探すと山道の端に小さな公園があり、中には少し古びた遊具がいくつかあった。
ふとブランコの方へ目をやると1人、少女が座っていた。
淡い青髪のサイドテール、そして見たことのないどこかの制服。
おそらく僕と同じ中学三年生だろう。
派手な見た目に対して、少女は1人静かにブランコを漕いでいた。
「綺麗だ。」
無意識にそんな言葉が漏れた。
駅前でいろんな女性に話しかけていたナンパ大学生や、ライトノベルの鈍感系主人公のように彼女に対して真っ直ぐ伝えられればいいのだが、僕にはそんな度胸もなければラノベの主人公でもない。僕の言葉は白くなって消えていくばかりだ。
「んっ・・・・・んっ?」
彼女はこちらを見ると訝しむ様な眼差しをした。
「邪魔だったかな?」
「・・・・・・・。」
「すぐ出ていくから、少しだけいてもいい?」
「・・・・んっ・・・・」
少し表情が柔らくなった。
どうやら僕の来訪を許してくれたらしい。
「僕は|佐藤凛音 よろしくね。よかったら君の名前も教えて欲しいな?」
彼女は顔を少し俯かせた、悩んでいる様だ。
「・・・・・・ふ・・」
「ふ?」
「・・吹雪・・私の・・名前。」
「いい名前だね。」
「んっ・・・・・。」
そういうと彼女は再びブランコを漕ぎ出した。
僕は時計を見て再び山道を登り始めた。
何気ない日常の1ページ、時間にしておよそ二分弱の出会い。そのうち忘れていくだろうと、この時の僕はそう思っていた。これが僕たちの始まりだった・・・・・
二ヶ月後、僕は高校生になった。
どうも!犬バケツです。日頃からいろんな展開考え過ぎて内容が少し変わってしまうことがあります。ご了承ください。投稿はとても不定期になってしまうと思います。