第4話 新しい家族が増えました
次回は23日投稿予定です。
両親からの嬉しい報告のあと、両親と先代伯爵夫人様が話し合ってこう決まりました。
母は大事を取って、王都にあるお屋敷に居る事になりました。こちらには優秀なお医者様も、産婆さんもいるからです。我々姉妹は、領地へ行きます。母の負担を軽減するためです。領地には、先代伯爵様が居て、今は領地を管理しているそうなのです。
領地へは、馬車で半日で着きました。王都のお屋敷よりも、領地のお屋敷は更に大きく、姉は大喜びでした。私は久しぶりに会う、先代伯爵様に今からガチガチに緊張していて、ただ一人、エマだけが嬉しそうにしていました。
エマ曰く。優しいお祖父様だそうですが、我々はあくまでも母の連れ子・・・・・。ちゃんと出来るでしょうか?
不安な中、先代伯爵様とご対面です。
「お祖父様~♪」
まずは、エラがぶっぱなしました。お祖父様に飛びついたのです!! 吹き出さなかった自分を誉めたいです・・・。姉は、それを見て、不機嫌そうに、エラを睨み付けていました。姉よ、自分の心配をして下さい!
ご挨拶があるんですよ!?
「良く来たなぁ、エマ! 大きくなって、お祖父様によく顔を見せておくれ」
・・・・・厳しい方と伺っていましたが、やはり、可愛いエマには別なのでしょう。一通り、二人の時間を過ごしてから、やーっとこさ、此方に視線を向けられました。
「やぁ、結婚式以来だね? これから宜しく頼むよ」
視線がかなり鋭いです! 一挙一動を見逃さないぞと、言われている気分です・・・。
「お久し振りです、長女のカレンディアです」
姉は我関せずといった感じで、最近、家庭教師に誉められたというカーテシーを見せました。次は私の番です! 姉の堂々とした姿に、羨ましいとすら感じます!
「お久し振りです、先代伯爵様、次女のエリスティーヌです、しばらくの間、宜しくお願い致します」
家庭教師の先生に、ようやく及第点を頂いたカーテシーをします。勿論、略式ではなく、正式なものです。家庭教師の先生は、かなり厳しかったです。中々及第点が貰えず、泣きそうになりました。
「よく来たな、二人とも・・・疲れていないかい? さぁ、部屋を用意してあるから、少し休みなさい、昼食はまだかい? ならばその際に話を聞かせておくれ」
あらら? 厳しい方と聞いていたのですが、おかしいですね? エラを溺愛しているとは聞きました。が、我々にも、興味があるようです。連れ子ですから、冷たい態度を取られると、覚悟していたのですが。なんて考えている間に、お屋敷に案内されました。広い玄関ホールに、美しい美術品たち。更には、豪華なシャンデリア・・・。王都のお屋敷以上の豪華さです。
「さぁ、ここが、カレンディア嬢の部屋だよ」
姉の好みたる、可愛いけれど豪華な部屋は、赤で統一されていました。家具は白なので、若々しい感じがします。あちらとは違うテイストですが、姉は気に入ったようです。
次は私の部屋です。豪華絢爛な部屋だったらとヒヤヒヤしましたが、そんな事はなく。淡い紫色で統一され、白の家具が同じく置かれていました。何より、部屋にドンとそびえ立つ巨大な本棚に、自然と目が行きました。王都のお屋敷よりも大きいこれは、やはり沢山の私好みの本が置かれていました。
「わぁ! まだ読んだ事が無いものばかりです! ありがとうございます! 先代伯爵様!」
キャーキャーと内心、はしゃいでいる私ですが、お礼をしてから見た先代伯爵様の、何とも言えない顔に、首を傾げてしまいました。
「あの・・・、何か失礼を・・・?」
一気に不安になり、そう聞いたら、先代伯爵様も困り顔になってしまいました。一体、何をやらかしてしまったんでしょう!?
「・・・その、私の事も、お祖父様とは呼んでもらえんかの?」
「・・・・?? え? 宜しいんでしょうか?」
良く分かりませんが、お祖父様呼びをお願いされました。あれ?? 厳しいという評判は、何処に行ったんでしょうか!?
「分かりました、お祖父様、これから宜しくお願いします」
何故か、とても嬉しそうな姿には、やっぱり厳しいという評判と重ならず、私は内心、首を傾げてしまいました。
◇◇◇◇◇
息子が、やっと再婚した。相手は息子の親友の奥さんだった。親友たる、マーナル前男爵は、息子と特に仲がよく、訃報を聞いた時は、しばらく茫然自失だったと聞いている。
私も彼に会った事があり、穏やかなところや博識で分を弁えたところは、高く評価していた。その知恵に、何度か助けられたからだ。
彼が自慢していたのは、領地は勿論、家族もだった。特に、娘自慢は、私も覚えている。姉はその美しさを、妹は自分と似た内面を。特に、妹の方は、自分に似て本が好きだと、嬉しそうに語っていた。
だからこそ、結婚式に会った二人には、初めて会った気がしなかった。散々、自慢されていたからだ。
再婚してすぐ、息子夫婦に子供が出来て、孫三人を私が預かる事になった。
可愛いエラは、直ぐに飛び付いて来た。この子は、変わらないらしい。しばらく、可愛い孫を堪能してから、二人に視線を向ける。姉は、まあ、及第点だろう。勉強嫌いらしく、家庭教師が手をやいているらしい。妹は、真面目に頑張るタイプらしく、カーテシーはかなり様になっていて、優雅で美しかった。あの彼が、自慢してた通りだろう。
部屋は、結婚式が終わり、領地に帰ってから、用意していた。姉は豪華な部屋が好みで、妹は落ち着く部屋が好みと聞いていた。本好きとも。
伯爵家は代々、本好きが多く、蔵書もかなりある。私も集めている。だから、エラの部屋にも、本は置いているが、絵本ばかりだ。エリスティーヌ嬢は、既に普通の本も読むらしく、家庭教師が誉めていた。だから、用意してみれば、案の定。
部屋に案内してやれば、二人とも目を輝かせて喜んでいた。うん、お祖父様は満足だ!
が、エリスティーヌ嬢の先代伯爵様呼びには、かなりショックがあった。お祖父様と呼んでくれるとばかり、思っていたからだ。
だから、お祖父様呼びをお願いした。何故か、エリスティーヌ嬢がエラにも、そして、亡くなった彼にも見えて、大切にしてやりたいと思ったのだ。
不思議な子だ。頑張り屋で、礼儀正しく、分を弁えていて。
亡くなった彼の分まで、大切にしてやりたい。私には彼に、大きな借りがあるからな。