18-2.待機させられる
お待たせ致しましたー
*・*・*
バレンタインチョコの候補も決まった。
作る日も、練習日程も決まった。
あとは、漣と仲直りするだけ、と晁斗は決めたのだが。漣が、漣が同じ家に住んでいるのに捕まらない。
今日、漣は仕事が休みなので先に帰ってはいたが。祖母の暁美と料理の練習をしていたり。暇な時間があれば、次代の仮名を決めるのに書庫に籠っていたり。
書庫にいる時に声をかけようとしたのだが、人型の次代によって通せんぼさせられてしまった。
「……なんでダメなんだよ」
【あれの集中力を途切れさせないためだ。汝も、今は耐えてくれ』
「……けど」
【漣と気まずい感じになっているのは知っている。だが、理由を問いただすのには。もう少し待ってやってくれないか?】
「次代?」
【……あと一週間。すまぬが、耐えてくれ】
何故、その期限か。
すぐには理解出来なかった晁斗だったが、次代が待てと言うのなら待つしかない。
なので、次の日に燈に相談に乗ってもらうことにした。
「ふむ。次代様が待てとおっしゃるのなら、楽しみに待っていればいいんじゃないかな?」
「……そうは言うけどよ、兄貴」
同じ家に、同じ職場に居て。接点は多いはずなのに、ここ最近はすれ違うばかり。
挨拶とかは無視されないのだが、あの人懐っこい笑顔ではない。ちょっと苦しいような、目が合えば顔を真っ赤にしてしまうのだ。それに似た反応をどこかで見た覚えがあるのだが、すぐには思い出せない。
「いいじゃないか。我がウィンタージュの新所長の青い恋だ。僕は応援するよ?」
「! 兄貴、いつから……?」
「ん? 割と最近かなあ? 君はわかりやすいからね?」
「……バイト達には」
「多分、勘のいい子達は気づいているんじゃないかな?」
「〜〜〜〜……っ!」
勘のいい、つまりは大多数に知れ渡っていると言うこと。全員が全員ではないらしいが、それでも気恥ずかしく感じる。
今は蛍嵐のいないウィンタージュの厨房だが、晁斗はカウンター側で頭を下ろした。
「はっはっは! いいじゃないか? 若いから大いに悩みなさい。今しか出来ないからねぇ?」
「……そう言う兄貴こそ、菜幸のことはいいのかよ?」
「!……僕は、いいんだよ」
菜幸本人だけ気付いていないらしいが。本人の燈への気持ちは大多数にバレてしまっているのだ。信奉者である御子柴にまで。
しかし、彼女は告げることもなく、ただただ燈を尊敬して慕っているだけだ。今回のバレンタインでも動くかどうかは怪しいところだが。
だが、燈はどうなのか今年はわからない。突っぱねてもいないが受け入れてもいない感じだ。
「そう言ってっと、あいつ滅多になくったって。客からラブレターもらうこともあるんだぞ? 横取りされてもいいのかよ?」
「晁斗君、まずは自分の事を考えようか?」
「あ、今逃げた!」
「むむ!」
珍しく、揚げ足を取れた。
にしし、と笑ってやると、燈はコック帽の上から頭を掻いた。
「自覚してんのは、兄貴もじゃねーか!」
「く……不覚」
「いいじゃん? 俺と違って両想いなんだから」
「とは言え、こんなおじさんにねぇ?」
「三十代前半はオッサンじゃねーよ」
「……そうかなあ?」
だが、燈が悩むもう一つの理由があることは、晁斗も知っている。もう少し若い頃に、裏のせいで目の前で友人だった女性を死なせてしまったのだ。
まだ菜幸と出会う前だったので、彼女はおそらくそれを知らないでいる。二度と、目の前で大切な人を失いたくはない燈の気持ちを。
「歳の差だって、別に気にし過ぎない方がいいぜ? 芸能人とかはやり過ぎだけどよ?」
「まぁね? で、晁斗君は漣ちゃんには言うのかい?」
「…………わだかまり、が解消すれば」
「じゃ、バレンタインには気合いを入れないとねぇ?」
「……ところで、今作ってんのが。漣に頼まれた?」
わざと話題を変えれば、燈はうんと頷いた。
「ちょっとだけ、アボカドを熟させるのが大変だったけど。いい出来に仕上がりそうだよ? 次代様の分も余裕で出来そうかな?」
「食べ慣れたものが、バーガーかもしんねーか」
あの黒ずくめの男女とどう関わりがあるかは未だに謎ではあるが。
漣は、漣だと悠耶に言われた事を思い出すのだった。
「俺、ポテト揚げるわ」
「休憩中なのに、いいのかい?」
「ま。なんでもいいって言ったのは俺なのに、なんもしねーわけにはいかねーよ」
次代を連れ帰った時の、あの笑顔。
あれをもう一度でも見たいと言う、不純な動機ではあるが。
手伝うことで気を紛らわしたいのも本音ではあった。
次回は火曜日〜




