第32話 婚約が決まりました♪
お待たせ致しました。やっとこさ、降りてきてくれました!
「ちょっと、お母様!?」
「奥さん!? それは、早いんじゃないかな!?」
二人の悲鳴が、綺麗な中庭に響き渡りました。片方は私ですわ。
「まぁ、旦那様? 本日はそのつもりでしたでしょう?」
お母様の爆弾発言に、私は固まるしか出来ませんでしたわ。父は、珍しくガックリしてました。つまりは、最初からお見合いのつもりだったと・・・。メイド達が張り切っていた意味が、よくやく分かりましたわ。お礼の場なのに、何故に張り切るのか不思議でしたが、事前に知っていたならば、今日の清楚さをアピールする服装に、とても納得致しました。
「ウフフ、さて、ここからは、ゲストを呼びましょうか」
母の合図に、使用人が案内して来た方々を見て、頭を抱えたくなりました。
お母様・・・、どう見ても、アルバート様のお母様と、弟君ですわよね??!
何 で こ ち ら に い ら っ し ゃ る の ! ?
内心の悲鳴を、口に出さなかった私は、自分を誉めたくなりましたわ。それだけ、この状況に、混乱しているのですから!!
「あら、こうなるって分かっていたもの」
にこやかに話すお母様に、頭痛がしてきましたわ。してやられた・・・という、事ですわね。お義父様も、知っていましたわね? 視線が不自然に動きましたもの。納得はしていないようですけれど。
「お久しぶりですわ、夫人、ようやく約束が果たせますわ」
「は、母上!?」
どうやら、アルバート様も知らなかったみたいです。驚いていて、私一人では無かった事に、何だか安心しました。
「カレンデュラ様に、息子は一目惚れをしたらしく、小さな頃から煩かったのです、今回の話は、ありがたいくらいですわ」
「確かに、兄上は女性の話も出ないし、弟としては心配していましたが、いやはや・・・ようやくですか、安心しましたよ、兄上は一途な方ですから、安心してくださいね! カレンデュラ嬢」
アルバート様のお母様、弟君の発言に、彼は恥ずかしいのか、慌てていました。私はあまりの事に、赤面したまま、固まってしまいましたわ。何となく、今ならば、妹のエリスティーヌが気絶した理由が分かったように思います。
勝手に身内に内心暴露されたら、確かに堪ったものではありませんわ!! エリー、散々言ったけど、ごめんなさい。当事者になってやっと分かったわ・・・・・この羞恥心を!
「母上! ドナル! いい加減にしてくれ!!」
泣きが入ったアルバート様の言葉も、家族には効いていないようです・・・。
「アルバート? お前がしっかりしていたら、母が出る幕など無いのですよ?」
ニッコリと笑う夫人の、その目が、笑っていませんでした。明らかに、不甲斐ない息子を叱っている目です。
「母上・・・」
ガックリと項垂れるアルバート様に、同情致しますわ。昔も優しく、結構元気な方で、責任感の強い方でしたが、あまり替わって無いように、見受けられます。
「うちの男は、一途なタイプが多く、浮気を絶対にしませんの、オススメですわよ?」
「今ならもれなく、次期伯爵夫人の座が付きます」
笑顔のお二人から、強い圧を感じます。どれだけ心配されていたのかしら?
「二人とも、俺の見せ場を取らないでくれっ!!」
お声が裏返って聞こえますわ。恥ずかしいのか、顔が真っ赤になっています。あらまぁ、アルバート様も、ご家族にはこんな表情を見せますのね。
とはいえ、彼もこのままにするつもりはないのか、ちゃんと息を整えて真顔に戻ると、私の前に片膝を付きました。耳が赤い気がしますけど。
「カレンディア嬢、どうか、私と結婚を前提にお付き合いしては頂けないでしょうか? この通り浮気はしませんし、嫡男なのでお金にも苦労はさせるつもりはありません、必ず幸せにします!」
真っ直ぐな、真っ直ぐ過ぎる告白に、私は目を見開くしかありません。辺りは静かに、事の成り行きを見守るつもりのようです。
「・・・こんなふうに言われたら、断れないではないですか」
「じゃあ!」
「どうやら逃げられないようですから、お受け致しますわ」
諦めって、必要なんですのね? エリー、色々言ってごめんなさいね? 私もようやく分かったわ。これは、エリーも無理だったわよね?? 外堀が埋められてるもの!!
「ありがとう! カレン! 絶対に幸せにする!!」
アルバート様は感極まったようで、いきなり抱き着いた上に、クルクルと私を抱き締めたまま、回っております。
「キャッ!」
いくら何でも、淑女にするもんじゃありませんからね!? あぁ、だんだんと目が回って、気持ち悪いですわ・・・。
「兄上!?」
「アルバート! カレンさんが、目を回してるわ!!」
「アルバート殿、まだ早いぞ! まだ娘はやらん!」
三者三様の姿に、お母様は淑女の微笑みでしたわ。と言いますか、お母様!? 早く止めて下さいませ!!?
「絶対に幸せにするからな!!」
うぅ、早く止まって下さいなぁ・・・・・。
それから少しして、ようやく止まりましたわ。お義父様に感謝です・・・。目が回っている私は、結局、自室へ戻り、ベッドで休む羽目になりました。
「うぅ、気持ち悪い・・・」
まだ、目が回っていて、地面が揺れている感じがする。結婚を決めたのは、早まったのかも、とすら思います。流石、軍人というべきでしょうか。
エリー、ごめんなさい。貴女の婚約の時に色々あったけど、まさか、自分が体験するとは思ってなかったですわ。
でも、ベッドへ来て、少し冷静になりました。
我々三姉妹の婚約が整いつつあります。順調に整いつつあるという事は、変なヤッカミ等が、出るというのもあるのです。大丈夫だといいのですが・・・。
我が家は伯爵家。いくら歴史があろうとも、上手くいかない事もあるのです。今まで以上に、気を付けて過ごさねばなりませんわ。
特に、私とエリーは、連れ子ですもの。知らぬ間に、不況を買う可能性もあります。
「・・・大丈夫だといいのですが」
知らぬ間に、呟いていました。




