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聖女追放には理由があった。  作者: 安藤昌益


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くそ聖女のせいだ、こうなったのは・・・。

 聖女マリーネの逃亡とともに、聖結界も防御結界も、すぐには消滅はしなかったが、日に日に弱まるのが感じられた。マリーネは、それらの結界を消滅させて逃走することもできたが、敢えてそのようなことはしなかった。一応、それが最後の義理を果たすかのように。それでも、ハストール二重王国の聖女達により聖結界が消滅されることになった。補修、再生するマリーネがいないのだから当然である。防御結界も同様である。ハストール二重王国の人間・魔族軍が大挙して侵攻を開始した。それに対する防御となるはずの前線の城塞は、既に勇者達に落とされ、ハストール二重王国軍の侵攻拠点になっている始末だった。ハストール二重王国側からは、国王コマックと女魔王オクタビア連名での降伏勧告が来ていた。


「人間ごときに屈した魔族の恥知らずの淫売女に屈することができるか!それもこれも、あのくそ聖女のせいだ、こうなったのは・・・。大言壮語しおって、この様はなんだ。」

 魔王アルベルトは、人間型の姿をかなぐり捨てて、本体を現していた彼は怒鳴っていた。

「この魔王さんの正体は、こんなだったんだ?」

「あの聖女さんにはどう見せてたのかしらね?さっきは、まだ人間に近かったけど、とてもねえ、あの聖女様があの顔にべた惚れするとは思わないけど。」

「私は、こっちのほうがいいわ。ペットの番犬にはだけど。」

「まあ、そう言うな。これがこいつらの種族の特徴なのだから。」

「そうそう、美的基準は相対的なものだから・・・しかし、臭くないか、酷く?」

 聞きなれない声が耳に入ってくるのを感じた魔法アルベルトは、周囲を見渡した。


「お、お前達は・・・。あの屑勇者、偽聖女ども・・・。それに、ハストールの馬鹿国王?な、なんでここに・・・?」

とハドロン、タビア、ターラを見て唸った。

「おい、我を忘れたか?いや、実際には初対面か?」

 ハストール国王コマックと寄り添っている女が小馬鹿にするような、不満そうな表情だった。

「お、お前はオクタビア?なんで・・・。こいつらを皆殺しにしろ!」


 連続的な射撃音が響き渡り、衛兵の半ば以上が倒れていた。五人の周囲に見慣れない銃がずらりと並べられていた、1丁あたり2人で操作されていた。唖然とした一瞬、魔法攻撃の詠唱を唱えようとする、魔剣、魔槍などを構えようとする前に、彼らが蹴散らされ、5人が自分の前に立っているのをアルベルトは見なければならなかった。

「このひ弱な人間が!」

 アルベルトには、まだ知性が残ったいた。彼は、ハストール国王に魔剣に渾身の魔力を込めて振り下ろした。が、その剣は弾かれた。

「な?」

「我が夫は、ひ弱ではないぞ。」

「まあ、俺ではこの程度だが。」

とコマックの剣が一閃。

「う!」

 身体強化魔法を目いっぱいにかけた体が、しかも魔鎧の上から傷がついて、血が噴き出した。

「ごめんね。この雌たち、先に殺しちゃった。」

「王女様の仮面がすっかりなくなっていますよ。この雌たちも死んじゃったけど、赦してね。」

「聖女様こそ、なによその下品さは?」

「な?お、お前達?」

と狼狽えたアルベルトの耳元に、

「お前も早く行け。」

「じゃあ、さようなら。」

 オクタビアとハドロンの声。次の瞬間、首が飛び、反撃だ、と思ってにやっとした時、その首と体の中が焼き尽くされた。アルベルトは、最後の愛人達、彼を守ろうとして戦い、先に死んだ、の後を追っていた。 


 ハストール二重王国とヘリウム王国の当面の戦いは、これで終わった。

 いや、ヘリウム王国にとっては、正確にはヘリウム王国国王ネロには、まだ終わっていなかった。聖女マリーネが、彼の前に跪いて・・・いや、毅然として立っていた。やつれてはいたが、

「私のことはどのように罰せられても文句はありませんが、私とともに、私を助けてくれた者達をお助け下さい。」

と毅然とした声で言った。"変わらないな。"

「もちろんだ。彼らには、君をつけてきてくれたことへの礼を十分にしよう。」

と国王は淡々とした声で言った。次の言葉を二人が口から吐き出そうとしたとき、

「陛下。私どもは何もいりません。その代わり、聖女様をお助け下さい。」

と後ろに控えた者達が一斉に叫ぶように言った。

「わが国の大切な聖女様、私の婚約者を連れてきた者達への礼を与えないわけにはいかないだろう。私にとって、大切な存在を粗末にはしない。心配するな。」


「思い通りに痛めつけて、弄って、辱めていいわよ・・・覚悟はしているのだから。私は、あなたの最愛の者を殺したのだから、当然の報いだと思っているわ。あなたを恨まないわ。」

 彼、ネロと一室で二人っきりになると、マリーネはきっぱりとした口調で言った。

「さあ、あなたの最愛の方のための復讐を思う存分なさい・・・いえ、して下さい。」

 その彼女にネロは首を横に振った。

「君と私は、大事なものを全て失った。どうして、その傷を嘗めあって、互いに同情しながらともに過ごしてはいけないのだろうか?」

 ネロの表情は悲しみと慈しむような同情を乞うようなものだった。

「で、でも・・・それなら最初からあんなことをしなければ・・・。」

 マリーネはいきり立った。

「あれしかなかったんだ・・・。君は、私達に協力できたかね?」

「う?」

「だから、私とずっと一緒にいてくれないか?」

 彼は彼女に歩み寄った。そして、震える手を取った。

「あなたは馬鹿よ。」

「なら、君も馬鹿になれ、なってくれ。」

「わ、分かったわ。」

 二人の唇は重なった。



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