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ウィンタージュに憩いの羽音を  作者: 櫛田こころ
ちょっとした日常
67/164

16-3.ケサランパサラン①

お待たせ致しましたー

 *・*・*








 前所長とは言え、今は喫茶ウィンタージュのオーナーである祖父の克己(かつき)からの(お仕置き)


 絶対(れん)に無茶をさせたことについては怒ってないわけじゃないだろうし、いい加減新米所長からステップアップさせなくてはいけないのだから晁斗(あさと)の責任もある。


 だからとは言え、アクセサリー十個製造は少々手痛い仕打ちだ。出来なくはないし、今回は漣の指導も兼ねているので一日缶詰めするしかない。


 事務所を使いやすいように、人型になった空呀(くうが)と移動させていると咲乃や菜幸に呼ばれた漣が戻ってきた。


 ただ、手には大事そうに何かを包み込んでいたが。



「お、どした?」

「えーと……、なんか不思議なものが落ちてきたんです」

「なんだなんだー?」



 空呀の気になったのか近づくと、漣はそっと手を開いてくれた。



「「綿ぼこり??」」



 だが、耳かきの梵天並みに愛らしい感じ。


 実に珍しいものだと、晁斗が正体を口にしようとしたら。漣の身体が一瞬光り、彼女の肩に次代狗神が乗っかった。



【ほう? 袈裟羅(けさら)婆娑羅(ばさら)か?】

「け、けさ……ばさ?」

「梵語が説の方だな? 俺くらいの人間の呼び名は『ケサランパサラン』っつーんだ」

「ケサランパサラン?」

「一応、妖に部類される綿毛状のもんだ。よく花の冠毛だったり、綿ぼこりだったり、鳥の羽毛とかに間違えられるが……こりゃ本物だな?」



 とんとん、と軽く指で叩けば、キョロキョロっと両目が現れて、漣を大層驚かせたのだった。



「め、目が!?」

「落ち着け。悪さをしでかす奴じゃねーよ」

「むしろ、幸運の象徴だぜ!」

「こう、うん?」

【うむ。漣に寄ってきたということは、良き事を運んでくれるために降りたのであろう】

「僕に……?」



 じーっと、漣が見つめるとケサランパサランは彼女の手のひらにすりっと擦り付けるかのように体を寄せたのだった。



「っかし、ケサランパサランがわざわざうちにいるとはなあ?」



 高位の守護精の加護が強いこの建物に、わざわざやってくるとは。


 ただし、漣もつい最近までは守護無しだったので直接的な加護はなかった。が、それも次代狗神が眷属化した事で事情も変わったが。


 とりあえず、空いてる桐箱があるのを思い出した晁斗は、道具で簡単に空気穴を空けてから漣にケサランパサランを入れるように促した。



「こいつにやる餌は一般的には、化粧とかに使う『白粉(おしろい)』っつー粉らしいが」

「おしろい?」

「漣も、咲乃達に化粧教わってんだろ? 京都っつーとこだと、顔を白く塗ったりする化粧が一部で使われてんだ。けど、その粉をケサランパサランは食いもんにしてるらしい」

「育てて……いいんですか?」

「ま。一応克爺達には知らせるさ。何せ、こいつは餌食うと場合によっちゃ増えるらしいし」

「ふわふわ……キョロキョロ、がいっぱい」



 想像したのか、ほわんとした愛らしい表情になったのだった。



「とりあえず、俺らの任務はアクセサリー十個製作だ。漣には簡単な作業をしてもらう」

「は、はい!」

【我も人型になろう】



 ケサランパサランの箱は一旦、晁斗の所長用のデスクの上に置く事になり。やっと、晁斗主体のアクセサリー教室のような作業が始まったわけだが。次代狗神もだが、漣も不器用ではないが何分初心者なので苦戦しまくっていた。



「む、難しいです……」

【今のヒトの子も、斯様に細かき仕事をするのだな……?】

「ま、俺メインだから無茶すんな?」

「晁斗さん、すごいです」



 ぺたり、と漣は気力が落ちたのかテーブルの上で突っ伏したのだった。



「慣れりゃ、漣にだって出来るっつっただろ?」

「でも、手品以上にすごいです! 何か術とか使っているようにも見えて」

「ないない。全部手作業」

「うー……」



 けれど、ごく簡単な作業でも晁斗の助けになっていることに変わりないので、休憩を挟みつつも晁斗はどんどん作業を進めていく。


 皆の助けもあってか、昼過ぎには五個程作り終えることが出来た。



「おーい。そろそろお昼の時間にした方がいいよー?」



 今一番忙しいはずなのに、わざわざ(あかり)が賄いを持ってきてくれたのだった。



「お、兄貴。サンキュー!」

「お疲れ様。どこまで進んだのかな?」

「漣達のおかげで半分は!」

「おやおや、それだとオーナーにまだ追加を言われそうだね?」

「げ!」



 それだけは絶対避けたいと晁斗もだが、漣達も相当疲弊していたので。賄いのビーフストロガノフには、全員貪るように食べ進めていった。



「おや? あの箱は?」

「あ、そうそう。兄貴、漣が渡り廊下で見つけたんだと。ケサランパサラン」

「ケサランパサラン!?」



 すると、燈は食いつくように箱に近寄ったのだった。



「未確認生命体や植物か動物の何かとも言われているケサランパサラン!? 滅多にお目にかかれないのに……!? これは次代様の加護か!?」

【…………燈よ。我が関係するのか?】

「ケサランパサランは神の使いとも言われていますからね!!」



 久しく忘れていた。


 燈は、重度の妖怪や神秘現象などのオタクだったなと。


 とりあえず、さっさと仕事に戻るのと克己にケサランパサラン保護について伝言を頼むことにしたのだった。

次回は木曜日〜

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