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二話 【再会、そして転移】

  ロイ達に拾われてから五年が経った。



  ロイからこの世界について聞いた日から、 毎日ロイと、 拾われた日にロイと一緒にいた年老いた男から剣の稽古をしてもらっている。


  ちなみに年老いた男はジュガというらしい。



  「ジュガさん、今日もありがとうございました。」


  「はい、 ユウマ様の剣の太刀筋(たちすじ)、 とても良くなっております。」



  ロイの稽古は緩々(ゆるゆる)で、 周りから見れば遊んでいるのか稽古しているのか分からないが、 ジュガさんの稽古はかなり大変で、 とても普通の五歳児ができるようなものでは無い。

 

  だが、 その分勇者になる目標も近くなっていると実感(じっかん)できて嬉しい。



  ー今思えば、 俺は剣の才能があるから、 勇者にはなれるとして、 魔法の才能がない俺はどうすれば魔王になれるんだ?ー


 

  少しはそう思ったものの、 今年来る案内者に聞けばいいと思い、 俺はいつも通り稽古後の個人練習をした。


 

  腰に剣を提げ、 腕立て伏せをしていると、 敷地内の前の草がガサガサ音がなった。


  それに俺は少し驚いて、(おそ)る恐る音の鳴った草の方へ近づいた。



  すると、 草の中から(どろ)で汚れているものの、 綺麗な白色の毛()みをした猫が出てきた。



  これほどまでに綺麗な毛並みをした猫は滅多(めった)にいない。


  だけど俺は、 この綺麗な白色の毛並みをした猫を一度だけ見たことがあった。


  俺が前の世界で助けた猫だった。


  「え…?」

 

  思わず口に出た。

 

  すると猫が喋りだした。


  「再会と言えるのか分かりませんがやっと会えましたね、 ユウマさん!」


  「なんでお前がここにいるんだ?俺が助けたはずじゃ…。 それになんで言葉を…。」


 

  俺の驚いた顔を見て猫は答えた。


  「その節はありがとうございました、 ユウマさん! あの時は助かったのですが、 あの後普通車に轢かれてしまい…。 それと、 言葉を発せれるようになったのは、 フィール様に魔法をかけていただいたからです!」


  ーフィールか。あいつならそんなことも余裕にできるだろうな。ー



  俺は納得して、 言った。


  「ところでフィールに話せるようにしてもらったって事は、 お前が案内者なのか?」



  猫は笑顔になり答えた。


  「私のことはキリとお呼びください、 ユウマさん。 そして私が、 この世界の詳細とスキルについて説明する案内者です!」


  「分かった。 キリ、 まず俺のスキル《強欲》について教えてもらえるか?」

 


  俺は産まれてから五年間ずっと謎だったスキル《強欲》について聞いた。


  キリは俺のまだ小さい身体にピョコンッと乗り、 答えた。


  「えーと、 ユウマさんのスキル《強欲》は、 勇者と魔王のスキルを超えるSS級とフィール様は(おっしゃ)っておりました!」


  ーSS級!? ロイと魔王のスキルを超えるのか俺のスキルは…。ー



  「そしてユウマさんのスキルの内容ですが、 魔力を持っているモンスターや人や魔族の血を一滴(いってき)でも口に入れると、 その者の魔力を全て奪うのが《強欲》の力だと、 フィール様から聞きました!」


  ーなるほど… それが強欲の力か…。ー



  スキルの内容を聞いた俺は次に疑問に思ったことを口にした。


  「魔力が仮に《強欲》で奪えたとして、 魔法は使えるのか? それとゲームなら属性(ぞくせい)魔法とかあるが、 俺は何属性なんだ?」


 

  キリが答える。


  「ユウマさんは実は魔法の才能もあるので、 魔力さえあれば魔法を使うことが出来ます! それから、ユウマさんは全属性魔法使えます。 魔法の使い方も私が教えますのでお任せ下さい!」

 

  ー全属性魔法使えるって……。 ゲームなら、 運営にチーター(あつか)いされるぞ…。ー


 

  すると、 すぐ近くから聞きなれている声が聞こえる。


  「ユウマ〜、 どうしたんだい?」


  どこから来たか分からないが、 目の前に急にロイが現れた。


  ーこいつどうやって来たんだよ…。 さっきまで仕事って言って部屋で仕事してただろ…。ー


 

  「…ロイさん、 この言葉を話す猫を()いたいんですけど、 いいですか?」


  ー前の世界やフィールのことは話せないから、 詳しくは説明ができないな。ー

 

 

  ロイは少し驚いた後、 ニコッと笑って言った。


  「へぇ、 言葉を話す猫か…。」


  そう言うと、 ロイはキリに触れて言った。


  「名前は?」


  「キリでございます。 ロイ様。」


  キリが答えた。



  「キリは魔法で話せるようになってるね…。 この()を飼おうか!」


  ー相変わらずロイは甘い。ー


 

  「じゃあ僕は仕事の続きがあるから、 またあとでね。」


  そう言うとロイは一瞬にして消えた。


  ー終わってなかったのかよ。ー



  「…ところでユウマさん、 今から少しスキルを試しませんか?」

 

  俺の頭に乗りっぱなしのキリが言った。



  「試したいが…この街で人から魔力を奪う訳にはいかないし。」


  俺は断った。



  「なら、 人間界と魔界の間にある森で試すのはどうですか? あそこには、 魔物(モンスター)しかいないと聞いてますし!」


  キリは森に行くことを提案したが、 俺は「森は危ないとロイに言われている。」と言った。



  俺が断ると、 キリは少し悲しい顔をして「そうですか…。」と言った。


  だが、 ()ぐに何かをひらめいた(よう)な顔をして、 言った。


  「ユウマさん! 大丈夫ですよ! ユウマさんもかなり剣の稽古をしていたようですし、 私だって魔法を使えます!」


  ーそこまで言うなら、 行こうかな。ー


  「連れて行ってもらえるか?」



  俺の言葉にキリは、 コクリと(うなず)いて、 転移魔法(てんいまほう)の準備を始めた。


  「…空間転移(テレポート)。」


  ーん? ゲームでお馴染(なじ)みの詠唱(えいしょう)は?ー



  思ったことを口にする前に、 俺とキリは転移した。



  一瞬のうちに俺たちは、 人間界の端にいた。




  そして目の前には、 大きい森があった。






 


 

転生前に助けたキリも異世界にやってくるとは……。

詠唱無しで移動…。

そして、空間転移先にある大きな森……。


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