第38話 ハッピーエンドへ向けて
これにて、本編完結です。
お読み頂きありがとうございましたm(_ _)m
オマケ話を数話だす予定です。リクエストを募集していますので、気になる話が有りましたら、お気軽に活動報告まで♪
秋晴れの今日。ようやく、カレンとアルバート様の結婚式が開催されました。伯爵家としては、平均的な結婚式です。でも、参加人数がかなり居ます。家族や親戚、義理で呼ぶ方々も含めて、数百人規模の物です。これだけあれば、カレンが忙しいのも、頷けます。
・・・・・私の時は、更に大きくなる予定だそうで、今から武者震いがします。きっと、カレン以上に大変でしょうね。
「カレン、おめでとう」
「お姉様、おめでとうございます!」
花嫁の控え室で、我々は最後の御対面です。会場に向かわないといけませんからね。
カレンは、刺繍の美しい白いドレスを着て、緊張の面持ちです。後は、母からのベールを着用するだけです。
「さぁ、カレン・・・これが貴女のベールよ」
涙で揺れる優しい眼差しの母が、あの日から皆で用意した、レースのベールをカレンに付けてあげます。私やエラも手伝って、更にはお婆様達も作ってくれて、今やベールは花嫁を祝う素晴らしい物になりました。
「お母様・・・これ・・・」
感極まったのでしょう。カレンの声が震えています。
「あら、花嫁さんはまだ、泣いちゃダメよ?」
お母様、結構無茶を仰いますね!? 既にカレンは、ウルウルしてますが、その言葉に、必死で笑顔を見せます。
「わ、分かってますわ!」
流石、ツンデレ・・・。お母様ったら、しっかりカレンの扱いをわかっていますわ。
「幸せになりなさい、カレン」
ベールを飾りながら、母がカレンに優しく語りかけます。アルバート様なら大丈夫でしょう。カレンを一途に思い続け、結婚を期に軍を辞め、領地で嫡男としての仕事を学ぶそうです。いやはや、カレンの為に、相当な根回しもしたみたいです。
うちは、エラが王家に嫁ぐのは、決定してますからね。例え遠くても、王家と親戚になりたい方々にとっては、相当な優良物件なんですよ。カレンと私。私はクリストファー様のところへ決まってしまいましたし、となれば、残るはカレンのみ。水面下では、相当な戦いが起きていたようです。
「ありがとう・・・お母様」
少し、震えた小さな声。多分、ツンなカレンにとっての、精一杯のお礼。
私達は胸がいっぱいになりながら、控え室から家族席へ移動します。勿論、バージンロードを歩くのは、父の役目ですが、緊張で真っ青な父が心配になります。義理とは言え、親友の家族を迎えてくれた義父には、感謝しかありません。エラと同じくらい、大切にしてくれた新しい父。私達は、本当に素敵な縁を結んだのです。
いよいよ始まった、カレンの結婚式。
カチカチになりながら、それこそ、右手と右足が一緒に出ている父を見ながら、いよいよかとハンカチをギュッと握りしめます。厳かな雰囲気で始まった式は、プログラム通りに進み、思ったよりも早く駆け抜けていきました。
「新しき夫婦に、末長き良き祝福がありますように」
神父様の厳かな祝福を受け、式は終わりを告げました。次はいよいよ、王都の伯爵家で、親族を招く晩餐会です。これをキチンとしないと、結婚自体が無くなるかもしれない、一番緊張する場面です。
「ようこそ、我が伯爵家へ!」
先に来ていた伯爵夫妻が、嬉しそうに招いてくれました。我が家の両親、私、エラ、弟二人、先代の伯爵夫妻もこれに続きます。これから、親族の親睦を兼ねた晩餐会が始まるのです。
「カレンディアさんが、我が家の花嫁として来てくれて、本当に嬉しいですわ」
晩餐会の途中、アルバート様のお母様が、嬉しそうに言ってくれました。
「アルバートは小さい頃から、カレンディアさんしか、見えていませんでしたもの」
「母上!?」
親からの暴露に、アルバート様が慌てています。今日の主役の一人ですのに、何て哀れな・・・。アルバート様、お母様に内心をずっと、ばらされているんです。恥ずかしさと、気まずさに、お顔が真っ赤です。
「ご馳走さまですわ、若いっていいわね」
うちの母に止めを刺され、アルバート様、撃沈しました。カレンに背中を擦られて、ちょっと浮上はしたみたいですけど。その場面を見て、母の顔が更に優しくなりました。スッと姿勢を正した母は、アルバート様を真っ直ぐ見ています。
「フフッ、これで、安心してお任せ出来ますわ、ーーーーーアルバート様、うちのカレンを、宜しくお願い致します」
頭を下げた母に、隣のお父様はギョッとして、ばつが悪そうに、顔をしかめています。
でも、アルバート様は、それに目を見開き、驚いたのも一瞬。直ぐに、母へ真剣な顔で、頭を下げていました。
「はいっ! カレンを、カレンディア嬢を必ず大切にして、幸せにしてみせます!」
我々はカレンを残し、安心して、場を後にしたのでした。
◇◇◇◇◇
「お母様! それで? それから、どーなったの??」
幼い子が、キラキラと好奇心をいっぱいに瞳に詰め込んで、私を見ています。姉の結婚式の話は、娘には大好評だったようです。長男は、話に飽きたのか、庭に遊びに行ってしまいした。
「はいはい、そんなに慌てないの」
「だって、気になるの!」
カレンの結婚式から、既に8年の月日が流れています。
翌年には、私が結婚式を上げました。エラはその翌年に。勿論、母や皆が作ってくれた、レースのベールを着けて、ガチガチの父と共にヴァージンロードを歩きました。父の男泣きに、私達もホロリとしましたね。エラの時は、開始前から泣き始めて、大変でしたわ。
「ただいま帰ったよ」
「おとうさま~♪」
クリストファー様の声がして、そちらへ視線を向ければ、美しい顔を優しい物へ変え、駆け寄った娘をギュッと抱き締めました。すぐに、私のところへ来ると、チュッとキスをします。これは、結婚してからの習慣です。
「お帰りなさい! いまね? おかあさまの結婚式の話を聞いてたの!」
意表を突かれたクリストファー様は、目を見開き、ゆっくりと此方を見ました。視線が問う物なのは、仕方ないでしょう。あの日は、クリストファー様にとっては、忘れたい出来事も、沢山あるはずですから・・・。
「ウフフ、カレンの結婚式の話が終わったところ、だったのですわ」
この八年で、クリストファー様は大人の余裕を持つ、素敵な旦那様になりました。本当は、私も動きたいのですが、大きなお腹では動くのも一苦労なんです。そう、私は今、三人目の子がお腹に居ます。だからか、クリストファー様の過保護が凄くて・・・。
「それは・・・」
何かを言いかけて、懇願する視線を、直ぐ近くから、ガンガン向けられています。勿論、言えませんて。娘には結婚に対して、キラキラした夢を持ってもらいたいですからね。
「ウフフ、お父様が来たから、お話は今度にしましょうね」
「えー!? まだ、カレンおばちゃまのしか聞いてまちぇん! 次はおかあさまのでしょう?」
どうやら、話さないと納得しないようです。我が娘ながら、好奇心旺盛なところは、私に似たのでしょうね。顔立ちはクリストファー様に似たんですが。五歳でこれなら、将来が楽しみですね。
「はいはい、しょうがないわね・・・お母様の結婚式にはね、沢山来てくれて、まさかの公爵家が代々結婚式を行う大聖堂で、お父様と結婚したのよ、皆が作ってくれたレースは、お母様の宝物よ! 本当に綺麗でうっとりしたわ」
「それで? それで?」
キラキラした好奇心いっぱいの目は、結婚式に夢がいっぱいで、これはまだまだ質問が来そうですね。
「それで・・・」
「お父様の家に来たお母様は、お婆様に気に入られて、幸せに過ごしたのさ、宝物も増えたしね?」
私の言葉を遮り、クリストファー様は綺麗に締めくくりました。・・・余程、あの忘れたい出来事を、娘に言われたく無いようです。
「・・・まったく、調子がいいんですから」
呆れるしかありませんね。
でも、確かに私は、今とても幸せです。宝物も出来ましたから。
私の物語は、ハッピーエンドへ向けて、進んだのです。これからも大変な事は、沢山あるでしょう。でも、私はきっと乗り越えていけると、信じています。
「ねぇ! アンジェリーナ様の結婚式は?」
あらあら、娘はまだまだ聞きたいようです。
「彼女は、この国の王室の伝統に則った、素晴らしく豪華絢爛な結婚式をしたのよ、候補の方がもう一人居てね、その方と切磋琢磨したのよ」
大分、脚色した気がしますが、嘘ではありません。子供に聞かせるなら、これくらいで良いでしょう。
「物語はハッピーエンドかな?」
茶目っ気たっぷりの旦那様に、私は満面の笑みを浮かべて、答えました。
「勿論!」
~完~




