15-5.経過
お待たせ致しましたー
*・*・*
昏い昏い、闇深き場所。
相棒を担いで連れて帰ってきた男は、空間に飛んでから脂汗をかきそうな程、緊張していた。
担いだ女は相変わらず度胸があるのか黒マントの向こう側では寝息しか聞こえてこない。
いい加減起こそうにも、男が仮に殴ったとしても起きない睡眠状態だ。仕方がないので、もう少ししっかりおぶさってから奥に進んだ。
「……………………来たか」
低い。
まるで、地響きが起きる前触れにような、低い男の声。それが空間に響き渡っていく。
本来ならきちんと敬意を見せねばならないが、女をおぶさったままなので男は出来るだけ低く膝と腰を折った。
「……申し訳、ありませんでした」
発言を求められたのならば、此度の命令に対して深く謝罪するまで。
許されるとは思ってもいないが、女の判断で結局は失敗に終わってしまった。
あの、漣と名付けられた癒し手の女の好き勝手にさせたせいで、試験段階の土地神を祟り神にする計画のほとんどを台無しにされた。
何故、あの山にいたのかはまでは追求出来なかったが、万屋として動いていたのなら納得は出来た。土地神が次代を産むのに山の気を取り込んでしまったのだ。土地の清浄さが失われたのに、依頼されたのだろう。
「…………良い。経緯などは、式神の報せで聞いた。我が孫もそのような姿になったのならば、あの女の活躍とやらで計画を邪魔されたか」
「…………おそらくは。次代を眷属化させていたので、簡単には奪えません」
「ふむ。癒したことで恩を返そうとしたやもしれぬ。だが……面白い」
「…………」
この父にして、この子供ありとは聞くが。
この祖父にして、この孫ありとも言うべきか。
性格の大体は違っても、背負ってる女と声だけ聞こえる我らが長である彼女の祖父は本質的によく似ている。
事態を面白がると言うところが特に。男はただの部下でしかないので、何も口出しは出来ないが。
「過去に類を見せぬ、稀代の癒し手に次代土地神の存在。良い、また面白い結果になった。それは放っておけ。いずれ手に入れるにしても、成長した奴を手に入れるのもまた一興よ」
「…………は」
そして、空間が徐々に小さくなっていき、男と背負われた女は開けた土地の上に立っていた。
空は満天の星空で月明かりのせいか、存外明るかった。
「……ほらねー? 怒られなかったでしょー?」
「……起きてたのか」
とっくに起きていたのなら降りろ、とわざと手を離しても女は身軽に地面に降りた。自分よりも若いせいか、身長は低いが一応成人女性らしい。
らしい、と思うのは。出会った当初からこの背丈だったからだ。顔は、未だ機会がないせいか拝めてはいない。
逆に、男も見せてはいないが。
「おじー様だったら、絶対面白がるもん。僕も大賛成!」
「……どこから聞いていた?」
「全部! でも、疲れてたのはほんとだよん?」
「…………とりあえず、次はどうする?」
「ふふーん。前の依頼に近いけどぉ〜? 集団感染くらいやっちゃう?」
「あの女のためか?」
「とりあえずそういうことにしといてー?」
それから、指を鳴らして白いフードのジャンパーにジーパンと言うスタイルに変わったので、男もカーキ色の同系統の服に変化した。
「ワクワクバーガー行こ?」
「……相変わらず好きだな?」
「あの子も好きだったけどねー?」
「それを頻繁に食わせていたからだろう?」
「ふふーん」
今頃、万屋の新所長らと祝杯をあげているのかは定かではないが。
いずれ、こちら側に連れ戻すと男は心に誓った。
それから、女と陸螺市に戻るべく陣を使って移動することにした。
次回は火曜日〜




