表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
50/56

『主人公』の愛の告白(1)

 すわ敵襲と身構えたのも一瞬だけ。敵避けスキル『ホーリーサークル』は、この世界に来た初日から常時発動なわけで。


「魔法を使っては駄目です。誰が見ているとも限りません」


 その上、後ろから聞こえてきた声が耳慣れたものであれば抵抗する気もない。

 というより、今のでそもそも魔法を使う理由そのものがなくなった。


「……ロシェス?」

「はい」


 口が自由になった私が簡潔に尋ねれば、後ろから同様に簡潔な返事がきた。


「私はロシェスが()()られたと思って、助けに来たつもりだったんだけど?」


 私の拘束を解いた背後の人物――ロシェスに、私は(しやく)(ぜん)としない気持ちで魔法を使おうとした理由を口にした。

 ロシェスがならず者に拉致られたと聞いて、ワールドに『茨の監獄』なるものが出現して。流れからいって絶対にその監獄に(とら)われている対象は、彼だと思っていたのに。移動して私の目の前まで来た人物は、(まぎ)れもなくロシェスだった。


「それはお手数をおかけいたしました」

「うん? その言い方だと、捕まってはいた?」

「はい。つい先程まであの大樹が作り出したダンジョンにいました」

「え?」


 私はロシェスが指差した方向を見た。どう見ても、私が今ほどまで結界を破ろうとしていた大樹に間違いない。


『進入地点は結界が張られています』


 表示は変わらずある。それなのに中にいたというロシェスは脱出している???


「あ、入口の結界って、一方通行で中からは出られるとか」

「いえ、私も結界に気づいたので、そちらからは出ていません。少し離れた場所の壁を壊しました」

「へ?」


 予想外の切り返しに、間抜けな声が出てしまったのも仕方がないと思う。

 壁を壊して脱出! まさかの(あら)(わざ)


「ロシェス」


 私はロシェスの腕を引き、一緒に魔法空間の外へと出た。

 元の暗闇になったため、二人分の足元を照らす魔法を出す。


「ロシェス、詳しく」


 それから私は家に帰るまで待てなくて、道すがら彼にこれまでの経緯を話すよう(うなが)した。

 かくかくしかじか。ロシェスが順を追って話して行く。

 ひとまずロシェスが捕まった時点までの話を聞いた私は、自分のこめかみを押さえた。


「首謀者のエルフはザイーフだったのね。まあ、そんな気はしてたんだけど」


 私がこの世界で知っているエルフは、ロシェスとザイーフの二人しかいない。そしてザイーフはつい最近、冒険者ギルドで(ひと)(もん)(ちやく)あった相手。疑うなという方が無理だ。


「ザイーフの魔法で『茨の檻』に入れられた私は、そのまま『茨の監獄』と名付けられた彼等のアジトに送られました」

「うん……うん?」

「そこには私と同じように茨の檻に囚われた、捕獲が禁止されている妖精や動物が多数いまして。それらを助け出すのに少し手間取ってしまって」

「待って。待って、情報量が多い。えっと、まず最初に入れられた茨の檻はどうなったの?」

「ああ、それはこれを使いました」


 ゴソゴソとロシェスが服のポケットを探る気配がして、その後に彼が見せてきたものは見慣れたポーション瓶だった。

 売り物にはあるはずの店のタグは付いていないから、店頭に並べる前のものだろうか。それとも別の店で購入したものだろうか。

 ポーションは例え材料や薬効が同じでも、配分によって若干色が変わる。だからそれがそれぞれの店の色となっている。

 けれど今はまともな光源がなくて私は判断が付かず、ロシェスの顔を見た。


「ナツハ様の魔力は聖属性で、()(しやく)しないとあらゆる状態異常を治す万能薬になってしまうというのは覚えておられますか?」

「うん。街角でそれが買えてしまうのはまずいから、量販しているものは通常のポーションにほんのり加える程度にしているよね」

「はい。これも配分自体はそうです。ただこちらは量販品とは違って、ナツハ様が作られたものになります」

「私が? ……あっ」


 一瞬ロシェスの言った意味がわからなくて、けれどすぐに思い至る。

 彼の手にあるのは、『初級HP回復ポーション』だった。+1ではない、無印の。

 以前、ロシェスの天才薬師ぶりに彼にポーション作成を一任することにした私は、持て余した自作のポーションを彼にあげた。

 あれをまだ持っていたのかと、私は改めてポーション瓶をしげしげと見た。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ