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聖女追放には理由があった。  作者: 安藤昌益


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18/20

覆水盆に返らずか・・・

「覆水盆に返らず・・・だな・・・。ヘリウム王国は覆水盆に返ったわけだが。」

 ハストールとその各同盟軍が、ほぼ当面の敵に勝利して、一息ついた。ハストール二重王国国王コマックは、各戦線、各同盟国に関する報告書を読み終わって、ため息をついて呟いた。

「なんじゃ、それは?何かの呪いの呪文か、それとも特別な魔法の詠唱か?」

 彼の肩の上に腰をおろしているハストール二重王国女魔王オクタビアは、もちろん魔法で重量を無にした状態である、半ば本気でその言葉を呪文か詠唱と思っているようだった。

「これは遠い遠い世界のず~と昔の、本当にあったかどうかわからないが、有名な話の言葉で・・・。」

と彼は説明した。それを聞き終わったオクタビアは、

「まあ、その嫁も悪いが、その聖人君子であるはず太公望も、酷すぎないか?わしには、酷いサディストに思えるが・・・復讐しただけではないか?だが、それがどうしたのだ?・・・ああ、似たようなことが起こりそうな国があったな、ヘリウム王国以外で。二つか?」

 オクタビアは首を傾げた。婚約破棄は二つあった、ヘリウム王国以外に。ただし、ヘリウム王国を含めて、だれも結婚前である。まあ、微妙に異なるが、とまで思ってから、

「一つは少し戻ったのではないか?ああ・・・ヘリウム王国は、2人とも独身に戻っておったな。イーペル公には正妃がちゃんといるし、アティラ国王には、相思相愛の愛人がいるが・・・。元婚約者たちには、戻る場所はないか・・・。」

「イーペル公もアティラ国王もどうするか・・・。敵対した女・・・アティラ国王の元婚約者の方はもっとひどいからな・・・。」

 コマックは他人ごとながら同情していた。

「お前は、本当に人がいいな。だが、そういうお前が大好きなのだが、我は。」


 アティラ国王フンヌは、和睦を求めてきた隣国から送り届けられた元婚約者を前にして苦悩していた。彼女は、怒鳴りまくって、罵りまくっていたのだ。

「この泥棒猫。あなたのせいでこうなったのよ!どうして私が、罪人のように扱われなければならないのよ。私を・・・私を助けて下さい。わ、私はあなたの婚約者・・・妻なんです。」

 この主張を聞きながら、

"彼女を助けようがないんだよな。"

 彼女に対する助命の嘆願は、幾つか届いていた。彼女が援助した孤児院の多くからは、それはなかった。彼女の父と彼女の夫が起こした戦争により孤児院に入ることになった子供たちが多数になったため、その心情を思うと彼女への助命などはいいだせなかったからだある。それに、補助金を出すことになった、それを決定したのは、結局はフンヌ、国王だからである。それでも、嘆願は来た。隣国の孤児院からもだ。

「判決は処刑だ。」

と告げた。彼女は、蒼白な顔になった。涙を流した。

「そ、そんな・・・。」

「助命の嘆願もある。罪を一等減じて、終身、牢につなぐ。」

 一瞬ホッとした表情になり、それはすぐに再び絶望に変わった。

「いやー。私の話を聞いてー!」

 衛兵達が泣き叫ぶ彼女を引き立てていった。


「お前は何者です。私の婚約者の方の側に寄り添って。」

 ベッドの上でやつれた感じの小柄な女が、きつい表情でフンヌの傍らに立つハーフエルフの女を見た。

「彼女はこの城を護る騎士だよ。困ったことに、君を大事に思うあまり、君の婚約者である私ですら、警戒してね、こうして監視しているのだよ。」

「あなた、国王陛下にご無礼を。」

「まあまあ、君を思うあまりのことに、喜びすらして、怒ったりしないさ。」

 フンヌは笑いながら、彼女を止めた。

「陛下。ありがとうございます。」

 ハーフエルフは、深々と頭を下げた。

 フンヌは、ベッドの上の女としばらく世間話をした後、

「来月は二人の結婚式だ。早く良くなるように養生してくれ。」

「はい。」

 女の嬉しそうな笑顔を背にして、フンヌはハーフエルフを連れて外に出た。部屋を出る際に、

「城の周りの警備をしっかり頼む。」

「はい。」


「陛下。ありがとうございます。」 

 城の執事が頭を深々と下げた。彼をはじめ、この城の者達は、彼女の家臣達である。彼が引き取り、彼女の世話をめいじたのである。彼女の終身牢の刑とは、この城で高貴な生活を死ぬまで幽閉するということだった。彼女は、しかし、あの判決の直後、狂った、精神を狂わした。彼女は、毎日毎日、来月の今日、フンヌとの結婚式だと言われ続けて、彼らの世話で暮らしているのだった。そして、3年、健康も害し寝たきりになっていた。

「体を少しは動かさなければ悪い。何とか頼むぞ。少しでも、必要なものがあれば、言ってくれ。」

 フンヌの言葉に彼と、何時の間に現れた使用人、侍女達が並んでいたが、一同が頭を深々と下げていた。


「陛下は、本当に・・・悪い方です。思わず嫉妬してしまいます。」

 迎えの馬車に乗ってから、ハーフエルフの女は、彼に体を預けながら囁いた。

「すまないな。あいつに、俺の伴侶を、妻を見せたかったんだ。」

「陛下はお優しすぎます・・・嫉妬しちゃいます。」

 可愛くすねる彼女にフンヌは思わず、抱きしめる力を強め唇を重ねた。


 貴族に叙せられているとはいえ子爵家であり、ハーフエルフの彼女では、流石に王妃というのは反対が多かった。それを察して、妹の子供を養子にして王太子に任命して、議会の承認も取り付けた。その上で、彼女を王妃ではないが、正妃に準じる公式に認められた愛人としての地位を認めさせた。それで多くが納得してくれたし、実際には王妃のように彼の傍らに立ち、ともに国民に手を振ることが当然のように認められている。彼女は、国王を政治でも、戦場でも支えて、国に貢献した女性であることが知られていたから、なおさらだった。"あああ・・・二人の女の犠牲の上にたって、俺は幸せでいるわけだ・・・。"

「陛下。私は幸せです。」

 彼女はそう言ってくれたが。


 あれが、元婚約者に会った最後だった、生きた彼女に。1週間もたたないうちに、容体が悪化して、彼女は亡くなった。私的ではあるが、立派な葬式をフンヌは上げさせた。

 されから1年後、彼の事実上の正妃であるハーフエルフの女は妊娠、無事双子を出産した。彼らは、一男一女、王位にはつけないが、伯爵家を興すことが公式に定められた。







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