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『主人公』の愛の告白(4)

 どうやって国にザイーフを追わせるか。冒険者ギルドに依頼するのはザイーフ本人を追うことより、この点についての情報集めが良さそうだ。私はそうロシェスに提案しようとして。

 しかしこの話題は次の彼の一言で、まったく別の展開へと転ぶことになった。


「国はザイーフ本人を追うはずです。高級奴隷の窃盗は、違法取引と同レベルの重罪ですので」


 言いながら、ロシェスが首元の布地を引き下げる。

 反射的に、久しぶりに目にした彼の奴隷印へと目が行った。

 そうなったのは当然、私だけではなくて。


「は? ロシェスさんが高級……奴隷?」


 ブラッドさんが思わずといったように、零す。それから無言でこちらを見てきた彼に、私は一瞬躊躇った後、頷いた。

 呆気に取られたのはブラッドさんだけでなく、私もだった。

 しばらくこの街で暮らしてみてわかったのは、ロシェスを奴隷だと認識している人はかなり限られているということ。それを狙って首元まで布地のある服を着せたのは、私だ。でも、購入者である私の意向を汲んで情報規制でもしているのか、まったくといっていいほどその事実は広まっていない。それこそ、ロシェスがもう一度奴隷商人に売られかけたくらいに。

 だからその秘密を打ち明けてまでザイーフの捕縛に(こだわ)るというのは、ロシェス自身が(こうむ)る不利益の方が大きくなってしまうのではないか。私が頷くのに躊躇ったのは、そこが気になってだった。

 ついロシェスの顔を見上げれば、その前からこちらを見ていたらしい彼と目が合う。


「さすがに次に魔法空間が見破られたなら、ザイーフは感付くでしょうから」

「あ」


 何にとは口にしないで「感付く」と言ったロシェスに、私は思わず声を上げた。

 そうだ。魔法を使う前にロシェスが止めに入ってくれたものの、そもそも魔法空間を見つけ出せたこと自体、私の特殊能力と言える。

 冒険者ギルドが悪戦苦闘しているということは、メニュー画面が開けるのは異世界チートなのだろう。だとするとロシェスが言うように、次があれば必ず目を付けられる。そして私に辿り着いてしまうかもしれない。それ以前に、次こそロシェスが本当にピンチになって、私が魔法を使うことを選ぶかもしれない。

 ロシェスはきっと、そんな「もしも」を含めて秘密を打ち明ける結論を出したのだ。


「そういったわけで、ブラッドタイガーさん。そちらで報告書を出す際に、今言った罪状を理由とする要請のことも記載をお願いします」

「わ……わかった」


 ロシェスに「行きましょう」と促され、まだ呆然としているブラッドさんを置いて外へと出る。

 ロシェスと二人家路へと着いて、しばらく無言で歩いた後、私は冒険者ギルドから借りたランタンを手にした彼を見上げた。


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