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ギルド御用達のお店(5)

 あれから一週間後。いよいよ正式オープンということで、朝一に看板を取り付けた。

 入口側へ吊り下げる木製のもので、オーダー通りの絵柄――三角フラスコが彫られている。ゲームで薬を売ってる店のアイコンをイメージしてみた。街角のお店って感じがしていいよね。


「……街角のお店とは」


 オープンから二時間経過。思い描いた光景とは全然違う店内に、私はついぼやいてしまった。

 明らかにロシェス目当ての女性客については想定内だ。そして「新しい店ができたみたいだ」と冷やかしに来た客も想定内。

 では何が想定外かと言うと――


「グストさん、うちは業務用のお店にする予定はないのですが」


 何だかすっかり顔なじみになってしまった商業ギルド長が、来店したと思ったら無茶振りをしてきたこと。これに尽きる。


「そこを何とかお願いします。納期は長く見ますし、それでも間に合いそうになければ相談させていただきますので」

「それは買っていただけるのはありがたいですが……」


 一応予約表にペンを走らせながら、その注文数量に震える。

 実は先日『旅らくナール』の登録に行った際、HP回復ポーション+1を予約注文したいという旨を聞いてはいた。聞いてはいたが、その数量が多過ぎる。何とその数、三百本!


「商業ギルドの直販で売るわけじゃないんですよね?」

「店の場所が離れていればそれも考えましたが、近所ですので」

「ですよね」

「実はギルド員に配ろうと思いまして。五十名いるので、一人六本と考えました。いやあ、登録時に持ってこられたポーション、ギルド内で大層話題になりまして。これはギルドに常備しておこうと」

「え、商業ギルド内で使うんですか?」


 私はご機嫌な様子で話すグストさんの台詞に、純粋に疑問を感じて尋ねた。

 ギルド員に一人六本配ると聞いて、てっきり家へ持ち帰ってもらうつもりなのだと思った。けれどその後に続けられたのは、ギルドに常備という言葉。冒険者ギルドならともかく、パッと見デスクワークが多そうだった商業ギルドで、そんな頻繁にポーションを使う場面などあるのだろうか。


「ええ、あれはよかったですよ。飲んだ瞬間からもう、腰痛も肩凝りも嘘のように消えまして!」


 使いどころはそこ! わあ……身に覚えがある。その手の薬なら、元の世界で常備してた。家は勿論、確かに会社にも置いてた!


「しかもHP回復効果もありますからね。もうひと頑張りが利きます」


 それ何て栄養ドリンク。

 元の世界で大変お世話になったとはいえ、異世界に来て最初に作ったのがそれって、我ながら業が深い……。


「使用はほどほどにお願いします。精神的苦痛の緩和効果はありませんので……」


 私はグストさんに大事な注意事項を伝えつつ、隣で他のお客様の会計をしているロシェスを見上げた。私の視線に気付いた彼が、無言でこちらに頷く。

 やる気だ……メインで働くロシェスがやる気なら受けるしかあるまい?

 私はグストさんの予約を正式受注した。これは開店早々に忙しくなりそうだ。


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