聖女はどうなるのだろう?
"全く、あの実物モドキを手にできるとはな。やっぱり転生者だな、あの王様は。とはいえ、よくここまで作れたな・・・関心するよ。おっと、早く目の前の連中を蹴散らして、魔王、オクタビア様の道をつくらなければな・・・勇者が魔王のために、魔王を倒す手伝いをする・・・訳が分からないな。まあ、俺は所詮偽勇者だからな。"ハドロンは、38式歩兵銃を時には乱射し、手榴弾を次々に投げ、時には攻撃魔法を複数放ち、さらに剣に、拳に、脚に魔力を纏わせて、突入口から入って、近くの砦に突入、瞬く間のあちに城門を破り、砦内に乱入、襲ってくるあるいは逃げる魔族兵達を次々に倒し、その日の内に砦を陥落させた。
そこから、橋頭堡を急いで、構築した、陥落させた砦を基にして。少しづつオクタビアの魔族軍を、コンラッドの人間、亜人からなる軍を入れてゆく。結界は後退せざるを得なくなる。
「もうそろそろ、止めと言うところかな?」
「同感。」
「あなたも、たまには正しいことを言うわよね。」
「しかしさ、あっちの魔王も窮鼠猫を噛む状態になるだろうから、気をつけないとな。」
「それはあなたがやってね。」
「そのためのあなたなんだから。」
「ひどい女だな、二人とも。」
そう言いながら、3人は笑った。そのような余裕があったからだった。
「ええい、こんな役立たずの聖女、八つ裂きにして、奴らのもとに放り込んでやる。」
魔王が叫んだ。その前には、疲労困憊したマリーネが魔王に殴り飛ばされて、倒れて動けないでいた。その彼女のもとに駆けよって、守るように抱き起し、自らの背を魔王に向けた男女は彼女にずっと一緒についてきた人間達だけではなく、魔王がつけた魔族の侍女や護衛(監視役でもある)もいた。また、居並ぶ魔族達幹部のほとんどが、聖女の姿に冷笑を浮かべ、魔王の言葉に同意している中、
「魔王様。ご短慮はお止めください。」
「今、聖女様を失っては我々は終わりです。」
と男女の魔族幹部が進み出た。
マリーネは、接する人間、魔族ですらも、好感をもたれていたのだ。彼女は、思いやりも配慮も気配りもある女性なのである。厳しい姿勢をみせているが、聖女としての威厳を見せなければならないと思っているからでもある。
「うるさい。・・・う~ん。このような、女の顔は見たくもないわ。牢に閉じ込めておけ!」
牢には閉じ込められた。が、次々に密かに、色々な物が持ち込まれ、牢の番人たちは彼女に好意的な者ばかりだった。
「聖女様。ヘリウム王国にお連れいたします。」
それを言い出したのは、魔王の側近のひとりだった。
"あの人の下に帰れる?"と一瞬嬉しくなったマリーネだったが、絶対彼が会叩く迎えてくれるはずはないと思い顔をひきつらせた。それを察してか、
「大丈夫です。丁重にお迎えすると約束を取り付けていますから。」
「でも、どうしてあなたが?そこまで?」
彼には一族郎党への義務がある、存続のための。戦闘だけが戦いではない。当然内部離反を図るのが常である。それに応じるも、応じないも、条件をどうするか、信じるか、信じないかの駆け引きも当然ありなのだ、それも戦いなのである。敵対しなければいい、同盟関係であればいい、という条件ならば、もはや、今の主についていく必要はない。それでも、引き上げられた恩義もある。それを感じるのは、魔族とて同様である。それが、個人的には敬愛している聖女への魔王の仕打ち、そして、現在の戦況が劣勢化にあの中何とか支える柱となっている聖女を殺そうとさえする魔王への失望、このままでは一族郎党部族も危ないという危機感から彼は動くことを、ヘリウム王国との内通に走らさせたのである。
"あいつの所に帰れる・・・。いや、帰れるわけがない・・・帰りたくない・・・。"と心の中で絶叫した。体が、思うとおり動かなかった。しかし、その彼女を支える、人間、亜人、魔族・・・。その数が次第に多くなっていった。城塞の衛兵も加わる。皆、彼女のことを心配してくれているのが分かった。"と、とにかく彼らを、無事に、無事なところに連れて行かないと・・・。私の務めじゃない?"彼女は、そういうことを考える、自分に集う者を守ろうと思いは強かった。自分の義務だと感じていたし、それが無くなったら自分の最後の誇りも無くなると考えていた。だからこそ、彼らを引き寄せたのだが。
「聖女がいない?あの裏切り者が!拾ってやった恩を仇で返し負った。」
彼女を引き出して、新たな防御結界、聖結界を張らせようとして家臣を地下牢に送ったところ、慌てふためいた家臣達の報告に、彼は怒り狂った。




