後日談:豪華絢爛なエラの結婚式2
すいません、まだ続きます・・・。
盛大なファンファーレが鳴り響く会場は、流石、代々の王家が結婚式をしてきただけあり、美しく荘厳な空気に包まれています。赤い絨毯が真っ直ぐに中央を渡り、我々参列者は準備されている椅子に、順番に腰を下ろしています。盛大なファンファーレに、ガヤガヤとした会話はピタリと止まり、変わりに誰もが入り口を振り返っています。
きっと今頃、入口では号泣した父が、エラと腕を組んでいるんでしょうね・・・。我々の時にも、父は泣いていましたから、実の娘たるエラ相手なら・・・・・そこまで考えて、自分の考えに不安になりました。大丈夫かしら?
お父様、泣きすぎて脱水症状になったり、しないですよね?? あら、何だか有り得そう・・・。
「姉上、お父様は大丈夫でしょうか?」
今日は、あの小さかった弟たちも参加しています。上の弟は13歳になりました。しっかり者で、お父様に似ています。下の弟は9歳。まだ学園に通っていませんが、本好きが高じて、かなり頭の良い子です。姉と私の子は、流石に幼いので、乳母に預けて、家でお留守番です。
「うーん、ちょっと不安ね・・・」
我々の時に、既に父の姿は分かっていますからね。不安しかありません!
なお、王家の結婚式は、この後、王城での晩餐会です。家族をお招きしての晩餐会ではなく、ここにいる全ての貴族が対象になります。王家が歓迎した花嫁であると、知らしめるためらしいです。
因みに、これが無くて、家族のみの晩餐会だと、王家が嫌々迎える花嫁、という怖い意味になるらしく、家庭教師の方に教わった時は、王家怖い! と、恐怖に包まれました。過去に数回、実例があったとか・・・。ひえぇ~・・・。
と、隣にいた私の夫、クリストファー様が口を開きました。聞こえちゃったみたいです。
「エリー、父君なら大丈夫だと思うよ? 側近の皆様が、気合いを入れていたから」
なら、大丈夫かしら? 父の側近の皆様は、大変優秀な方々です。義理の娘な我々姉妹にも、きちんとお仕えしてくれる方々で、私も安心しています。彼らなら、大丈夫でしょう。父の晴れ舞台でもありますし、エラにも心配はかけないでしょう。
「なら、安心ですわね」
今度こそ、安心したら、扉が開く音がしました。重厚な扉は、美しい彫刻がされた物で、当時の名工の作とのこと。因みに国宝だとか。私の結婚式の時も思いましたが、流石、国の顔たる王族。豪華さは、公爵家以上ですわ。
「まぁ!」
あちらこちらで、感嘆の声が聞こえます。最前列のここからも分かるくらいに、美しいレースをまとったエラと、明らかに緊張し、右手と右足が一緒に動いている父。やはり、ダメでしたか・・・。遠目でも、分かるくらい緊張してますね。
「綺麗だね、お姉さま」
上の弟が少し寂しげにしているのが、私にも分かりました。既に、姉も私も家を出ていますから、この子も寂しいんでしょう。歳が離れていますから、余計に。
「うー、見えない!」
下の弟は、まだ背が低いので、エラが見えないみたいです。不満が顔に出ています。
弟達は、髪色は父に、顔立ちは両親の良いところを受け継いでいるため、二人共にモテモテのイケメンです。まだ未成年ですが、社交界に出れば、たちどころに釣書の山が出来そうですね。うちは、歴史ある伯爵家、王家と公爵家の親戚です。狙う方々は居るでしょう。
「何だか心配だわ」
妙に、弟達になつかれているのは、理解しています。カレンはツンですし、エラは優しいけれど、有無を言わさぬ迫力があります。私、特別な事をした覚えは、ないんですけどねぇ。
「エリー、来たよ」
コソッと、クリス様が教えてくれて、慌ててエラを見ます。いつの間にか、中腹まで来ていました。表情には出さないように、近くなったエラに集中します。
遠目でも美しいレースでしたが、やはり、近くで見ると、圧巻と言えます。繊細なレースだと、誰もが囁くのが聞こえます。
ウフフ、それはそれは、我々一族の夫人や令嬢方の総力を結集し、頑張りましたもの! 私もエラの為に、ここ数年はレース作りを頑張りました。カレンは、妊娠中の暇な時間は全て使うと、旦那様の心配を他所に、作りまくっていたとか。
母と祖母の監修の元、縁飾りも皆でやったので、出来上がった時は、とても素晴らしい出来に、誰もが笑顔で歓声が上がったくらいです。
「エラ、綺麗だわ・・・」
大切な妹の晴れ舞台です。私達が見守る中、エラはとうとう新郎たるエルリック殿下の所へ、足を進めました。殿下は、今日初めて着飾ったエラを見たのです。頬を染め、耳まで真っ赤になって、一心にエラを見つめるエルリック殿下。その眼差しは、愛しい者を見る姿です。
「殿下、娘を宜しくお願い致します」
「はい、私の全てを持って」
力強い殿下の声は、広い神殿内に響きました。そこかしこから、小さな悲鳴が上がります。両思いですからね、二人とも。エラの手が、エルリック殿下へ移ります。父の顔には、万感の思いが宿っていました。
・・・・・エラの手が離れ、エルリック殿下の手を取った時、小さな舌打ちが聞こえた気がしますが、まさかですよね? お父様、大人げないですよ!? 幸い、小さな悲鳴に書き消され、気付いた方もいないようです。
ーーーーー不敬罪になりかねませんよ、お父様・・・。
呆れたのは、言うまでもありません。
『これにて、神の名の元、彼等を夫婦として認める!』
あら、またハラハラしてる間に、肝心の宣誓を聞きそびれました!!
とはいえ、父は母の隣に座り、歯軋りせんばかりに、怖い顔です。そんな父を、母は苦笑しながら、慰めています。あら? よく見たら、父は号泣してますか!?
・・・・・全力で見なかった事にしましょう。可愛くはないですわ、お父様。
「おめでとう、エラ」
さて、これで教会の式は終わり、次は城での晩餐会です。和やかなまま、移動を始めようと、席を立った瞬間、この場には全体に似合わない、甲高い悲鳴が、辺りに響き渡りましたーーーーー。
・・・・・どうやら、アホが居たようです。




