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ウィンタージュに憩いの羽音を  作者: 櫛田こころ
バレンタインまで
81/164

18-5.遅咲きの初恋

お待たせ致しましたー







 *・*・*








 柘植(つげ)奈央美(なおみ)は少しばかり悩んでいた。


 例のケサランパサランのせいで、会社に幸運続きが続いて仕事が落ち着きすぎるのももちろん悩んでいたが。


 先日、デパートで偶然出会った、警視庁の刑事である御子柴(みこしば)清司郎(せいしろう)のことだ。


 ウィンタージュ、万屋の所長である熊谷(くまがい)晁斗(あさと)に負けず劣らずの高身長。きちんとしたスーツの着こなしに、涼しげな印象を持つ瞳とメガネ。


 甲本(こうもと)の事件前後では、数回しか会っていなかったが。改めて見ると、刑事にはもったいないくらいの美形だった。俳優と言っていいくらい、体つきもしっかりしていた。


 そんな彼と、先日デパートで相談に乗ってもらうのに、喫茶店で話し合う機会があったのだが。自分と彼の共通点である、古厩(ふるまや)菜幸(なゆき)の話題が出ると異常に盛り上がってしまった。


 だが、彼と別れた後に気づいてしまったのだ。


 ああ、自分は彼に惹かれてしまったのだと。けれど、彼と結ばれることはないのだと。彼は、菜幸を想っているから。


 でも、彼も菜幸とは結ばれないことも知っている。LIMEで菜幸としょっちゅうやりとりするくらいの、友人となった奈央美は、菜幸がウィンタージュのコック長である安西(あんざい)(あかり)に片想いしていることを知っているからだ。


 だから、御子柴ともっと接触したくても。双方の複雑な感情を知っているので、下手に踏み込めない。


 会社の休憩室で、奈央美はボーッとしながらも悩んでいたのだった。



「どーしたの?」

「あ、部長!」



 結構な時間、ボーッとしてたのか。部長の近江(おうみ)絢子(あやこ)があったかい紙コップを奈央美の額に軽く当てて、取るように促がしてきた。


 それを受け取れば、中身はホットココアだった。



「なにー? 何か悩み事?」

「え、えっと……」



 仲の良い上司とは言え、全部告げてもいいかどうか。いくらか悩んだが、一人で抱えるのも限界になって来たので、大人しく告げることにした。



「ん?」

「その……こ、恋みたいなのを、してしまって」

「なーに!? 柘植っちに春!? いいことじゃない! お相手は??」

「え、えっと……ここにも来たと思うんですけど。刑事……さんです」

「え、え? どう言う接点で?」

「実は……」



 デパートで出会ったことと、喫茶店でおしゃべりしたこと。ついでになってしまったが、ケサランパサランのことも話すとさすがに絢子の表情も変わった。



「そうね? 変に順調過ぎるもの。……けど。やぁだっ! 柘植っちがあのクールガイな刑事さんに惚れちゃうだなんて! 目の付け所があるじゃない!」

「でも……。刑事さんは、古厩さんを尊敬していらっしゃいますし」

「そうね。けど、古厩さん自身も、別の人に片想いされてるんでしょ? 奪う……はいい方が悪いけど、柘植っちがずっと片想いするのもしんどいでしょう?」

「……はい」



 父親を早くに亡くしたのと、縁戚にも男性が少なかったので。奈央美はどちらかと言えば、男性との接点が少なかった。同級生とは挨拶程度だったし、必要以上には会話もして来なかった。


 例外と言うか、教科担当の先生に、問題がわからないなどの質問がせいぜいいいところだった。


 社会人になって、少しばかり男性と接点は増えたが。亡くなった甲本以外だと本当に事務的なことばかり。


 だから、遅咲きの初恋と気づいた今回。どうしようか、本当にわからないのだ。


 近づくバレンタインに、せめて、チョコでも渡せれたらいいなと思う程度しか、考えていない。



「既婚者としての先輩からのアドバイスは。後悔しないことよ? なにもせずに自己完結して、あとで後悔する方がずっと良くないわ」

「…………はい」



 菜幸とは、バレンタインの日に友チョコを交換する予定ではいる。


 なら、その前に、一度警視庁に出向いて。無理でも御子柴にチョコを渡そう。


 絢子の言葉を胸に、奈央美はそう決めた。



「部長、ありがとうございます! 断られても、後悔のないようにやってみます!」

「その調子よ! けど、ケサランパサランの件については、刑事さんに対策とか聞いてきてもらってもいい? さっき見たけど、また増えてるのよ」

「? これから、ですか?」

「うん。外出届けは代筆しておくから、行ってきてくれる?」

「はい!」



 御子柴に会える。


 会えるんだ。


 そう思うだけで、あれだけ悩んでた心が軽くなるくらい、奈央美は上機嫌になってしまう。


 ロッカールームに急いで、コートなどを着込んでから警視庁に向かったのだが。


 御子柴はいなく、代わりに咲乃(さくの)の兄である宮境(みやさか)篤嗣(あつし)が対応してくれたのだった。



「久しぶりだね、柘植さん」

「お、お久しぶりです」

「御子柴から少し聞いているよ。君の会社でもケサランパサランが出て……色々おかしくなってきてるって」

「はい。今日もそのことで」



 いくらか残念ではあったけれど。


 咲乃の兄だからか、篤嗣もなかなかのイケメンの部類であった。ウィンタージュの人間とその周囲はこう言う人達が多いのだろうか。


 とりあえず、絢子からの用件に対応してもらうために、きちんと奈央美は質問に答えていく。

次回は木曜日〜

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