21-3.自分勝手
お待たせ致しましたー
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揃った。
事態と状況、それぞれがほぼほぼ揃ってきた。
これなら、あの少女を困らせるには十分。
黒いマントなどで、身体と頭を覆った女は。ウィンタージュからまた移動して、柘植奈央美の自宅近くまで来た。
男の方はまだ来ていないが、こちらに来ていないと言うことは次代狗神の妨害を出来なかったのだろう。
その狗神については、今はほんの少し前に声をかけた、万屋の弱い女と一緒だ。増殖の中でも、特に術をかけたここを突破するのには時間がかかるだろう。
数日前から、女と男で術を強化して施したのだ。簡単に突破されては少々困る。
困るが、己が困ってもそれはまた一興。
何故なら、女達が求めているのは。あの漣と名付けられた少女の魂なのだから。
「はーやく、出ておいでー?」
そして、今度こそは逃がさない。
あの追いかけっこの末に、女が油断して身体と魂を切り離されたのだから。
さすが、と感心してしまいそうだったが、あれは許されなかった。女の祖父であり、裏の組織である長のあの方にも。あればかりは大層叱られたのだから。
「ふふ。次代狗神も虜にさせちゃうんだもん? ずーるぃよねぇ?」
ずるいずるい。
記憶を切り離す前の、あの頃からずるかった。
女よりも、有能で。
女よりも、祖父に気にかけてもらっていた、あの少女は。
「……逃げられた」
思い出に浸っていたら、男が戻ってきた。
怪我などは特にないようだが、機嫌が悪い。女と同じような格好をしているのに、それが分かるのはやはり付き合いが長いせいか。
「うん。今あそこで頑張ってる」
「……やはり、ここに来たか。であれば、万屋の現所長達もおそらく」
「あの子も来るだろうねー?」
「俺は手助けしただけだが、どうやってあの女を堕とすのだ?」
「うーふーふ! あの刑事さんが来てくれるまでのお楽しみ〜?」
「……はあ」
恋に恋するバレンタイン。
そんな謳い文句は、日本の製菓会社が勝手に決めたことだが。
女も嫌いじゃない。恋ではないが、お菓子は好きだからだ。
そして、あの少女は例の万屋の現所長と結ばれた。
記憶が戻ってもその関係が続くかはわからないが。
どちらにしても、女にとっては娯楽の類でしかない。
ああ、ああ、楽しみだ。
「うーふーふ。甘い甘いチョコレートが、苦くなるような素敵なバレンタインイベントだよーん! 苦しめ苦しめ!」
「……顔と言動が一致していないぞ」
「だって、おかしいんだもーん?」
ヒトは貪欲だ。
私欲を求めるがために、ケサランパサランにも縋る思いで奮闘していく。だが、埋もれそうになったら迷惑でしかない。
本当に、自分勝手だ。
次回はまた明日〜




