表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/56

天才薬師の出来上がり!(6)

 出来たての『初級HP回復ポーション+1』を、商業ギルドに商品登録してきました! 一仕事終えて帰ってきたって感じがする。

 ギルドまで歩いて5分圏内というのはいい。その分、家賃は相場より高いけれど。

 でも今回のような新製品登録に行くときの他にも、ギルドの前は馬車の停留所なので現代でいうところの駅近。客足も期待できるというもの。

 構えた店の外観は街に溶け込むデザインだし、店舗部分の内装も街角の薬屋さんという感じで入りやすいと思う。大きめの窓があるので、そこから美形エルフ薬師が見えたら、ふらふらっと入りたくなって来ませんか。声をかけてみたくなって、商品を買ってしまいませんか。

 +1要素である状態異常回復(小)の使いどころは、胃痛、腹痛などの緩和。元々、家庭常備薬をイメージして聖水を作ったからね。HP回復(小)と兼ねることで、軽度の怪我からちょっとした体調不良までこれ一本。大変お得な商品となっております。


「しばらく店に出すのは『初級HP回復ポーション+1』だけにして、症状が重い人にはご相談の上で処方という感じかな」

「そうですね。ナツハ様の力は強すぎて、サンプルがないと加減がわからないでしょうし」

「それ」


 例のずらっと並んだ私のスキルによると、私の治療魔法は『欠損した肉体を再生』レベルも可能らしい。状態異常回復魔法も、毒、麻痺、呪い、封印などなど……およそゲームで使われそうな状態異常を完全(もう)()していた。

 さすがに街の薬屋さんで、呪いや封印を解く薬が気軽に買えてはいけないと思う。というより需要もないだろう。


「今後のことは明日以降に考えよう」

「はい」


 今日はもう充分に働いた。後は夕食を食べて寝るだけにするべし。

 ダイニングキッチンに置いたテーブルに、外で買ってきた串焼きやタコスっぽいものを並べる。ロシェスが飲めるというので、赤ワインも買ってきた。二人分のグラスに半分ほど注ぐ。

 隣り合う工房スペースと仕切りがないため、いざとなったらここも作業スペースとして使える。そのため大きめのテーブルを買っておいた。

 そうそうこの家、狭いけれど浴室もあるのだ。そこも二重丸な物件だった。


「ほら、ロシェスも座って」

「は、はい……」


 これまでの主人とはともに食事をする機会がなかったのだろう、ロシェスがおずおずといった感じで席に着く。二階の住居スペースが丁度二部屋だったので、手前を彼に使うよう言ったときも酷く驚いた顔をしていた。私からすれば、この美しい人物を雑に扱っていたということの方がびっくりだよ……。


「というわけで、新生活に乾杯!」

「はい。ナツハ様の輝かしい未来に」

「輝くのはロシェスの方だよ。天才薬師として活動するんだから」

「あ……その、ご期待に添えるよう頑張ります」


 私の差し出したワイングラスに、ロシェスが控え目に自分のグラスを当てる。

 私が口を付けるのを待って、彼もワインをコクッと飲んだ。何て絵になるの。多分、ロシェスならお子様ランチを食べていても格好良いと思う。断言できる。


「そうだ。一緒に店に出るわけだし、私のことはナツハと呼び捨ての方がいいかな」

「は? ……ごほっ」


 ()せていても格好良いね⁉ やっぱりロシェスならお子様ランチ(以下略)


「失礼しました。その、ナツハ様。さすがにそれは……『オーナー』、では駄目でしょうか?」


 妥協案を提示してきたロシェスの頬が若干赤い。しかもさっき咽せたせいか、涙目のお願いになってしまっている。

 これは返答の選択肢が「はい」しかない……っ。


「ああ……うん。ボロが出ちゃうよりはいいかな」

「ありがとうございます。ではそれでお願いします」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ