三話 とりあえず一匹倒したんです
三話 とりあえず一匹倒したんです
要はGを視認した瞬間に固まってしまった。恐怖したのだ。いくらエスパーダの前でカッコつけたいと思っても、動くには相当の意志の力を必要とした。
殺虫剤を探そうと一方踏み出した頃には、エスパーダがスナイパーライフルを構えていた。
パァン!
乾いた音ともに弾丸が発射され、Gに命中した。ボディーは砕け散り、脚をばたつかせている。その光景に鏡を引いてしまった。
「ふう」
エスパーダは息をつき、要に向かって胸を張る。
「どお? 私の腕前は」
「すごいよ。今度から任せようかな」
褒めたつもりなのに、白い目を向けられる。要が戸惑っていると、エスパーダはスナイパーライフルで要の脛を小突いて言った。
「あんた、男でしょ。あれぐらい倒しなさいよ」
「男だからこれしなさいは時代に合わないよ」
要の会心の反撃。
しかしエスパーダは鼻で笑った。
「それ、人間族の話でしょ。私は小人。こ・び・と! だから関係ない」
さらに銃身で脛を小突いて、銃口を要のほうへ向けた。
「片付けなさい。じゃないとそのうち、床中虫だらけになるわよ」
Gはまだ生きているが、やるしかないようだ。要はトドメを刺そうと殺虫剤を持ち出し、Gの側へ移動した。
「それ、私にも効くから禁止!」
Gに殺虫剤を向けた要に、まだスナイパーライフルを向けている。殺気を放っていて、それが冗談ではないことが伝わってきた。
「分かったよ」
殺虫剤を片して、再びGと向き合う。着弾の衝撃で八つ裂きにされてもまだ動いていた。
当然素手はキツい。手袋はあるが、感触を味わいたくない。悩んだ挙句、要が使ったのはすでに役目を終えたカレンダーだった。それを小さく割いて簡易のちりとりにした。そしてGをすくってゴミ箱に投入。
これでゴミを捨てる日まではGのことを考えずに済む。
「あんた、嫌いなの? あいつら」
戻ってきた要にまだ銃口を向けている。
「好きな人はクレイジーだと思う」
「私だって好きじゃないわよ。だから二人で倒すの。ここは私とあんたの家なんだから、あんなのに居候されちゃ迷惑よ」
エスパーダは顔を赤くして言った。
「分かった」
そう。要はエスパーダと同棲しているのだ。そしてGは邪魔者なのだ。
「明日、武器を揃えてくる」
「あの毒ガスは禁止だからね」
「分かったから銃を向けないで」
そう言うとやっとエスパーダは銃を置き、スマホを手にした。すぐに異界大戦のオープニング曲が聞こえてきた。