八話 名前を呼んだんです
八話 名前を呼んだんです
滑空したGは真っ直ぐエスパーダに向かっていく。
「左!」
咄嗟にその単語しか出なかった。だがエスパーダに危機を伝えるには十分だったようだ。
エスパーダはスナイパーライフルを左に振った。ちょうどGの滑空とタイミングが合い、Gのボディーに銃身の先が触れる。
ジュッ。
撃ち続けたことにより銃身が熱を持っており、Gを焼いたようだ。かすかに変な臭いがする。
「撃てっ!」
要が叫ぶとエスパーダは目を閉じたまま引き金を引いた。
パァン!
弾丸はGの一部を砕いた。そこまでは良かったが、エスパーダは顔にGの体液がかかってしまう。目を瞑ったまま不快そうな顔をしている。
スマホを操作してから、要は灯りを付けた。まだGはいるかもしれないが、今はエスパーダに謝るほうが先だ。
「ごめん。目、大丈夫?」
「まだ無理。それより顔になんか付いて気持ち悪い……」
「目の前でGが砕けたから、体液がかかってるんだ」
「終わったら風呂に入るわよ。あ、覗くの禁止だからね」
いつものエスパーダだった。先程までモメていたのは何だったのか。怖いけど確認しなくてはいけない。
「さっきのことなんだけど……」
そう言うとエスパーダは大きく回れ右をした。
「エスパーダ?」
「もう良いの。いろいろ違くても、要は私の側にいてくれるんでしょ?」
「ああ」
「今はそれだけで良いわ。今はね」
後で何かを要求されるかもしれない。でも要は嬉しかった。初めて名前を呼んでくれたから。
「何、ニヤけてんのよ。まだあいつらは全滅してないんだからね」
エスパーダはいつの間にか要のほうへ向き直り、腰に両手を当ててこっちを睨んでる。視力が戻ったようだ。
「うん。今度は灯りがついているから二人で倒そう」
「分かっていれば良いのよ。勝とうね要」
二人はG退治を再開した。