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評判の薬(7)

 あれから五日。

 本日の閉店後、私とロシェスは揃って冒険者ギルドに来ていた。


「大変お待たせしました! 旅らくナールの納品に来ました」


 受付のお姉さんに用件を言って、カウンターに注文の『旅らくナール』二十個を入れた麻袋を載せる。

 彼女は「確認しますので、少々お待ちください」と、麻袋を持って奥へ消えた。駐在の鑑定士に依頼しに行ったのだろう。

 そう時間はかからないだろうけれど、空の受付を見ていても仕様がない。私は酒場も兼ねている店内の方へと向き直った。それを見たロシェスも私に(なら)う。

 途端、二人組の男性客がこちらへ向かってくるのが見えた。

 何故に。酒場用のカウンターは逆方向なのだけど。


「あんたがロシェスさんか」


 ほろ酔いでご機嫌といった感じの壮年男性二人が、ロシェスに声を掛けてくる。

 男性の台詞からいって、知り合いではなさそうだ。


「薬師のローブを着たエルフ! いやぁ、実在したとは」

「だから言ったじゃないか。俺の幻覚じゃないと」

「だって毒で死にかけたんだろ? 治療士でも薬師でもいいから助けてくれと思ってて、混ざって見えたんだと思ったんだよ」

「久方ぶりに隣町から帰ってきたと思ったら、空腹でぶっ倒れたお前に言われたくない」


 気安い二人の遣り取りに、私は「あっ」と思い出した。

 二人のうち一人は以前、オープン前の店に運び込まれた男性だ。そう思って隣のロシェスを見上げれば、彼もそのことに気づいたようだった。


「後遺症もなさそうでよかったです」


 ロシェスが男性にそう返せば、「その節はお世話になりました」と丁寧に返される。そうしているうちに、いつの間にか私たちは数人に囲まれていた。やはりロシェスにお礼を言いに来た人とその関係者のようだった。

 この人気ぶり。これはもう有名薬師と呼んでいいのでは。

 もっともっと、ロシェスを褒めていいのよ?

 によによしそうな口元をグッと堪えながら、私は周囲の人たちにそんなテレパシーを送ってみた。まあテレパシーが使えるチートは実装されていないのだけれども。


「程度が(微)とはいえ、回復速度UPと精神的ストレス軽減が付いているなんて、薬師であってもエルフは治癒に優れているんだな」

「それにエルフは皆、お高くとまっていると思っていたけど、あんたは気さくでいい人だってそこかしこで聞いてるよ」


 そうなの。ロシェスってすごくいい人でもあるの。

 私は心の中でうんうんと頷きながら、ロシェスがちやほやされる様子を上機嫌で眺めた。

 のも束の間、


「ははっ、お前、本当にロシェスじゃないか」


 あきらかに好意的でない声が交ざったことに、気分は急降下。私は思わず相手を(にら)みつけた。

 まるで(さげす)むような口調だと感じたのは、私だけじゃなかったらしい。ロシェスを囲んでいた人々もまた、テーブル席に座ったままの青年男性を振り返る。

 当然、ロシェスも青年を見て。そこで彼が「ザイーフ」と零したところで、私はようやくハッとなった。

 注目の中、青年は一向に構わないといった(てい)で、片肘をついてロシェスを見上げていた。その容貌は、この世界に来てから一人しか見たことがなかったほど珍しい――けれど毎日見ているエルフだった。


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