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ウィンタージュに憩いの羽音を  作者: 櫛田こころ
バレンタイン練習
75/164

17-5.バレンタインに悩む

お待たせ致しましたー







 *・*・*








 悩む。


 熊谷(くまがい)晁斗(あさと)、25歳。人生初の恋のために、非常に悩んでいたのだった。



「う、ぐぐぐ……うぐ」

「晁斗?」

「…………咲乃(さくの)とか菜幸(なゆき)以外の女ってばあちゃんくらいだから。他の女に、チョコなんてあげたことねーよ!!」



 ただいま、悠耶(ゆうや)と晁斗の休憩時間(ミートタイム)


 晁斗もだが、悠耶も意中の相手に手作りのバレンタインプレゼントを贈るのに。雑誌やレシピ本を漁っているのだが、晁斗は(れん)に作ってあげる予定のチョコに悩んでいたのだ。



「難しく考え過ぎない方がいいよ? まあ、漣ちゃんは好き嫌いほとんどないみたいだし。晁斗の料理もなんでも美味しいから絶対喜ぶと思うよ?」

「俺の腕前は横に置いとくとして。割りかしなんでも作れるってのがなあ」



 しかも、今回は好きになった相手。気を遣わないわけがない。一番に喜んで欲しいのだ、告白の有無はともかくとして。



「んー? 今日咲乃の家でも色々作って味見してるだろうし。けど、別に被っちゃってもよくない?」

「そうだろーけど。出来れば、うめーって言われてーし」

「ふふ。初めての恋はくすぐったい?」

「……ガチで、照れる」

「ふふ」



 なにぶん、恋愛沙汰を遠ざけていた晁斗だ。自覚すればするほど、漣には笑顔でいてほしいし。食べるものも、気に入ったものを作るようにしている。


 ちなみに、(あかり)に頼んでいるハンバーガーは明日のミートタイムに作ってもらう予定でいるらしい。


 とにかく、好きと自覚しても身内以外本心を隠すのが割と得意でいる晁斗の気持ちは、おそらく漣にはバレていないはず。


 漣は漣で、自宅に帰るなり次代狗神の名前を決めるべく書庫に籠っでいるそうだが。あの事件から二週間近く経つのに、まだ決まらない。


 そろそろ助け船を出そうかとも思っているが、まだ例のぎこちなさが抜けていないので仕事や家の手伝い以外接触がないのだ。


 いったいなんなのかを聞こうにも、顔を合わせるたびに真っ赤になって逃げられてしまう。


 その顔が、また可愛らしいのだが。



「うーん。二人で食べる前提に、思い切ってホールケーキ作ってあげるとか?」

「……重くね?」

「けど、喜んでもらいたいんでしょ?」

「……おー」



 中学生になってから、咲乃と付き合い出した恋愛ベテランの従兄弟の言葉は重い。将来結婚する約束もしているくらいだし、悠耶的には盛大な披露宴にする予定らしく、式とかも来年あたりにするそうだ。


 準備には入念に取り組む、この優男の腹の中はまっくろくろすけなのだから。



「でも、ケーキとかだったら。漣がガトショー作ってそうじゃね?」

「ま、ね? その可能性も捨てきれないし。普段晁斗が食べてるお菓子とかは、咲乃に聞いて作ってるかもよ?」

「なんで、断定?」

「漣ちゃんは晁斗に懐いているからね?」



 そう。気まずくなる以前は。刷り込みの雛のように、仕事以外はちょこちょこついてくることが多かった。


 それについて、晁斗は自覚する前でも不思議と嫌とは思わずに、微笑ましく思っていたのだが。むしろ、あそこの時点で既に惚れていたのだろう。


 なら、と。晁斗は何を作るか決めたのだった。


 すべては、漣に喜んでもらいたいがために。



「よっしゃ、決めた!」

「はいはい、その粋。失敗しないよーにね?」

「おう!……あ?」



 LIMEの着信音が響いてきたので、ポケットから出せば。篤嗣(あつし)からの通知だったので、晁斗は通話ボタンを押した。



『よぉ。そっちのケサランパサランどうだ?』



 いきなり用件を言うのは珍しくないので、所長デスクに置いておいた桐箱の中身を見ると。昨日以上には増えていなかった。ので、今は四体のままだ。



「あれっきり増えてねーぜ?」

『そうか。こっちも六体以上は増えてねー』

「鑑識で何か言われたのか?」

『あー。なんらかの霊的反応によって増えるらしいぜ? 俺が克爺からもらったのは、漣が増やした一部だが』

「……まさか」



 漣に、つまりはあの黒ずくめの二人組が彼女に害を為そうとしているのか。


 篤嗣にも伝えると、マジか、と返答があった。



『一度、漣と清司郎を引き合わせた方がいいかもしれねーな? 漣の記憶を取り戻すきっかけを作れるかもしれねー』

「けど、篤兄。記憶喪失の前の記憶が戻った場合って」

『そーだな。これまでの記憶がゼロになるとか色々あるが。……だが、晁斗。もしそうなっても、お前の漣に対する気持ちは消えるのか?』

「! ねーよ!」

『だろ? 俺もそんなことは避けてーしな? とりあえず、バレンタインが終わってからでいい。漣と一緒にこっち来い』

「……わかった」



 スピーカーモードにさせていたので、悠耶にも篤嗣の声は届いていた。


 通話ボタンを切ってから、彼に軽く肩を叩かれたのだった。



「……大丈夫。漣ちゃんは漣ちゃんだよ」

「……ああ」



 晁斗は決めた。


 気まずくなった原因を、夜に自宅で聞くと。


 篤嗣の要望について、焦りがないのは嘘になるが。今の状況は正直言って、辛いと理解出来たからだ。

次回は日曜日〜

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