20-3.ケサランパサランが②
お待たせ致しましたー
*・*・*
晁斗から連絡が来る十数分前。
本当に、篤嗣も最初なにが起こっているのかわからなかった。
昼の休憩を取る前に、ケサランパサランの様子を見に行ったら。女性職員が血相を変えながら保管庫から飛び出してきたので、篤嗣でもぎょっとした。
わけを聞くと、白粉をあげるのに。いつものように、桐箱の蓋を開けたら、洪水のように溢れてきたと。その説明の直後に、通路にまでケサランパサランが溢れてきたのだ。
それで、今に至るわけだが。
『どうしようもありませんね……』
「どうにかなんねーか?」
『俺に言われましても……』
「催眠で落ち着かせらんねーか?」
『無茶を言わないでください……』
今篤嗣は、溢れてきたケサランパサランの波に流されて、警視庁内のどこかにいるはず。はず、と表現するのは視界全域がケサランパサランで埋め尽くされているため、四方八方がどこがどこだか判別がつかないのだ。
いったい全体、どうしてこうなってしまったのだろうか。ひとまず、携帯が圏外にはなっていなかったので、御子柴と連絡は出来たが。彼も流されたらしく、今自分がどの位置にいるのかわからないそうだ。
流されたが、埋もれてはいない。
空気が適度に確保出来て、ケサランパサランの本来の穏やかな性格がまだ残っているのか、ヒトは襲わないようだ。
しかし、身動きが上半身以外動けないのが辛い。
「……しょーがねぇ」
御子柴との連絡を一時中断して、篤嗣は右手を上に掲げた。
「…………我が真名との盟約に従う者よ。ここに降り給え」
己の守護精である、八咫烏の篠瑪を顕現させる。手の中から淡い黒の光が生じて、消えれば三本足の濡羽の烏が出てきた。
「あいあいさー! って、旦那ぁ? ここ出るのにどうするんや?」
内側に居たので、状況は篠瑪にも伝わっているだろうが、少々皮肉を言いたくてわざと聞いたのだろう。さすがは、魂の分身とも言われている存在だ。
「……とりあえず、清司郎探してきてくれ。今の状況じゃ、GPSも意味ねぇし」
「あいさー! んじゃ、ちぃっと行って来るでー」
鳥の姿なので、ある程度風を起こせる。その力を利用して、ケサランパサランを左右に大きく押し寄せて飛ぶことは出来た。
とりあえず、御子柴の気配なら篠瑪でもわかるので、待っている間どうしたものかと腕を組んでいると。携帯が鳴ったので御子柴かと思ったら、従兄弟の晁斗からの通知。
しかし、出たら吉報を知らせてくれたのだ。
『今いいか?』
「ちぃっとヤベー状況ではあるがな?」
『え、マジ? まさか、篤兄んとこも?』
「も?」
『事務所で保護してたケサランパサランが』
詳しく聞くと、こちら程ではないがケサランパサランが増殖してしまい。落ち着かせるのに、燈の提案で癒し手の能力がある漣に頼んで、事態を解決出来た。
ただし、一匹だけ残った個体から。どうやら、今回の異変には何かしら裏があるかもしれないと。組織の『裏』か、例の甲本を殺し、かつ狗神を堕としかけた顔を判別出来ない男女二人組か。
どちらにしても、ただならない事態になったことは確かだ。
けれど、篤嗣は動けないと説明したら。次代狗神が媒介となって、陸螺市全域を飛行して主となっている漣の力を拡散させるそうだ。
だから、これはむしろ警視庁からの応援要請にした方がいいと思い、篤嗣はすぐに晁斗に提案してから通話を切った。そして、すぐに御子柴に連絡した。
『どうしました? 篠瑪君なら今到着しましたが』
「つーことは、そんな離れてねーか。今、晁斗から連絡があってだな?」
だいたいの経緯を話せば、御子柴もなるほどと呟いた。
『では、篠瑪君を少々お借りします。課長のところまで行って伝えてきますね?』
「頼んだ」
篠瑪の案内があれば、課長へのルートも確保出来るだろう。御子柴の守護精は飛行タイプではないので、この場合は役に立たないからだ。
とりあえず、晁斗らの計画が実行されてケサランパサランが消えてくれれば、篤嗣も動ける。
警察として動けるのは、それからだとケサランパサランの上に横になったが。潰れることなく受け止めてくれたので、高級羽毛布団かとどうでもいいことを考えてしまった。
そして、横になった時点で。篠瑪の力で自分も移動出来ただろうにと気づくのが遅れたのだった。
次回は日曜日〜




