プロローグ 【元高校生、転生する】
「藤田雄馬さん、 あなたはお亡くなりになられました。」
透き通った声に人間離れの美貌、 それに加え、 鮮やかな金髪、 まるでゲームに出てくる女神のような女性が、 ニコリと笑い、 俺に突然人生の終わりを告げた。
「申し遅れました…女神のフィールと申します。 亡くなった方の案内をしております。」
驚きのあまり、 俺はしばらく固まった後、 先ほどまでの記憶を思い出していった。
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俺は、 藤田雄馬。 裕福でも貧乏でも無い普通の家に生まれ、 普通の生活を送っていた。
趣味はゲームだ。 ゲームで小遣い程度にお金も稼いだりもしていた。
そして、 いつも通り学校に登校してる途中で俺は、 道路を横断している一匹の白猫を見つけた。
その猫の背後にはトラックが迫っているのにも気づいた。
―なぜだろう。 トラックの運転手が猫に気付き、止まるかもしれないはずなのに。―
俺は道路に飛び込んでいた。 体が勝手に動いていたのだ。 トラックの運転手が俺に気づいて急ブレーキをした。 だがそれは遅かった。
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そして今俺は、 トラックに轢かれてしまい、 ここにいるのだろう。
俺が記憶を思い出し終わったのと同時に、 フィールが話の続きをし始めた。
「私はあなたの行動に感動しました。 あなたは、猫を助けるために命を捨てたのです。 誰でもそうできるわけではありません。」
「まだ…生きたいですか?」
フィールの意味のわからない質問に俺は答えるつもりはなかったが、 自然と口が動いてしまった。
「もちろん!まだ生きることが出来るなら!」
フィールは再びニコリと笑い、 俺にある提案を持ちかけてきた。
「ちょうど今、 異世界への転生者を募集していたところなんです。」
俺は異世界という単語を聞き、 結構テンションが上がった。
ー異世界といえば魔法とかバンバンつかえるからな。ー
「ですが、 ただ転生をさせる訳には行かないのです……。」
「?」
俺は話の続きを求めた。
「実は…転生するのには条件がありまして……。」
「条件?」
「はい。」
「異世界は今、 人間界と魔界の二つで分けられています。 ですが、どちらも仲が悪く、 争いなどがよく起こるのです。」
フィールは少し小さくなった口調で言った。
「なので、 あなたには異世界を平和にして頂きたく……。」
なにやら、 大変な条件なようだ。
「ん?そもそも俺に力はあるのか?」
ふと思った事を、俺は口にした。
「その事は問題ありません。 異世界へと転生する前にあなたにスキルを授けます。」
「それはありがたい。」
思わず言葉が出た。 スキルがあれば無双できるだろうと思ったからだ。
「それから、 あなたが生まれ変わって五歳になった日に、 詳しく説明をしてくれる者を向わせますね。」
フィールは転生の準備に取り掛かった。
準備が出来た。
「それでは、 転生前に…」
そう言うと、 フィールは俺の額に手を置いた。
【スキル授与中…スキル《強欲》。 スキル授与成功】
「それでは、 魔王の消去お願いしますね。 転生致しますので、 目をつぶってください。」
フィールはニコリと笑い、 俺にそう言った。
そうして、 フィールの言う通りに俺は目をつぶった。
十秒程経つと、 閉じている目に眩しい光が差してきた。
あまりの眩しさに目を開けると、 俺は木で作られた家にいた。