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ウィンタージュに憩いの羽音を  作者: 櫛田こころ
バレンタインのために
93/164

21-2.出動する

お待たせ致しましたー







 *・*・*









 かなり長く続いたが、次代が移動してからもう二十分経った。


 例の黒ずくめの女はあれ以降、特に妨害する様子もなくやって来ない。男の方も来ないから、本当に何をしたいのかわからない。


 だが、次代のこともあったから油断は出来ない。


 そして、三十分経った頃になると、さすがに(れん)も疲労を隠せなくなったので。結界班も全員休憩することになった。



「はい、漣ちゃん。たくさん飲んでね?」

「いただきます」



 暦は春といえども、まだまだ寒い。けれど、漣はずっと歌い続けていたので汗をかいたからか、悠耶(ゆうや)は冷たい回復茶を用意していた。


 漣はためらわずにごくごくと飲んでいく。


 晁斗(あさと)達と三つしか違わないのに、すごい勢いだ。それくらい、心を込めて歌うのだ。結界で保護していた晁斗達よりも体力を消耗したはず。


 かく言う晁斗達も、かなり霊力を消耗したのでこちらは温かい方を飲んだ。



「……さて。ケサランパサラン殿。この街に異常に増殖した同胞達は、正常に戻りましたかな?」



 克己(かつき)が端に留まっていたケサランパサランの一体に聞くと、彼はふるふると体を震わせた。



『かなり……落ち着いた。だが、ある一点だけそのままだ』

「ある一点?」

『狗神様が、どうやら向かわれたようだが』

璐羽(ろう)が?」

「ろう?」



 いつのまにか、漣は名付けを済ませていたらしい。晁斗達の注目が自分に集まるとわかれば、彼女はぺこりと腰を折った。



「すみません。今朝決まって……まだ皆さんにはお伝えしてなかったです」

「それは構わないけど。漣ちゃん、『ろう』と言う字は?」

「あ、はい!」



 克己に言われて、早速書いてくれるようだ。晁斗が紙とペンを貸してやると、拙い字ではあるが読める字で『璐羽』と書いてくれた。



(みち)を統べる王の羽……か。たしかに、次代狗神にふさわしいね?」

「そ、そんな凄い意味でつけたわけじゃ……」

「けど、漣ちゃんが時間をかけてつけてあげた名前だからね? 彼も喜んでいただろう?」

「えっと……朝から吠えそうになったので、止めました」

「ああ」



 今朝、漣と次代がもみくちゃになってやってきたのはそのせいか。何故すぐに教えなかったのは、次代本人が自分で名乗りたかったそうだ。


 漣と晁斗が付き合う報告をウィンタージュで済ました後の予定だったらしい。が、報告で騒いでしまったので後回しになった。


 とりあえず。



「ケサランパサラン。その一点っつーのはどこだ?」



 晁斗が聞くと、ケサランパサランは体を震わせた。



『然程離れてはおらぬ。空を駆けられる者であれば、いくらかの時間で到着するだろう』

「なら、空呀(くうが)星燕(しょうえん)どっちでも行けるが」

「晁斗と漣ちゃんで行ってあげなさい。応援が必要であれば、悠耶達を呼ぶように」

「おう!」

「わ、わかりました!」



 付き合いたて最初の依頼ではあるが、事態が事態だ。璐羽もいるし、陸螺(くがら)市全域を覆うくらいのケサランパサランの増殖を落ち着かせるには、漣の癒し手の力が必要だ。


 あの黒ずくめの女達が何をしたいかわからないが、万屋として事態を解決するまで。


 制服から私服に着替えた晁斗と漣は、空呀の背に乗って空を駆けたのだった。



「伝えれるかはわかりませんが、僕到着するまで歌ってみます!」

「無茶すんなよ?」

「大丈夫です!」

「あと、明日のデートはちゃんと行きてーからさ?」

「は、は、はい!?」



 別にデートは延期しても構わないのだが。


 付き合いたてで、しかもバレンタイン。漣からのバレンタインプレゼントも楽しみにしているからだが。


 まったく、あの黒ずくめの女達は何をしたいのだろうか。

次回は金曜日〜

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