18-4.その頃には
お待たせ致しましたー
*・*・*
時刻は昼を過ぎ。
住宅街に、囲まれるようにしてたたずんでいる、喫茶店ウィンタージュと事務所万屋。
見た目は、大きなレストランにも見えるそれらが、上手く混在している。
そして、ある少女は。行儀悪く、住宅のひとつの屋根に寝転がりながらも『ワクワクバーガー』のバーガーを食べていた。
「手作り、羨ましい〜〜!」
自分も何かしら食べているのに、何をと、相棒の男には言われそうだが。それはそれ、これはこれ。
少女の視力には、万屋の事務所の窓から、漣と次代の食事風景が見えていたので、思わず頬を膨らませてしまう。
先日、自分達が堕とせなかった、狗神。
あれは人型にもなれるのか、隣にいるだけだと漣の恋人にも見えなくなさそうだが。少女の耳で、それが違うと判断出来た。
「この前、一緒だったお兄さんとか〜?」
邪魔だてしてくれた、万屋の新所長である熊谷晁斗。
結構大柄ではあるが、慣れれば女性には好印象を持たれる見た目だ。さすがは、稀代の術師と恐れられていた祖父の克己の孫だ。
少女の祖父とも渡り合ったと聞くが、それは遠い昔のことだ。
今は、あの漣と名付けられた少女を奪還したいところなのだが。
「身体があれど、魂のない器……か」
「あ、お帰り」
「先に食べるな」
「冷めちゃうじゃん?」
軽く小突かれてしまったが、本気の力ではないので痛がるフリをした。
「で、何かわかったのか?」
「んふふ〜。あの子、新所長さんにご執心らしいよ?」
「……そうか」
ショックを受けているのかどうかは、男もフードを目深にかぶっているのでわかりにくい。しかし、声でいくらかショックを受けたのはわかった。
伊達に、この男とコンビを組んで短くもないからだ。
「で、邪魔しちゃう?」
「……お前はすぐそう言う方向に持っていく。結ばれるかはともかく、下手に手出しはしない方がいいだろう。今回は、あれにも間接的に協力してもらうのだからな」
男は、ワクワクバーガーの袋を漁り、適当に手を入れてた割には、少女が次に食べようとしていた白身魚フライのバーガーを手にしていた。
けれど、まだもう一個あるはずなので、少女は文句を言わない。
「そだね? あの子の癒し手の能力で、実は幸運になり過ぎて困るようにするのが。……今回の目的だし」
「世が荒れに荒れて。欲望が剥き出しになる……か。長もだが、お前も大概に酷いな?」
「手伝う君が言っちゃう?」
「まあな?……やはり、美味い」
「あの子が食べてるのも美味しそうだけどー」
「……同じではないのか?」
「初代の秘蔵弟子のおじさんが作ったっぽい」
「…………もう食べ終えているな」
「今度、変装して行っちゃう?」
「やめておけ。その秘蔵弟子ならバレてしまう」
「ちぇ」
力を温存するのに、以前甲本などを引き込んだ守護堕ちの人工製造は休止。
長である祖父にも、無茶をするなと言われたので、力が回復するまでは大きな術が扱えない。
並行して、探し物はしているのだが。これがてんで見つからない。
いったい、どこに逃げおおせたのか。
漣と呼ばれている、少女の。記憶と魂。
『裏』で大事に、大事に管理して来た記憶媒体。
もうひと月以上も経つが、未だに見つからないでいる。
「世間がバレンタインで浮かれている隙に、出てくるかもしれんぞ?」
「君のそれから、浮かれてるって言葉が出てくるとねぇ?」
「お前も一応女だろう?」
「なに? 欲しいの?」
「そうは言っていない」
だが、面白いことが思いついた。
それを男に話すと、すぐに呆れられたが協力はしてくれるらしい。
なら、実行するまで。
次回は月曜日〜




