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ウィンタージュに憩いの羽音を  作者: 櫛田こころ
バレンタインまで
82/164

18-6.違和感と

お待たせ致しましたー







 *・*・*








 宮境(みやさか)刑事に通されたのは、取調室と言うよりも相談を受けるためにと設置されたような個室だった。


 宮境は奈央美(なおみ)に待ってて欲しいと言ってから、一度部屋を出た。中はパイプ椅子ひと組と会議用に使われるような、少し綺麗な机のみ。


 テレビのセットなどで見るような、取調室とは勝手が色々違った。やはり、あれはフィクションだからだろう。



「やあ、お待たせしたね?」



 わざわざ紙コップの茶を持って来てくれたようだ。とは言っても、中身は奈央美が会社の自販機でよく飲むようなカフェラテだった。


 宮境はテーブルに奈央美と自分の分を置くと、早速相談を聞いてくれるのか。空気が変わったように思えた。


 例えるなら、人懐っこい猫がいきなり警戒心を抱いた時のような。


 なので、奈央美も姿勢を正して、まずは絢子(あやこ)から持たされた報告書を彼に渡した。



「こちらが……その。被害と言うかうちの会社の実績です」

「警察に見せるくらいとは、よっぽど異質だったと?」

「はい。部長……私の直属の上司は然るべきところに引き渡そうと言ってはいるんですが。……課長とか他部署は断固反対と言い張って」

「たしかに。ここ半月にしては営業成績がうなぎ上り過ぎだね? ケサランパサランが発生したのは……もしくは見つけたのは?」

「あ。見つけたのは私です!」



 あれはたしか、昼休憩の時。


 綿ぼこりにしては、異様に大きいなと受け止めたら目がついている妖のようなものだとわかり。詳しい同僚に聞くと、それはケサランパサランだと言ったのだ。


 幸運の象徴らしく、せっかくだから増やそうと部署や他部署まで巻き込んで増やそうと言うことになってしまい。


 実際増えて、願いも叶ってはいるのだが。奈央美は、日に日に虚しさを覚えたのだ。


 仕事を運任せ、しかも妖に頼りっきりにさせるのはいかがなものかと。



「……柘植(つげ)さんは、あんまり嬉しくなさそうだね?」

「……はい。だって、仕事は……若輩者の私が言うのもなんですけど、自分の手で掴み取った方が達成感が大きいんじゃないかなって」

「そうだな。俺達の職種はそちらと全然違うが。自分で成果を掴み取った方が達成感を得られるのも正解だ」

「はい。けど……ニュースでも見たんです。ケサランパサランは、今陸螺(くがら)市のあちこちで発生してるんですよね?」

「ああ。実は、君も行ったことがあるウィンタージュでも発生してな? 一部預かったが、ここでも多少なりとも増えている」

「え!?」



 菜幸(なゆき)達も大変なことになっている。


 しかし、つい昨日も奈央美とLIMEしたのに困ったような様子はなかった。だとしたら、万屋の方でうまく対処しているのかもしれない。


 それについては、さすがとしか思えなかった。



「万屋だけでなく、ケサランパサランの増殖の件数は増えていくばかりだ。柘植さんのところは、平均的にどれくらいケサランパサランがいるんだ?」

「数……ですか?」

「ああ。会社だと頻繁に願いを叶えようと思う人間が多いはずだ。それなのに、今も存続しているのは少し不自然だからね?」

「そう……ですね?」



 餌やりは、見つけた奈央美もだが新入社員とかが行っている。奈央美は少し嫌々だったが、大半の社員は違うだろう。


 成果とか、定時で上がれるとかささやかなものから大袈裟なものまで。色々叶えているだろうに、消えてなくなるどころか増えてしまっている。


 いくつだったか、と思い出そうにも今日は餌やり担当じゃなかったので覚えていない。



「最後に見た時でも構わない。だいたいでいいんだ」

「え…………っと。それですと、7か10くらいだったと」

「結構多いな?……わかった。とりあえず、欲に目がくらんだ人間とかは出ていないか?」

「あ、いえ。それが不思議と全然」



 表立っていないだけかもしれないが、奈央美の部署の社員達は仕事に積極的なままだ。ケサランパサランにも愛玩表現を多少する程度で、課長も目を光らせているわけではない。


 たしかに、それは変だ。


 それを宮境にも話すと、彼は自分のカフェラテのコップを一気に煽った。



「成果は得られているのに、一定以上の欲望が増加していない? 変だな?」

「あの……うちの会社、大丈夫でしょうか?」

「とは言え、被害がまだ一部程度だと俺達も動けない。が、報告は適宜してほしいな? 俺のLIMEのIDを教える。あと、御子柴(みこしば)のも」

「え?」

「俺達はコンビで動いているからな? あいつには伝えておく、何か不審なことがあったらすぐに連絡してくれ」

「は、はい!」



 そして、宮境からすぐに警視庁で使われているLIMEだが、彼と御子柴のIDを教えてもらった。


 不謹慎ではあるが。御子柴の連絡先がわかった。だから、つい嬉しくなって声に出して笑いそうになってしまう。


 とりあえず、絢子への報告も兼ねて会社に戻ろうと警視庁を出たのだが。歩行者信号を渡る手前で、フードをかぶったパーカー姿の子供にぶつかったのだった。



「あ、ごめんなさいー」

「気をつけなさいね?」



 別に珍しくないことなので、奈央美もその子供との接触は気にならなかったが。


 帰社してから、何故か熱が出てしまい、早退せざるを得なかったのだった。

次回は新章


日曜日にー

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