第5話 お友達が来ました
次回は27日予定です。
領地に来て、早2ヶ月。
最初は戸惑いもありましたが、家庭教師の先生による授業も始まり、王都にあるお屋敷とあまり変わらない日常を送っています。
そんなある日。
三人揃って、お祖父様の執務室に呼ばれました。その手には、何やら御立派な紋章付のお手紙がありました。
確か、正式な場合に使う、格式高い国公認の便箋です。家紋は各家のものという違いはありますが、様式は全て同じです。男爵家にもありました。爵位により、使う縁取りの色が違ったはずです。男爵家は黒でした。伯爵家は確か、水色だったはずですが、手紙は金色・・・。王家と公爵家のみ、使う事が許された特別な便箋です。
うわぁ、嫌な予感がします!
「面倒な事になった・・・」
ぐったりしたお祖父様が心配です。50歳くらいの、かなり若いお祖父様は、いつもは年相応の穏やかな方ですが、今は年齢よりも老けて見えます。
「お祖父様、大丈夫?」
エラが心配そうに問いますが、それにはちょっと元気が出たのか、笑顔でした。やっぱりお祖父様、エラを溺愛してますね。
「あぁ、大丈夫だよ、・・・・・実はな、隣の領地の方から、とあるお願いがきたんだよ・・・・・はぁ」
盛大な、ため息が出るような、厄介なお願いとは何でしょう??
「彼方には、カレンディアと同い年の令嬢がいてな、遊び相手になってほしいそうだ・・・はぁ、こちらは断れん! 面倒な事に、お目付け役は令嬢の兄らしい、ご学友と共に、数日世話になりたいと、連絡を寄越した・・・」
この世の絶望を、全て体現したような様子に、嫌な予感がひしひしとします!
「あちらのご令嬢は、まだマシだが、兄は癖がある・・・何よりご学友がなぁ・・・はぁ」
何やら気掛かりがあるみたいです。しかし、私達に話さないのは、何かあると言ってるようなものです。
「とりあえず、来週辺りに来るから、覚えておいておくれ」
話はそれで終わり、私達は執務室から出ました。それぞれが部屋に行く中、私は廊下にいた執事長に近付きます。
「どうされました? エリスティーヌお嬢様」
「あの、お祖父様はお疲れのようだから、リラックス出来るハーブティーか紅茶をお願いできますか?」
「畏まりました、大旦那様はハーブティーは御好きではありませんので、紅茶をご用意いたしましょう」
「ありがとう、お願いしますね」
執事長は、丁寧に頭を下げてくれました。ここに来てから、この屋敷に仕えている皆さんは、義理の孫である我々にも、本当によくしてくれます。時々、申し訳なく思うくらいには・・・。だからこそ、私はお礼を言う事を、許される範囲でしています。最初は男爵家で習った範囲をしていましたが、家庭教師の方に習い、更にその都度、確認して、出来る事が増えました。コックさんへは、メイドさんに頼むか、手紙を渡すかにしています。直接会うのは、ダメなのだそうです。コックさんを呼べるのは、家の顔である旦那様のみらしいです。
「はぁ、何事もないといいんですが・・・・」
それからきっちり2週間後。素晴らしく晴れた、晴天の日。
今現在、我々は目上のお子様方を歓迎すべく、お屋敷の玄関前でお待ちしています。先程、先触れが来ましたから、到着時刻はそろそろです。
本日の我々は、ちゃんと着飾っています。姉は、緑色のドレスで大人びた感じです。私は淡い緑色、エラは水色のドレスです。髪型はお揃いで、ハーフアップにしていて、ドレスと同じリボンをしています。
いよいよ、来ました。前に止まった馬車は三台。一台目からは、年の近いご子息とご令嬢が、2台目からは数人のご子息が出ました。3台目は荷物と使用人の方々のようです。
短い挨拶の後、直ぐに中へ案内しました。
◇◇◇◇◇
私は長らく、伯爵家本邸で執事長をしております。代々仕える伯爵家は、歴史ある本家筋の一族です。
本来ならば、再婚すら大変な事なのですが、お相手は我々も知っている方でしたから、話はトントン拍子に進んで行きました。我が儘な方とはいえ、男爵家から見たら、です。裕福な伯爵家では、我が儘にすらなりません。可愛らしい方とお見受け致します。
とはいえ、お子様は我が儘かもしれないと、ヒヤヒヤしていた我々ですが、実際のご令嬢方は、予想外にも普通のご令嬢でした。
姉のカレンディア様は、貴族のご令嬢らしいご令嬢でしたが、次女のエリスティーヌ様は、大人しく、賢いお子様で、学ぶ意欲が凄いのです。家庭教師の方々が、大変喜んでおりました。
伯爵家にある、図書室に通う姿は、既に日常となりました。読んでいる内容は、難しい物ではありませんが、学術書系です。難しいものは、家庭教師の先生に聞いて、覚えているようです。
「大旦那様、紅茶をお持ち致しましたが」
エリスティーヌお嬢様にお願いされた紅茶を、大旦那様に用意し、入った室内は、大変珍しく、大旦那様が頭を抱えていました。あれから、また悩まれていたのですね?
「おお、すまんな・・・まさか、公爵家から寄越すか? エリーは気付いたらしいぞ、その意味に・・・敏い子だ、本当に・・・・・だがなぁ、よりにもよって、あの癖だらけのご子息たちとご学友とはなぁ」
はぁと盛大な溜め息をついて、紅茶を口にします。エリスティーヌお嬢様からと伝えれば、滅多に見せないデレッとした顔です。エリスティーヌお嬢様は、気遣いが出来る方です。我々にも必ず、ありがとうを言ってくれる優しい方です。
「孫たちを渡したくはないな・・・」
本当に小さな声の呟きは、聞かなかった事に致します。いつかは、お嫁に行かなければならないのですから、当然です。まぁ、血が繋がらないとはいえ、知り合いのお嬢様です。大切に思っているのでしょう。
まずは、ご子息様方をどう、おもてなしをするか・・・でしょうか。