21-1.名を受けた
お待たせ致しましたー
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次代は、空を駆けていた。
守護についた宿主である、漣の歌声を街中に響き渡らせるために。次代は己が媒体になると告げてから、ウィンタージュを離れた。
件の袈裟羅・婆娑羅ことケサランパサランの異常な増殖には、母神と己を堕としかけた人間。あの黒ずくめの男女が関わっているかもしれない。
ならば、なおのこと。今回の件には次代も力を尽くすことに決めた。だから、漣から一時的に離れても神使である己が媒介になれば、きっと役立つ。
とにかく、中央らしき場所まで駆けて駆けて。
ここだろうという場所まで到着してから、漣の歌で紡がれた力を体内に貯めていく。
【……うむ。行ける!】
漣の癒し手である力が伝わり、あふれかえりそうだ。これほどの力を、あの少女が、と思うのは今更だが。守護についたことを後悔はしない。
ただし、彼女の守護精が無事に戻るまでだが。どうして彼女から離れたかまでは誰もわからない。だが、彼女の失われた記憶と同じように、見つけてやりたい。
だから、それを胸に留めて、次代は身体を震わせて遠吠えをした。
風が、空気が、震えて漣の力を響き渡らせていく。
そして、その振動を街中に伝わせるために、時々吠えながら次代は空を駆けていく。時折見えた、ケサランパサランの増殖は力を浴びせると瞬く間に消えて行った。
「……そこまでにしてもらおうか?」
やはり、現れた。
自分と母神を堕としかけた、黒ずくめの人間。女はいない代わりに男の方だけだったが。
【……やはり来たか】
「来ると予想していたのに、あの女の元を離れたのか?」
【山とは違う。あの店では、存分に力が振るえれん】
「そのためか?」
【力を響き渡らせる方法は、真よ】
それに、今の次代にはただの守護についた神使だけではない。
大切なものを宿主にもらった。
だから、堕ちることはもうないと思っている。相手も気づいただろう。
「……その力。もしや、名付けを受けたのか?」
男がきりかかってくる前に、次代はまた遠吠えをして力を響かせた。
【……我が名は、璐羽!】
導く羽根。導く路。
それを連なる者なり。
そして、宿主を導く者である。
『綺麗な感じだと思ったし、次代の顔の模様? って言うのが、鳥さん達の羽根のように見えたんだ』
漣の思いが込められた、この名を裏切ることがないよう。務めは果たさせねばならない。
男の攻撃にも当たらないよう、璐羽は空を駆けていく。
薄いが、羽根のような結界をまとわせながら、男からの攻撃を直接には当たらないようにさせた。
向こうも璐羽が影響を受けていないのに気づくと、少し振り返った時に舌打ちをしているのが見えた。いい気分になったが、油断してはいけない。
名付けでさらなる力を得た璐羽であれど、また堕ちないという完璧な保証はないのだから。
「く……っそ、待て!」
【待たぬ!】
そして、駆ける速度もどんどん速くしていけば、男がついてこれなかったようで、すぐに気配が遠退いた。
であれば、璐羽はもうひとりの厄介な女を警戒したが、すぐには現れなかった。
今のうちに、と陸螺市全域に響かせるように、強く遠吠えをするのだったが。
【……ひとつだけ、うまくいかぬ?】
どこだ、とその場所に向かえば。
菜幸がネージュと共にケサランパサランを振り払っているのが見えた。
次回は火曜日〜




