19-1.プレゼント作りー男子編ー
お待たせ致しましたー
*・*・*
あれから、また三日。
バレンタイン当日までも、あと三日。
漣と挨拶や仕事の事務的なこと以外。本当に何も会話をしていない晁斗は、正直自分がここまで他人に貪欲になるとは思わないでいた。
万屋の方の依頼も、特に落ち着いているので基本的に喫茶店側の仕事がメインになっているせいもあるが。
本当に、本当に本当に本当に。
晁斗は漣とまともに話していない。
漣の方から、少し話したいことはあるようだが。そう言う時に限って、彼女に声をかけるスタッフや客が多く。同じ屋根の下で過ごしても、次代が通せんぼをするのでこれも無理だった。
なので、大人しく日々を過ごしているのだが。今日晁斗は休みだ。ついでに、悠耶も。
そうなるようにシフト申請を克己にしたので、克己と漣を車でウィンタージュに送り届けてから晁斗は悠耶の実家に向かった。
従兄弟同士ではあるが、ウィンタージュで毎日のように顔を合わせるので、茅沼家に行くのも実に久しぶりだ。
正月の時悠耶は熊谷家に来たので、わざわざ茅沼家に行っていない。咲乃の場合も同じだった。
とにかく、途中で今日作るのに必要な材料を買い込み、茅沼家に到着すると悠耶がすぐに出迎えてくれた。
「おはよ」
「はよ。今お前だけ?」
「うん。美玲も出かけちゃったし、母さん達も仕事に行ったよ」
「そっか」
悠耶には、年の離れた妹がいる。まだ高校二年生で部活に明け暮れている年頃だ。だが、将来的にはパティシエを目指すのに専門学校に行く勉強をしているらしい。
ウィンタージュに就職したいがために、日々頑張っているそうだ。その夢を抱いたのが幼い頃だったためか、茅沼家には料理屋さながらの調理道具などが揃っているのだ。
それを晁斗も知っているので、今日は茅沼家にお邪魔することを決めたのだ。材料までは流石に頂戴するわけにはいかないので自前だが。
「いつでも作れるように、準備だけはしてあるよ?」
「助かる」
「まあ、僕も咲乃にために作るし。けど……漣ちゃんのために、随分と晁斗らしくないの作るよね?」
「うるせ」
とにかく、時間は有限なのでさっさと家に入れさせてもらう。完全に悠耶と晁斗だけ。空呀や星燕を降してもいいのだが。今回は自分達だけで作るのがいい。
けれど、味見はさせるつもりではあるので、そこはそこ。
材料と服装を整えて、手をしっかり洗ってから。いよいよ、バレンタインプレゼントへの製作に取り掛かる。
「俺はマカロン」
「僕はガトショー」
と、それぞれ違うものを作っていく。
だが、似た工程はあるのでそこはお互いに手伝ったりする。従兄弟であり、ある意味親友以上の存在であるし。仕事の同僚でもあるから出来ることだ。
今は晁斗が上司ではあるが、まだまだ新米なので同僚と変わらない。
とりあえず、晁斗は材料を混ぜる前に用意しておいた紙を、茅沼家のオーブンにある天板に乗せた。
「おっし、ぴったり」
「可愛すぎるよねえ? 女の子に向けてだから違和感ないけど」
「漣にあげるんだから、いーんだよ」
「そうだね」
普通のマカロンは丸だが、今回はバレンタイン向けなのでハートの形の下書きをしてきたのだ。マカロンには型があるわけではないので、すべて手作業。
しかし、悠耶もだが晁斗も副業に出来るくらいにアクセサリー製作が出来るのでデッサンはお手の物だ。用意したハートの形も綺麗に均一に列で描かれていた。
「えーと、最初はメレンゲ」
「僕はチョコとバターを溶かすよ。晁斗のは焼けた後だよね?」
「ああ」
そして、出来上がったメレンゲに。食紅を適量加えてゆっくりもったりするまで泡だてていく。電動ミキサーでもいいが、力がある晁斗は通常の泡立て器で混ぜていた。
自宅で練習出来なかった分、慎重に作っていくためだ。
焼くと色が薄まるらしいので、少し濃い目のメレンゲが出来上がったらふるっておいた粉類を分けて入れて混ぜ合わせていく。
そして、ゴムベラに持ち替えて、艶が出るまでしっかりと混ぜ合わせていくのだった。
しっかり混ざって、生地もゴムベラで持ち上げればリボン状に落ちていくのが確認出来たので。
悠耶に予熱をお願いしたオーブンに入れるべく。下書きの上に敷いたクッキングシートの上に、絞り袋に入れた生地を慎重に絞っていく。
お菓子作りはほとんどしないのだが、日々の自炊が役立ったのかそこまで歪な形にはならなかった。
あとは、これを焼くだけなのだが。
「この状態で、一時間も常温放置かよ」
「乾燥させないと。すぐ焼いたらひび割れの原因になるし、ピエって縁の模様も出来ないらしいからね? 我慢我慢」
「美玲情報?」
「うん。一応漣ちゃんのことは伏せて教えてもらったよ」
「そっか」
それと空呀の術を使うのも無しだよ、と言われてしまったので。大人しくマカロンに挟むのに使うイチゴのチョコレートを刻むのだった。
次回は水曜日〜




