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聖女追放には理由があった。  作者: 安藤昌益


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国破れて山河在り

 シチリア王国の内戦は、王都カルタゴの攻防戦で何とか反乱軍、彼らは解放軍と称していたが、を撃退し、何とか優位を何とか確保したものの、内乱そのものは長引いていた。それが、終わる方向に動きはじめつつあった。そうなってほしいと、シチリア王ハンニバルは思いたかった。

「勇者様!大丈夫ですか?」

 ハンニバルは叫んでいた。

 

「勇者様。陛下がまいられましたぞ!」

と喜びの声を上げたのは、魔族の黒騎士だった。

「これで、勝ったぞ!」

 これは、人間の剣士。

「あ~、きつかったわ・・・まだ、そんなことを言うのは早いか。もうひと踏ん張り。」

 川のエルフの魔導士だった。

彼女のチームには、魔族も人間もエルフもその他亜人の雑多な集団だった。"国王様が推薦してくれて集まれたのよね。みんないい奴ら、私のことをよくわかっていてくれる。"女勇者は思った。

 反乱軍、魔王軍、アムルダム軍その他の国の連合軍との一大会戦になっていた。他方、ナポリ王国軍には別の魔王軍も加わっていた。そして、双方に複数の勇者もいた。

 彼女、勇者オクタビアのチームは、本陣深く侵攻したが、孤立してしまっていた。彼女のチームは、魔族まで入った雑多なチームだった。シチリア王国の実情が反映されていると言えた。

 相手も、魔族の、魔王の軍も加わっている。ただし、それは所詮、連合を、利害の一致で一時的に組んでいるだけのことなのだ。

 中には、亜人と人間の共存ということをうたった傭兵団が加わっているが、単に傭兵、半ばは山賊、野盗、海賊の類いの集まりに過ぎない、人間や亜人、魔族の村々を略奪してまわる、雑多な略奪、犯罪者モドキの集団に過ぎない連中ばかりである。一応、平和裏に共存して暮らしていた村々を、統治していた領主とその領民を虐殺して回っている連中すらいる。

 だが、シチリア王は違う。自国の女勇者に、対峙している女魔王のことを知っているかのように、彼女に和解、共存、提携の橋渡しを依頼した。それも、彼は彼女のことをとても理解していた上だった。

「結局、国王陛下の思惑通りに、女勇者の私は、あの女魔王と無二の親友となったのよね。」

 陣頭指揮で、囲みを破って進んで来る彼女の姿を見て、思わずため息をついた。

「でも、回想している時ではないわね。皆に負けないように、ひと踏ん張りよ!」

 彼女は、あらためて聖剣を握りしめた。

「フン。屑勇者、勝った気でいるのか、笑わせるぜ。」

「ブスの偽勇者。もう、あんたは終わりなのよ。」

と2人の男女の勇者は、まだ仲間達と彼女の前に立ちはだかっていた。彼らは、味方の軍が崩れかけているのが分かっていたが、ここで自分達で形勢を挽回できると信じているようだった。彼らの仲間達も、彼らを信じているようだった、誰もが逃げ腰だという雰囲気は、感じられなかった。

「ふん。偽物勇者どもが…。勇者とは彼女のことを言うのだ。魔王である我が、彼女を殺させはせんぞ!」

「お前らなぞ、私一人でたくさんだ。」

は、女魔王と元勇者の男だった。

「2人で美味しいセリフを持っていくなよ。」

は彼女のチームの聖騎士だった。

「さあ、一気に蹴散らしましょう。」

は聖女、聖女騎士と仇名を持っている。

「あなたも、たまにはいいことを言いますね。」

は賢者、時々狂戦士と綽名の。そして、この3人、"この戦いが終わったら、彼女に(お姉さまに)告白する(するのよ)。"と心の中で目論んでいた。他のチームの面々は、何となく分かっていたが。

 その時、断続的な、大きな射撃音と続けざまの大きな爆発音がした。ハンニバル王の親衛隊の銃隊の一斉射撃、100人づつ3隊が三段打ち、それが3つ。近衛砲兵隊の砲撃である。質量ともに両軍の中でもダントツな火力で、浮足立っていた敵軍は完全に総崩れ、もはや二人の勇者とそのチームは、逆に孤立してしまったいた。

 勇者オクタビアが、相手側の2勇者だけでなく、かなりの敵の部分を相手にしていた。そのおかげで女魔王は、相手側の魔王の軍を撤退に追い込み、ハンニバル王の軍は、内乱軍、アムルダム共和国軍等を撃破し、ともに勇者のもとに駆け付けることができたのである。

「降伏するか、撤退しなさい。私達は追わないわ。」

 何故か、二人に同情してしまった、オクタビアは懇願するように言った。それが彼らに自信を与えてしまったのかはわからないが、

「黙れ。お前らなんぞ、束になっても怖くはない。」

「雑草はいくら束になっても、大木にも柱にもならないのよ。」

 あるいは上昇志向のつよい、上に行く、ビッグになることを常に言っていた二人には、最大のチャンスのように思えたのかもしれない、この状況ですら。

「しかたがないわね。行くわよ。」

「おお、やるか。では、ともに。」

「は?って?」

「仲間、同盟軍だ。勇者様と魔王様とでいいではないか?」

「それもそうね。では、よろしく。じゃあ、こちらは勇者チームと魔王チーム、あなた方は2勇者チームということで、対等ね。」

 相手からの反応は、

「ひ、卑怯だぞ!」

「魔王の力を借りるなんて、勇者のプライドがないの?」

だった。即座に、

「今まで、大勢で戦っておいて、そんな台詞を言うな!」

「開いた口がふさがらないわよ!」

と彼女のチームから声から声があがった。

「諦めて、倒れなさい!」

“そう、これは戦争。多数になることが戦略なのよね。少数になることで、負ける、のよ。”

 彼女の聖剣は、相手の勇者の聖剣と何合もぶつかりあった。相手は、周囲で仲間達が倒れるのを見せつけられ、心の余裕を次第に失い、僅かに動揺した心のため、何合めで、聖剣を折られ、次で心臓を貫かれた。その時には既に、女勇者が魔王と元勇者勇者に倒されていた。彼女の方は、必死に戦ったが防戦一方だった。


 勇者達が倒れて、完全に敵軍は総崩れ、無慈悲な追撃戦となっていた。

「国破れて山河ありだな、本当に。」

 国王ハンニバルの呟きを耳にした勇者オクタビアだったが、

「陛下…何を…私は…。」

とまで言ったものの、

「勇者様!」

と目をうるうるさせて、何か言おうとしているチームの男女の迫力に圧倒されて何も言えなくなった。

“俺がみんなに殺されていれば…。でも、その後は…。いや、言い訳を考えるのは…。もうよした方が良いな。大切なのは、これからだ。”また、同じことを、何度目かは分からないが、繰り返していた。

「あなた。大勝利ですわ。もう敵は総崩れですわ。」

 たたずむハンニバルにルクレチアが、王妃である、が彼の胸に飛び込んできた。彼の胸に顔を埋めて、歓喜の涙をあげる彼女を彼は優しく抱きしめるしかなかった。


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