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イーぺル公夫妻は慌てふためく?

「守りに徹するしかないな。野戦陣地の構築だ。事前の準備の通りに構築する。」

 アロイスは、広げられた地図の上に広げたり手を叩きつけた。大きな音がたったが、それに将軍、参謀達が押されたのではない。野戦を行う、野戦の地に、強固な野戦陣地、もはや砦としかいいようのないものを短期間で構築することができるのかという疑問が崩れ落ちたからだった。

 イーブル公アロイスの傍らには、公妃のロゼットが静に佇んでいた。

“大丈夫?”“分からないよ、銃砲も不足しているし…。とにかく、これしかない。”“あの女の聖女の力はどうするの?”

「しかし、相手側の聖女の存在は、どうしますか?」

 おどおととして将軍が尋ねた。

 アロイスは、チラッと横の妻ロゼットを見た。ロゼットは、みるみるうちに、物凄く不機嫌な顔になった。“ま、まずい!”アロイス以下ロゼットを除く、作戦会議参加者全員の心の声。“閣下。”そして、希望は、アロイスに向けられた。“しかたがないな…。”

「聖女?ハーグ公妃は、単に聖女に似た力を持っただけだ!私と妻の力を合わせれば、2人の合わせ技で抑さえられる!」

“自信はないけど、まあ、信じてくれ。”とアロイスは一同を見た。一同もうなずいた、心の中で。しかし、

「そ、そうよ!アロイス様と私の合わせ技で、あの尻軽、淫乱、裏切り女をひれ伏してやるわ。失禁して、腰を抜かせてやりましょう!」

“う~ん。でも、姉さんはやりそうだな。”"アロイス。あなたの聖女みたいな力・・・大丈夫よね・・・私は?""あの力・・・乱暴な力なら・・・。何度も合わせ技を練習したから・・・。銃砲の数には入っていない簡易迫撃砲と手榴弾、焼夷弾、前世知識で作った、が陣地戦で効果を上げてくれることを期待して・・・。後やはり前世知識と魔法で何とか増産して量を確保できた火薬が・・・局面を変えてくれる・・・。""絶対ざまあさせないからね!"後一つ。二人はこれからの敵の出方をよく知っていた。さらに、敗北する要因は、原作での、の多くは全て消し去っていた。とはいうものの、一応原作通りの展開で、ハーフ公国側がやたらと優勢だった、一応、色々な要素が。

「やーい、この尻軽女の聖女もどき!あなたの聖結界は、その程度なの~?」

 敵陣までは声は到底届かないことはわかっているが、歪んでいる敵陣の聖結界に向って、思いっきり罵っていた。自軍の士気のために、自軍の将兵の耳に届くことを前提にしているのだ。そのうち、相手方にも伝わっていくことをも想定しているのだが。

“なんで、こうも、形の上では原作通りに進行するのだろうか?”悪政などしていないのに、していないはずだ、こうやってイケメン公からの侵攻を受けるのである。アムステルダム共和国からの要請とハーグ王国の利害によることだとは分かっていた。"あの王様、そんな俗物ではないはずなのに・・・。"と元婚約者のことを、アロイスは心配していた。

「何を心配しているのですか、アロイス様~。ま~さか、自分を捨てた元婚約者のことを心配しているんじゃないでしょうね~?」

"こ、怖いよ~。お、お姉ちゃん~。"後ろから、肩に両手を置かれてアロイスはぞっとして、冷や汗があふれ出した。

「まあ、幼馴染みでもあるしね。でも、それだけだよ。お前だって、彼女は大の親友だったんだろう?」

「ま、まあ、そうだけど…。」

「とにかく、今は勝つことだけだから…。」

「そ、そうよね!」

 ハーグ公国軍は、イーブル公国側の防御陣地を突破することも、砦を落とすこともできなかった。はじめは砲撃、魔法攻撃の後、果敢に突撃を繰り返してきたが死体の山を築くばかりだった。そのうち、砲撃、魔法攻撃を主体に、その援護の下にじりじり迫ってくる戦法に切り替えた。しかしそれも、手榴弾と曲射砲、迫撃砲モドキ、そして、強力な狙撃用大口径銃により、損害を大きくするばかりだった。

 そのうち、別の方面からの奇襲攻撃にでたが、出るところ、出るところが、事前に察知されているように十分な装備、準備を整えたイーブル軍の野戦陣地が待ち構えていた。結果、その全てでほぼ全滅。

「どういうことよ!」

 ハーグ公国妃は、泣き叫んでいた。"後悔?私を捨てた男と奪った女に、どうして私が負けるのよ?"それはあくまでも彼女の頭の中での記憶だが。

 聖女である、その力が覚醒した自分の防御結界が、あんな男と女の防御結界とのぶつかり合いで軋み、押し負けている現実をどうしても認めたくなかった。"私は何か間違えたのかしら?"

 夫の視線が冷たくなるのを感じてならなかった。

“どうして、こうなったのよ?ちゃんと婚約破棄されて、本来の人と結ばれて、聖女として覚醒して、婚約破棄した馬鹿男と寝取り女にざまあする方向に進んだはずなのに…。あ?婚約破棄をあの男がしたわけではない…?そ、それが間違えの始まりだったの?”

 夫には元々の婚約者がいた。愛人にして、自分と天秤にかけるように…。さらに、他の愛人もいた。“全然、上手くいっていないよー!”彼女は必死に防御結界を張りながら、心の中で絶叫していた。


 その頃、

「いけません。彼は裏切っています。」

と叫び声が上がった。

「は?」

「え?」

という顔のカントス王国国王夫妻。

「た、ターラが、そういうなら…。父上、母上、こちらに。」

「そ、そうですわ。ターラが言うのなら…。さあ、私達の後ろに。」

とわからないながらも、国王夫妻を守ろうと、2人を引き留め、盾になろうとするように、その前に立つ王太子夫妻。

「な、何を…援軍を率いてきてくれた国の王への礼儀を欠いては、援軍の話がなくなるだけでなく、かえって敵方につくことになってしまうのです。それも分からず、こんな小娘の言うことを信じるのですか?皆、この女を捕らえ、陛下をお連れするのだ!…どうした?宰相の私の言うことが分からぬのか?あ、兄上も、ぼんやりしているな!」

 小柄で、貧相で、醜悪とさええいえるが、聡明さと傲慢さが共存した顔だちの宰相は叫んで、周囲の将兵に命じた。

 国王夫妻は、彼の言葉に自分達を見下すようなものを感じて、退くばかりだった。それに、大将軍である彼の兄をはじめ、誰もが彼女はターラの言葉の方が重要だと感じたからだ。ただ、少数の男女だけがターラを捕らえようと動いたが、これには、

「ターラに狼藉は許さぬ!」

「控えなさい!」

と即座に対応する王太子夫妻、そして、彼女を助けようとまわりを囲む大将軍以下。それに、動きだした男女達は、思わず後退った。

「だ、大体、何の証拠があって…。」

「証拠ならありますわ。さあ!」

とターラが言うと、書類を抱えた若い女が現れた。その顔を見て、宰相マツは、流石に驚愕した。

「お、お前は…お前…裏切ったのか?あれだけ、お前を重用し、引き上げた恩を忘れたのか?」

 若い小柄な女はしかし、動じなかった。

「あなたが、かの国に国王陛下ご夫妻を売り、我が国を売ったことを、あなたがその功で、高い地位を約束してもらったことを示す手紙などがここにある。」

と女が叫ぶと同時に、

「そ、その者を捕らえよ!」

と王太子が将兵に命じた。

 彼は、将兵から捕まえられる前に、彼のために働こうとした男女達により、いきなり斬りつけられ、

「ぎゃ~!」

と血を吹き出して倒れ、その男女達は逃げようとした。

「この役立たず!

 彼らのすて台詞だった。

「な、なぜだ~?」

と将兵の下で喉から声を絞り出す彼の前です、件の女は、ターラに抱きついていた。

「は?」

と目を点にしているターラ以下。 

「ターラ様。前から、お慕いしておりました。そのターラ様を追い落とし、亡き者にしようという陰謀を知り、気が気ではありませんでした。これからは、このような者に用いられた罪の償いのため、ターラ様のため努めていきたいので~す!」

“?…ちょ、ちょい待ち…その傾向は…、全く百合ではなくて…でも、可愛い人だし…気持ちいい、いい匂い…違~う。あ、そうだ!”と一番先に我に返ったターラは、

「だ、大将軍閣下。すぐに戦いの準備を。防備の準備は出来ております。どうか…。」

と悲鳴のように叫んだ。さらに、ターラは、抱きつかれながらも、次々に指示を出した。

「だ、だから…今は離れてね…。あ、後から…。」

“ゆっくり話し合いましょうね。”もちろん、こういう関係?ではなくて、同僚として、友人としての親しくしていこう、協力していきましょう、ということを説得しようということなのだ。が、彼女は

「後で…二人っきりで…。お願いします…私も…このような気持ち初めで…優しく…お願いします。」

“は?”その時、既に周囲の恨めしそうな表情の痛いような視線と、

「みんなに慕われてしまっているね?」

「ターラは、本当に魅力的ですものね。」

と温かい、迷惑な言葉と表情が…。

「と…とにかくですね。…皆さん、ことは急を要します。早くうー!」

と泣きたくなるのを必死に抑えて、ターラは叫んだ。

「ターラの指示の通り、急げ!」

は王太子。

「はい!」

「おー!」

は一同。

「さあ、ターラ。今後のことを。」

と彼女の手を引く王太子妃。

“私も、とにかく役目を果たさないとね。”と王太子夫妻とともに国王夫妻を先導し、その他面々を率いるターラの目に、引かれていく宰相と運ばれていく彼を見棄てた?男女達の死体が目に入った。“主君と国を裏切ったあなたを、誰が信頼すると思ったの?聡明なはず、あなたも自負していた、なのに分からなかったの?私は、彼らが、すぐにあなたを粛清する方針だという情報もつかんでいたのよ。”

 援軍、それは傭兵国家と言うべき、略奪国家と言うものすらあるが、ショク国だった。国王のリュウ、その義兄弟カン、チョウ、軍師シオなど名だたる勇将、知将が揃っており、兵も歴戦の強者ばかりだが、リュウ以下その中枢は女が多い。すぐに正体を現し、対カントス王国連合に合流、カントス王国に侵攻を始めた。それまで押し気味にカントス王国側が優位に展開していた戦況は一変した。したかに見えた。が、後退したカントス王国軍は、いつの間にか構築した砦、野戦陣地に立てこもり、それを連合軍は突破できない状態になり、戦線は膠着、連合軍側の損害がカントス王国側をはるかに上回る日々が続くことになった。


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