第28話 味方が強力過ぎませんか?!
長らくお待たせ致しました。
次回も誠意執筆中です。
社交界は、噂が流れるのが早い。陰謀、策略、様々な足の引っ張り合いがある、魑魅魍魎の住まう場所だ。
そんな社交界だからこそ、やはりというべきか、最新のゴシップが早々と出回っていた。
公爵子息クリストファー、つまり僕の、恋愛に関するあれこれは、今や知らぬ者は居ない、とんでもないタイムリーな話になってしまったのである・・・。人の不幸は蜜の味、とばかりに、人々は口々に噂を流す。既に、尾ひれ、胸ビレまで付いた、様々な噂になっているだろう。
ーーーーーが、人々の思惑とは、まーったく関係ない、とある噂話が世の女性達を席巻する事になるーーーーー予定だ。
「・・・噂は、新しい物に限るわ、そうでしょう?」
「えぇ・・・」
この日、僕の為に母は、妃殿下に協力を願い、とある噂話を流す事に成功したのである。
「ウフフ、新しい流行りに、一体、何人がついてこれるかしら?」
その目が、笑っていない。正真正銘、狩人の目になっていた・・・。余程、噂により色々言われたのが、腹に据えかねたのだろう。母は、本気でキレていた! 相談した妃殿下が、助けを求める視線を、僕に寄越す程に!!
普段は、諌められる側の妃殿下である。大変、貴重な瞬間を見れた。
さて、母がマジギレしても本気で流行らせようとしているのが、我が領地で取れる物で作られる、貴重な織物とレースである。それで出来たドレスと、小物を流行らせる予定なのだ。
が、それだけでは弱いと踏んだ妃殿下から、新しい化粧品はどうか? と言われて、母は更にヤル気になった。ヤルが、殺るじゃない事を願う・・・。
とはいえ、化粧品等、直ぐには上手く出来る訳もなく・・・。これだけが、難航した。どの路線で行くか、そこで躓いた。
「新しい話題ならば、エリスティーヌ嬢にも聞きましょうか、知恵を貸して貰いましょう」
やはり、母は本気なのだ。彼女も巻き込んで、僕を認めさせ、更に彼女も逃がさないつもりだ。社交界の話題をかっさらう、見事な話題になるだろう。
彼女は母に気に入られている。間違いなく、母は逃がさないだろうし、僕も逃がすつもりはない。
「母上、予定を聞いてからですが、彼女をお茶会に呼んでみては? 自然に見えるように、姉君や母君も呼んで」
母の目が、キラリと輝いた。
「クリスにしては、いい案ですわ、直ぐに招待状を!」
思い立ったら直ぐに行動! の、母らしく、メイドにレターセットを頼んでいた。
何やら、一波乱、起きそうで怖い・・・。とはいえ。
「何とかなるかな・・・?」
この時の自分は、そう、呑気にも思ってしまったのだった。母の暴走が、あったがゆえに。
◇◇◇◇◇
あれから数日。私の体調も戻り、今日は、公爵家でお茶会に参加しています。公爵夫人じきじきのお招きです。母と私、姉が来ております。エラは、残念ながら、お勉強で城へ行っています。候補に上がった令嬢は、全員参加の勉強会であるため、断れなかったのです。他にも候補の方々がいるらしいです。
案内された部屋には、夫人とレイチェル様が居ました。なお、レイチェル様は、花嫁候補には上がっていません。既に、婚約者様がいますからね。
「エリスティーヌ、よく来てくれました、うちのバカ息子が迷惑をかけてしまって、こうして直接会って、謝りたかったの・・・本当にごめんなさい」
「公爵夫人!? お、お止めください!! 私は大丈夫、大丈夫ですから!!」
あの騒動のお陰で、自覚が出来たのだから、結果としては良かったと思います。あの後、母や姉、エラからも、色々と言われました。私、かなり鈍いみたいです。
「優秀な子だったから、まさか、暴走するなんて思わなかったわ・・・」
どこか、遠くに意識を浮かべていたのは、不思議に思いましたが、それでも、こちらにも体裁があります。いつまでも、公爵夫人が気にやんではいけないのです。
「お母様、いつまでも謝れば、伯爵家の皆様が困ってしまいますわ」
レイチェル様が、宥めてくれましたが、本当に申し訳なく思っていたらしい夫人は、しばらく、私の手を放しませんでした。
「ありがとう、エリスティーヌ嬢・・・あんな息子だけど、宜しくね、わたくし達がちゃんと、サポートしますからね!」
あ、あら?? 夫人の目が、何だか”逃がさない“と言われているような気がして、背筋が何かヒヤリとした気がしましたが、大丈夫でしょう、きっと・・・。
「・・・実はね、エリー、貴方に相談があるのよ」
レイチェル様に相談されたのは、公爵家の新しい美容に関する事業についてでした。
「どの路線で行くか、まだ内容も決まってないのよ」
困りきった顔のレイチェル様と夫人は、ため息もまた、絵になる姿でした。私も、婚約するなら、この姿を目標にしないといけないのかしら?
「路線、ですか?」
確かに、明確な目標が無ければ、動けないでしょう。
「うちは、他の公爵領と違い、温泉とかはありませんし、かといって、二番煎じはねぇ・・・」
夫人の困りきった顔は、さながら商人のようです。貴族は領地を治め、民を守り、富ませる事を義務としています。だからこそ、貴族は勉学に励み、努力をするのです。まぁ、中には理解をしているのか、怪しい方々もいますが・・・。
「温泉がダメでしたら、化粧水や美容品になりますね」
そういえば、父が生前、変わった事をしていましたね? 私は当たり前かと思っていましたが、伯爵家に来てから、皆様に変わっていると言われた事がありました。
「あの・・・こういうのは、如何でしょうか?」
私の続く言葉に、その場にいた皆様の、特に公爵家の皆様の瞳が、キラリと光ったのを感じたのでした。




