17-6.練習の出来上がり
お待たせ致しましたー
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しっかり冷やしたら、あとは焼くだけ。
ハート以外にも、英語と言う文字や模様が描かれた可愛らしい型に入れたショコラフィナンシェの焼き上げだが。
冷却時間が必要だったために、咲乃や菜幸の後に焼くことにした。その間に、焼いて冷ましている咲乃達のチョコを味見することになった。
咲乃がナッツやドライフルーツをたっぷり入れたパウンドケーキ。
菜幸はほぼチョコで作った、チョコブラウニー。
どちらもとても美味しそうで、漣はよだれを隠せないでいた。
「ふふふ。漣ちゃん、食べたそうね?」
「あ、あ! すみません!」
「いいわよ。私も少しは食べたいと思ったし。漣ちゃんのが焼き上がるまで、お茶にしましょうか?」
「うっす!」
「はい!」
焼き上げまで、片付けをしながら動いていたので今は特にすることがない。
咲乃が切り分けを担当している間に、漣は菜幸に教わりながらホイップクリームを泡立てる。時短も兼ねて、電動のホイッパーで。
間接的に、これはボウルを二重にして氷水で冷やしながら混ぜていくが。それとホイッパーがなかったら、あっと言う間に出来なかっただろう。
出来上がったホイップクリームを、菜幸が大きめのスプーンで適量すくい、既に盛り付けられた皿の端に乗せた。
この出来上がりには、漣にも見覚えがあった。
「お店のガトーショコラや、シフォンケーキもこう言うのですね!」
「そうそう。毎回泡立てないけど、こんな感じに出来上がるんだよ?」
「さ、クリームが冷たいうちに食べましょう?」
そして、自分達だけでなく。咲乃は鳳嬰を。菜幸はネージュを。漣も、犬型サイズの次代を顕現させた。守護精じゃないので、おいで、と呼べば出てくる仕組みだ。
「お初にお目にかかります、次代様。咲乃の守護精、鳳凰の化身である鳳嬰と申します」
「樹木精が化身のネージュと申します」
【そう畏まらずとも良い、我にはまだ名はないが。皆と同じで構わぬ】
「そうなのですか?」
「まあ、よろしくて?」
とにかく、食べようと言うことになり。
大きめのダイニングテーブルに、それぞれのケーキの皿を並べて。いただきます、と手を合わせたあと、次代はそれぞれのケーキの匂いを嗅いでいた。
【この菓子は、ウィンタージュでも似たのがあったな?】
「そうだね? 昨日、僕たちが賄いでもらったガトーショコラと似てるらしいよ?」
【ふむ。漣も初めてか?】
「うん、楽しみー」
「次代様。皿の端に乗せてある白い塊と交互に召し上がられると、美味しいですよ?」
【左様か】
昨日のガトーショコラには、ホイップクリームがなかったのでそのままだったが。きっと美味しい事は予感するまでもなく、確信に近い。
ちょっとだけ、ブラウニーの方を崩してホイップを載せようとしたが。バターを使っていないせいか、冷めると固かった。
それにほんの少し、ホイップを載せてから口に運べば、濃厚なチョコの味が口いっぱいに広がったのだった。
「甘くて、ちょっとだけ苦くて。でも、ガトーショコラとも全然違います! 美味しいです!」
「よっしゃ! 漣ちゃんのお墨付きもらえたし、燈先輩にも!」
「ふふふ、マスター? 急ぎ過ぎてはいけませんわよ?」
「で〜も〜」
「けど、いい出来よ。菜幸ちゃん」
次に、パウンドケーキ。
見た目だけは、菜幸のブラウニーと似てなくもないが。型の底の方に、漣も手伝った砕いたナッツやドライフルーツがたっぷりと散りばめられていて。正直、とても美味しそうだった。
これにも、ホイップクリームをつけるととても美味しいらしい。
はむ、と口に入れれば。
【ほう! これは食べていて楽しいな?】
「ほんとですか?!」
「ええ、いつものことながら良い出来です」
「先輩、おいひいです〜」
「そうですね」
流石は、と言うべきか。
菜幸と同等、いやそれ以上に美味しく感じた。ナッツの香ばしさにほのかに甘いドライフルーツ。ほんの少しだけ苦いが、甘さの方が際立っていて。
ホイップクリームと交互に食べると、なんとも言えない幸福感を得られる。晁斗もだが、皆料理上手過ぎる。
こんなにも、料理上手な人達の腕前に、自分は敵わないんじゃないかと思っていると。次代に頭をぽんぽんと撫でられた。
「?」
【しっかり自信を持て。汝が、晁斗を想う気持ちは本物であろう?】
「……けど」
「次代様の言う通りよ、漣ちゃん? バレンタインだけに限ったことじゃないけど、手作りのプレゼントに必要なのは気持ちよ? 晁君を好きって気持ちを込めたってことが大事なの」
「す、好き……ですか?」
「そだよ〜? けど、晁斗先輩鈍感過ぎだから、ちゃんと言わないと気付かなさそう……」
「? えと?」
「漣ちゃんがちゃんと告白しなきゃ、お世話チョコだと思われるわね?」
「? お世話……にはなってますけど?」
「そうじゃなくて。義理チョコ……つまりは、友人以上にはいかない好きの気持ちのチョコになっちゃうわ」
「!」
たしかに、晁斗は聡いが。他人の好意には疎い気がしていたのだ。女性客からにアプローチなども、持ち前の営業スマイルで華麗にスルーするくらい。
漣も、一応二十代は超えているらしいが記憶喪失と内面の年齢のせいで、お客にも高校生に見えるらしい。だけど、ウィンタージュに来てくれるお客様はいつも優しかった。
自分に考えが逸れたが、きちんと言わないと晁斗には通じない。なら、ここは言うべきか、言わざるべきか。
それ以前に、今日中に仲直りしたかった。
「あ、あの!」
「「ん??」」
「実は……ちょっと、だけ。晁斗さんと……喧嘩してしまって」
「ちょ、どう言うことぉおおおおおお!?」
気持ちを伝える以前に、仲直りしてないことを伝えようとしたら。
咲乃に盛大に驚かれてしまった。
ついでに、オーブンのチンと言う音がBGMのように大きく鳴り響いたのだった。
次回は水曜日〜




