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三話 【奪った命は還らない】

  空間転移した場所からは、 先程(さきほど)までいたロイの領地が見えなくなっていた。



  「ここは、 ガリオーリ大森林。 人間界と魔界の間にある大きな森の半分を()めている森です。」


  キリは、 目の前にある大きな森の名前を俺に教えた。


  だが俺は、 それよりも疑問に思ったことがあったので聞いた。


  「それより、 何故(なぜ)空間転移する時に詠唱がなかったんだ? 普通、 ゲームでは魔法は詠唱がいると思うのだが…。」


  「この世界では属性魔法以外は、 ほとんど無詠唱で使えるのですよ! ですが、 フィール様は勿論(もちろん)、 魔王様やその直属(ちょくぞく)の配下などは無詠唱でも属性魔法を使えるらしいです!」


  キリは笑顔で俺の頭の上から説明した。


 

  「詠唱のことは話し終えた事ですし、 そろそろ森に入りますか?」

 

  キリが俺に聞いた。


 

  「ああ、 行こう。」


 

  俺はそう言って、 剣を腰に提げているかを確認して、 キリと共にガリオーリ大森林の中へと入っていった。


 

  入ってすぐに周りを見渡すと、 鮮やかな緑色をした葉を持つ木々(きぎ)が立っていた。




  森に入ってから三十分近く経った。



  「かなり歩きましたね…。 ユウマさん…。」

 

  俺の頭上は飽きたのか、 キリは言った。



  ーそれにしても…かなり歩いたが、 全然魔物(モンスター)なんて出てこないぞ…? ー



  そう思った途端(とたん)、 キリが言葉を発した。


  「ユウマさん…、 来ました!」


 

  キリがそう言うと、 俺から四百m(メートル)(ほど)離れた草むらの方からガサガサと音がして、 の(おおかみ)が出てきた。



  およそ十〜十四匹の狼の()れだ。



  俺は瞬時(しゅんじ)に腰に提げていた剣を抜こうとしたが、 初めての実戦で(おく)していたのだろう。 俺は剣を抜くことが出来なかった。



  「魔法狼(マジックウルフ)です! そこまで強くないので、 今のユウマさんでも大丈夫です!」


  俺を(はげ)ますようにキリがそう言うと、 三匹の魔法狼がこちらに走ってきて、 残りの数匹は狼の言葉で詠唱をし始めた。


 

 

  俺は一度深呼吸をし、 言った。


  「こいつらを全部倒せばいいんだよな」



  覚悟を決めた。



  俺は剣を抜かずに抜刀のような構えで、 こちらに向かって走ってくる魔法狼と同じ方向に走った。


 

  詠唱をし終わった魔法狼の氷と雷の攻撃魔法が、 何度も飛んでくる。


  俺は走るのをやめずに、 魔法狼の攻撃魔法を左右に素早(すばや)く動きながら避けた。


 

  そして、 腰に提げている剣を抜き、 走ってきた三匹の内の二匹の首を瞬時に斬り裂き、 残りの一匹の体には死なない程度に傷を負わせた。

 


  斬り裂いた二匹の方はもうピクリともしていないが、 死なない程度に傷を負わせた残りの一匹は、 全力で立ち上がろうとしていた。

 


  俺は三匹の魔法狼の血が付着(ふちゃく)している、 自分の剣をペロっと()めた。



  すると身体に力が()いた感じがした。 そして、 三匹の魔法狼の肉体は塵となって俺の前から消え去った……。


  ー《強欲》で奪った魔力の(ぬし)はどうなるのかと思ったが、 跡形(あとかた)もなく消え去るのか。ー



  「ユウマさん! 危ない!」

 

  俺が《強欲》を試している間に、 残りの魔法狼達が詠唱をしていて、 俺に攻撃魔法を(はな)ってきた。



  頭の中に、 とある属性魔法名が思い浮かんだ。


 

  そして、 なぜか思い浮かんだ魔法名を言葉にする。



  「…氷壁(アイスウォール)。」


 

  一瞬で作られた氷の壁は、 魔法狼達の攻撃魔法を食い止めた。


 

  ーなぜ、 頭の中に魔法名が思い浮かんだんだ…? それに詠唱無しで属性魔法を……。ー

 

 

  俺の頭上にいるキリも、 俺と同じぐらい驚いていた。

 

 

  「…ユウマさん! 魔法狼達がまた魔法を放つ用意をしてます!」


  頭上にいるキリは正気を戻したのか、 俺に言った。


 

  「あ…あぁ。」


  そう言うと俺は、 再び頭の中に思い浮かんだんだ魔法名を言葉にする。


 

  「落雷(サンダーボルト)


 

  俺がその魔法名を言葉にすると、 魔法狼達が揃って詠唱をしている場所のすぐ上に黒い雲が出てきた。



  魔法狼達が次々に詠唱をやめ、 雲の方を見た。



  黒い雲からゴロゴロと音が鳴り始める。



  魔法狼達は落雷を察知して、 黒い雲から逃げようとした。



  …だが、 遅かった。


 

  黒い雲から一瞬のうちに雷が落ち、 魔法狼達を丸焦(まるこ)げにした。


  魔法狼達はまだピクピク動いている。



  他の魔法も試そうとしたが、 もう魔法がでなかった。


 

  ー当然だよな…。 魔法狼三匹分の魔力しか持っていないんだから。ー



  そう思いながら、 再び腰にある剣を抜き、 躊躇(ためら)いながら魔法狼達に血が出る程度の傷を負わせた。



  そして血を舐める。


  再び力が溜まった気がする。

 

 

  ーこれで魔法狼の十三匹分の魔力か…。ー


 

  魔法狼達の遺骨も灰も一つ残らず消え去ったが、 俺は目の前にある砂で墓を作ってやった。



  「ユウマさんは優しいんですね!」


  キリが俺の頭上で言った。



  「当たり前だろ…、 魔物だろうが一つの命を奪ったには変わらないからな…。」


 

  墓の前で手を合わせて心の中で言った。


  ー次は、 人を襲う魔物じゃなく人に生まれてこいよ…。ー



  そして、 再び俺は歩き出した…。 頭上にキリを乗せて。



 

まだ一度も『命を奪う』という経験がなかったユウマ。

現在のユウマの魔力量は『魔法狼十三匹分』

魔法名が頭の中に出てくるとは何事か!


出てきた魔法の詳細はTwitterに書こうかな→@aktns_04

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