表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/56

天才薬師の出来上がり!(5)

 結論から言おう。

 私が小細工するまでもなく、ロシェスは天才薬師だった。

 まず参考書について。


「一度読んだだけで頭に入ったの?」

「はい。問題ありません」


 初級薬学の本は、早々に私専用となってしまった。

 次に器具の一つ、天秤について。


「え、計量一発目でジャスト……?」

「昔から細かい作業は得意なのです。だから同族よりもドワーフと気が合いました」

「そ、そう……」


 初級とはいえ薬の調合は、お菓子作り並みに分量がシビア。よって、目分量でやってはいけない。

 だがここに、目分量が実測値な者がいた。

 普通は天秤に載せてから増やしたり減らしたり調整するよね? お願い、私の方が一般レベルだと言って。ちなみに私は重りと釣り合うまで、三回やり直した。

 乳鉢での素材()(つぶ)し作業においては、何とか差が付かなかったと思う。

 しかし、最後の聖水との混ぜ合わせにおいて――


「……ロシェスのポーションだけが、『初級HP回復ポーション+1』になってる」


 私は右手にロシェスが作ったポーション瓶、左手に自分が作ったものを持ち、アイテム説明欄を見て(がく)(ぜん)とした。


 初級HP回復ポーション+1:HP回復(小)+状態異常回復(小)


 何故、私の方は通常の初級HP回復ポーション?

 私が作った方にも聖水は混ぜたのに。何ならその聖水は、私がスキルで生み出したのに。

 両方を机に置いて並べ、一見代わり映えしない二つを交互に眺める。

 解せぬ。


「ナツハ様は鑑定スキルもお持ちなのですね」


 ロシェスの尊敬の眼差しに現金な気分は浮上しつつも、やっぱり(へこ)む。

 そりゃあ私の聖水を混ぜなければ、ロシェスのものだって通常の初級HP回復ポーションになっていたとは思う。けれど今見たロシェスの手際、彼なら自力で状態異常回復(小)の効果があるポーションもきっと調合できる。それどころか、素材さえあれば上級ランクのポーション類さえも、すぐに作れてしまうのでは。


「もうこれ、私は要らないくらい――」

「いえ、要ります」


 つい(こぼ)れた私のぼやきは、思いのほか力強いロシェスの声に遮られた。

 さらに私の両手をぎゅっと握ってきた彼に、私は息まで止められることになった。

 呼吸を忘れたまま、私の手を包み込むようにした彼の手を見る。

 それから私は目線を上げた。

 ロシェスと目が合って。――合ったと思ったら、それはふいっと()らされた。


「し、失礼しました……」


 今度は一転して、ロシェスが弱々しい声で言う。

 私を解放した彼の手は、胸の前でそわそわとしていて。彼の頬は、恋愛漫画ばりに耳まで赤く染まっている。

 ……スクショボタンはどこですか⁉


「……んんっ」


 変な声が出かけた。それを誤魔化したらわざとらしい咳払いが出た。

 でもロシェスは、まだ()()りが収まらなくてそれどころじゃなさそう。セーフ。


「うん、そうよね。聖女の力を使った、私たちにしか作れない薬で助かる人がいるかもしれないし」


 平然を装ってそう言えば、ロシェスから間髪入れずに「はい」という返事がくる。

 ほんのり頬を染めた美形が微笑みとか……またグッとくることをしてくれる。

 改めてメニュー画面をチェックしてみた。

 残念ながら、やっぱりスクショ機能は実装されていなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] スクショ機能あったら主人公氏のフォルダがイケメン画像でいっぱいになりそう… だけどあったらいいなぁ♩ですね。 もうアレですよ、ふんだんな財力で魔道具を購入(なければ開発)してイケメン看板や…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ